ステルス賃上げになっていないか
12月1日の日経新聞で、「あるべき金融政策(中) 最小限の金利引き上げ 一案」というタイトルの時期が掲載されました。異次元緩和で達成できたこと、副作用が何だったのかを整理し、今後の方向性を考察する内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
日本で商品・サービスの価格が長らく上がっていかない状態であったことは、以前から言われている通りです。社会全体で価格が据え置きになり続けることの弊害が、上記記事では分かりやすく説明されていると思います。
今行われているワールドカップを見ていると実感しますが、基本的に人・組織は競争をし続けて発展を目指そうとする存在です。それは、インフレ・デフレ、どちらの社会環境下でも変わらないというわけです。価格競争が受け入れられない社会環境であれば、非価格部分で競争するしかありません。
日本以外の地域で商品・サービスの価格が上がっているならば、事業活動に必要な仕入れなどの価格が必ず上がります。一方で売値の価格を上げることができないとなると、仕入れ価格を吸収しながらも利益を維持できるために、「いかに目立たないように品質を調整できるか」の勝負になってくる。その結果、例えば今まで1000円という大きさで測れたものが、本当に1000円で測って妥当なのかどうか、物差しとして機能しなくなるというわけです。
この構図が、働く人にも当てはまるというわけです。賃金が上がっていくという期待が持てれば、より高い賃金獲得を目指そうと、もっと頑張って成果を出そうとする行動が促されます。逆に、頑張って成果を上げても賃金が上がらない、あるいは大して変わらないとなると、より効率的な働き方で他者より優位に立つことを目指すようになる。すなわち、頑張りや成果の度合いで調整することで、自分にとっての労働生産性を高めようとするというわけです。
このことを踏まえると、例えば、企業として単に副業を推進するだけでは、逆効果になりかねないことが想像できます。従業員の側としては、本業での頑張り・成果を一層調整し、副業でのエネルギーを確保しようとするステルス賃上げが助長されるからです。副業推進するならするで、企業としての目的や考え方をしっかり理解してもらわないといけないでしょう。
賃金据え置きが従業員の頑張りや成果を調整されるステルス賃上げになるかもしれないという観点は、賃上げ問題への対応を考える上で、有益な視点のひとつになると考えます。
しかし、上記の状況にも変化の兆候が見られます。ここのところ、物価上昇も考慮に入れた賃上げの検討や労使交渉の話が増えています。賃金上昇、商品・サービスの需要増、価格上昇の流れに変わっていけるきっかけになるかもしれません。
<まとめ>
賃金据え置きが、従業員の頑張りや成果の見えない調整になっていないか、振り返る。