「惹きつける採用」を考える
先日、所属先の小宮コンサルタンツで行われた対談セミナー「中堅・中小企業が良い人材をバスに乗せるために-惹きつける採用の仕組みづくり-」にて、パネリストの一人として参加する機会がありました。採用に関する悩みは各社で大きく、簡単には解決できない課題だというのを、改めて感じた次第です。
同セミナーに同席する中で、採用にあたって改めて大切だと感じたことをここでは2点あげてみます。ひとつは、「応募者の志向に訴求して惹きつける」ということです。
応募者は、人それぞれ様々な志向の持ち主です。例えば下記などのイメージです。
・地球環境維持への高い関心があり、環境問題への取り組みに最前線でかかわれる仕事に就きたい
・お客さまと長きにわたって関係をつくり、頼りにされたい
・若いうちからチャレンジし、マネジメント人材として他社同世代の誰よりも早く成長していきたい
・景気に左右されにくい、安定した会社で着実に働きたい
自社においては、これらを叶えるどのような環境があるのかを応募者に理解してもらい、こういった志向を持つ応募者を惹きつけるということです。
もちろん、すべての志向の持ち主を惹きつけることはできません。例えば、自社では「マネジメント人材として他社同世代の誰よりも早く成長したい」にこたえる環境は準備できても、「安定した会社で着実に働きたい」にこたえるには当てはまらないかもしれません。
会社として、ある志向の持ち主を惹きつけることを追求していくと、別の志向の持ち主が遠ざかる結果になるかもしれません。応募者の母数が減る結果となるかもしれませんが、マッチング率は高まるでしょう。
また、一言で「最近の世代」といっても、いろいろな志向の持ち主がいます。例えば、終身雇用・年功主義は時代遅れと言われます。そのような働き方を望む人の数は以前に比べて減っているかもしれませんが、100人の中で数人はいるかもしれません。そうした人材を自社として受け入れる準備があり、応募者の志向とマッチングするなら、採用は成功に近づきます。
以前、「年功・勤続年数序列・家族主義」を掲げて成果を上げている万松青果株式会社の紹介記事をテーマに考えました。同社はその例の一端だと言えるかもしれません。
私たちは「今の若者世代は・・・」とひとくくりにして、若者世代の特徴と言われる傾向を把握し、それに対して自社の打ち出し方を調整しようとすることをしがちです。しかし、「今の若者にイケてる会社だと思われるには、どうしたらよいか」という問い自体が、見方によっては、実はイケてないとも言えます。
もちろん、時代や社会の変化をきちんとおさえて、就業環境の整備やメッセージの打ち出し方の工夫をする必要があります。今「24時間戦えますか?」のようなメッセージを出すのはナンセンスでしょう。
そのうえで、
・自社としては、○○のような志向の持ち主を歓迎したい。自社との相性も良い
・そういう人は、何万人かの中には、一定数いるはず
・そういう人たちに有効な媒体や刺さるメッセージを想定してみる
といった具合に、逆の発想で採用に臨んでみることも必要だと考えます。このことは特に、非上場で社会的にも社名が知れ渡っているわけではない、中堅・中小企業にとって大切な視点だと思います。
採用においては、ビジネスパーソンとして高い能力や、自社が求める特定の能力の持ち主を集めようとしがちです。しかし、選別は候補者が集まった後でもできます。志向が合っていなければ、どんなに高い能力の持ち主でも結局マッチングしませんし、志向で惹きつけなければそもそも自社に興味を持つ候補者が集まること自体が起こりません。
自社が求めたい能力の持ち主を惹きつけようとする前に、自社と相性のよい志向の持ち主を惹きつけてみる。取り入れてみるとよい視点ではないでしょうか。
続きは、次回取り上げてみます。
<まとめ>
自社として、どのような志向の持ち主を歓迎したいか考えてみる。
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