訪日客消費を考える
10月17日の日経新聞で、「訪日客消費、はや前年超え 1~9月5.8兆円 客数も高水準続く」というタイトルの記事が掲載されました。訪日客消費の最近の動向を説明している内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
円ベースの消費額の算出では、為替の影響を考慮する必要があります。
ヤフーファイナンスのサイトを参照すると、2024年9月30日の米ドル・円レートの終値は1ドル143.62円です。2024年6月28日の終値は160.83円です。2023年9月29日の終値は149.35円です。
同記事中の「2024年7~9月の1人当たりの旅行支出22万3000円、4~6月の23万9000円」は、9月・6月の各期最終金曜日の米ドルベースで換算するとそれぞれ、1552.7ドル、1486.0ドルです。「4~6月からはやや下がった」というのは為替レートの要因が大きく、実質の消費量としては増えていると評価できそうです。(もちろん、3か月の期間中にレートは上下しますので、概算でのイメージになりますが)
2024年7~9月より円安水準だった2023年7~9月と比べると、円ベースでも消費額が4割も増えていることから、日本の物価上昇率以上に訪日消費額は堅調に増えていると言えそうです。
同記事の情報を参照しての論点と課題としては、娯楽などのサービス費の消費を増やしていくことにあると考えられるのではないでしょうか。
例えば、10万円を使って家族でどこかに旅行に行くとします。そのうち、宿泊費・飲食代・移動費などが使いみちのほとんどで、4,700円(4.7%)が娯楽などのサービス消費に使う金額だとしたら、いかがでしょうか。
もちろん、何にいくらのお金を使うのかは個人の趣向によりますので一概に言えませんが、個人的な感覚としては少ない印象です。「旅行に行くのなら、もっと現地で体験する何かに使うとよい」という感覚の人が多いのではないかと想像します。
実際に、観光庁の旅行・観光消費動向調査(2024年1-3月期 集計表(確報))を見てみると、無作為に抽出された日本国内居住者約2万6000人(訪日外国人客を含まない)の旅行中消費額に占める娯楽等サービス費・その他の割合は、約7%と算出されます。
娯楽などのサービス費への支出割合が1年間で4.1%→4.7%に高まったというのも前進ではありますが、もっと増やす余地はあるのではないかと考えます。そして、日本がそれを可能にする観光資源を豊富に有していることは、各所で言われている通りです。
訪日客の中には、出身国の国内旅行をするより日本で旅行するほうがはるかに安いという人も多くいるはずです。せっかくの機会に、国内旅行より割安なお金を使っていろいろと体験したいという潜在的なニーズはあると想像されます。娯楽などのサービス需要はまだ開拓余地が大きいと見て、事業機会を検討するのも有望ではないかと考えます。
そして、特定国からの訪日客に依存しすぎない状態をつくることも重要だと言えます。中国からの訪日客は一時落ち込みましたが、同記事によると回復し、消費額は全体の3割を占めています。中国からの訪日客を歓迎しつつ、いろいろな国からまんべんなく取り込むことが、安定的な観光産業の発展には欠かせないと言えます。
<まとめ>
訪日客においての娯楽などのサービス支出は、まだ開拓の余地があるかもしれない。