性別による賃金格差を考える(2)
前回は、男女の賃金格差の背景についてテーマにしました。
同一労働同一賃金であることを前提に、性別で賃金格差が発生する要因としては、「雇用形態や職務範囲(ジョブ)の違い」「期待される成果や役割の大きさの違い」「パフォーマンス(評価)の違い」の3つがあるのではないかと考えました。
これらの要因について、どのように向き合うべきなのでしょうか。大きくは、次の3点ではないかと考えます。
・「できない」と思っていないか、振り返る
本人の意志で働き方に制約をつくる、管理職の話を辞退する、などであれば、労働契約の自由の観点からも別に問題とは言えません。しかし、例えば「家庭の事情でフルタイムの無限定社員は無理」「私には管理職は無理」というのが本人の思い込みで、その思い込みが女性という属性だから起こりやすい、とすると、それは問題かもしれません。
基本的に、どちらか一方の性別でしかできないという仕事はないはずです。身体の構造の違いなどから、もしかしたら一部の仕事にはそうした要素があるのかもしれませんが、あったとしてもごくわずかなはずです。できないと思っている理由が、性別による根拠のないものでないか、振り返ってみたいところです。もちろん、本人だけの問題ではなく、例えば家庭内の夫など他者にも当てはまることです。
「性別に関係なく管理職ができる」ということを周知する効果も期待して、女性管理職を増やそうとする会社も多くあります。活躍する女性管理職が存在することで、「女性管理職をイメージできない」という問題が解消され、後進のモデルになるというわけです。
有意義な試みですが、「スーパー女性管理職」をモデルにしようとすると失敗するという話も聞きます。適当なイメージですが、「結婚して家庭もある、仕事も大役を果たしている、夜も寝ないかのような体力ですべてをこなす、相手がだれであっても気後れなく平気で物申す・・・」社内にこうした女性管理職しか存在しない場合、「ああいう女性にしかなれない」というような偏ったモデルが形成される可能性があります。それぞれの強みを活かした多様な管理職が存在しえることを大切に考えるべきです。
・活躍の機会が十分か、振り返る
女性は結婚や子育てを機に辞めやすいから、という理由で、キャリア開発のための配置転換や選抜研修などの人材投資の対象外となっている企業を、今でも時々見かけます。本人希望を十分聞き取ったうえでそのようなことが行われていれば別ですが、そうしたプロセスも何もなくマネジメント側の思い込みによってそうなっているだけの場合も多いものです。
従業員の側も、そのことに疑問を持っていない場合もあります。労使双方とも、「もっとこんな活躍やこんな貢献ができるのではないか」という視点で振り返ってみると、今の働き方に対して違った見え方がしてくるかもしれません。
・正しく評価されているか、振り返る
期待相応以上のパフォーマンスをあげていながら、正当に評価されていないとするならば、問題です。例えば今でも、「残業する人=頑張っている人=評価されるべき偉い人」という価値観の会社は多くあります。
そして、多くの世帯では女性のほうに家事の負担が偏っています。家庭の事情もあって、毎日やり方を工夫して期待以上のパフォーマンスを出しながら定時で仕事を切り上げる女性は、上記のような価値観の会社では評価されにくいということがあり得ます。
働きに対する正当な評価や期待のフィードバックを得られなければ、さらに貢献や活動の範囲を広げようとは考えにくいものです。
前回取り上げた新聞記事で、格差が大きいとされる業種と比較的小さい業種とがありました。格差の大きい業種の会社では、上記で挙げた要因などが起こりやすい傾向にあるということかもしれません。現状把握と改善の余地がないかの検討をしてみるとよいのではないかと考えます。
<まとめ>
思い込みが、本来不必要な違いや区分につながっていないか、振り返ってみる。