株式報酬の広がり(2)
9月10日の日経新聞で、「株式報酬、社員にも 1176社に拡大 経営参加意識づけ 丸一鋼管は年収超え」というタイトルの記事が掲載されました。現金ではなく株式によって報酬を支払うというやり方が、役員や一部の幹部社員に加えて、社員全体にまで広がっている動きを取り上げた内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
定年を迎えるまで売却できないという制約については、是非含めいろいろな意見がありそうですが、その企業なりの考え方に沿った方針で、当事者である従業員がそれに賛同するのなら、いろいろな形があってよいと思います。
従業員が、自身の仕事に対してのオーナーシップを高めるうえで、株式報酬はひとつの有効なやり方だと言えます。
経営者・経営陣としては、従業員に対して「自分と同じように、自社の事業に使命感をもち、志高く仕事に向き合ってほしい」と思っているはずです。しかしながら、雇うと雇われるという関係の違い、事を成したときの社会的な賞賛の大きさやリターンの大きさが全然違う従業員に、経営者とまったく同じ種類のものを求めるのは、無理があります。
即時の現金払いよりも株式を持つことで、受け取る報酬が、組織の生み出したその後の社会的成果に連動しやすくなります。従業員に経営者と同じ熱量を求めることは、どこまでいっても難しいですが、株式報酬によって従業員の仕事に対するオーナーシップの目線を高めることにはつながるはずです。
社会的に大きく飛躍した日本のベンチャー企業にいた元社員から、ひとつの事業をやり遂げて次のキャリアを目指して退職するにあたり、株式を売却したことで大きなリターンを得たと聞いたことがあります。大企業はもちろん、今は高額な現金を従業員に払えないベンチャー企業が、魅力的な会社の将来ビジョンと将来報酬で優秀な人材を惹きつけて飛躍を狙うような場合にも、株式報酬は有効な一助になりえると思います。
同記事では、従業員持ち株会を通じてグループ社員に株式を付与する、村田製作所の例も紹介されていました。従業員持ち株会というやり方も有力な方法です。私の周囲でも、従業員持ち株会を採用している会社がありますが、それなりの効果を感じていると言います。
同記事で紹介されているWTWの調査結果で「日本企業で本部長相当の役職に株式報酬を導入する割合は20%で、5~6割の欧米やシンガポールよりも低い」とありますが、これは世界の5000社超を対象にしたものです。このような調査対象に入っていないと思われる中小企業では、日本の場合ほとんど採用例がまだないと想像されます。
加えて、「本部長相当の役職」以外の従業員だと、さらに保有割合は下がるはずです。外国企業のやり方に何でも合わせていくのがよいとは限りませんが、このあたりの違いは、仕事に対するオーナーシップ醸成の違いに影響し、個人・組織のパフォーマンスの違いにも影響するのではないかと、想像します。
株式報酬については、以前にも取り上げたことがあります。冒頭の記事内容からは、その時からさらに広がっているようです。よろしければ、当時の投稿もご参考になれば幸いです。
<まとめ>
株式報酬という方法で、従業員の仕事に対する向き合い方を変える結果になり得る。