外国人受け入れに対する意識の世代差を考える
6月5日の日経新聞で、「外国人受け入れ、若者は肯定的 入管庁が日本人初調査」というタイトルの記事が掲載されました。外国人受け入れをめぐる出入国在留管理庁の初の意識調査で、若い世代では好意的な人が多いのに対して、高齢層は慎重な考えが根強いことが分かったというものです。
同記事の一部を抜粋してみます。
同記事からはシンプルに、私たちは「知らないこと、経験がないことに対しては、否定的、あるいは判断を保留しやすい」ということが、改めて認識できると思います。
私の子どものころに、周囲にいた高齢者がたまたま目にした外国人に対して、何の前触れもなく差別的な発言をしていた状況を印象的に覚えています。普段は割と温厚な人なので、ギャップの大きさが印象に残っているわけです。なぜあんなに強い拒否反応があったのだろうと。
しかし、同記事の示唆も手がかりにすると、うなずけるものがあります。私の出身地はいわゆる田舎町で、当時は日本人しかいませんでした。日常生活で外国人を見かける機会はまずありません。加えて、戦争でたいへんな苦労をした世代です。外国や外国人といった存在に対して、複雑な思いももっていたかもしれません。
直接会ったこともコミュニケーションをとったこともなく、せいぜい新聞やテレビの画面越しにしか見たことがない外国や外国人といった存在に対して、屈折した反応をしてしまうのが自然で、肯定的になれるほうがむしろ少数派なのかもしれません。
以前の投稿でも、外国人従業員の受け入れや登用について何度か取り上げました。人材の確保と多様性を取り入れて企業戦略実現を推進していく観点からも、外国人従業員の受け入れや登用は有力な方向性のひとつとなります。
私の周囲で見聞きした範囲内ですが、中小企業では外国人従業員というテーマがまだ発展途上です。ほとんどの経営陣が総論では肯定的ですが、具体的に受け入れや登用のアクションをとっている企業とそこまで至らない企業がみられます。前者の多くは、経営者が比較的若手の企業の印象です。もしくは、経営者が高齢ながらも、比較的若手で同テーマを強力に推進しようとする人材が責任者となっている企業の印象があります。
同記事も手がかりにすると、年齢によってどうこうではなく、外国人とのある程度の交流経験があるかどうか、直接の理解があるかどうかの差ではないか、というわけです。
地域社会に外国人が増えることを「好ましい」と答える人が過半数を超える18〜19歳が政策立案者の中心世代となる今後は、もしかしたら受け入れ環境は大きく変わっていくのかもしれません。
このことは、外国人理解に限ったことではなく、他のあらゆるテーマに共通して言えることだと思います。
例えばDX(デジタルトランスフォーメーション)。総論では必要だと感じていながらも、意思決定者である経営陣がその本質を知っていない、DXと言えるようなことに直接触れた経験がないために、なかなか進んでいかない、という状況は時々聞くことです。
何かを推進していこうとするなら、意思決定者がそれを勉強して本質から理解するか、あるいは本質を理解している人材に予算と権限を預けて見守るか、のいずれかが必要なのだと思います。
<まとめ>
相手を知ることなしに、相手に対する肯定的な推進者にはならない。