期末賞与の支給方法
先日、ある経営者様とお話している際に、次のような問いかけを受けました。
「会社として目標を上回る利益を上げた時に、夏・冬の賞与とは別に、利益を社員に還元する期末賞与を出そうと思う。期末賞与の出し方として、社員全員に一律で等額支給するのと、評価結果や役職等の階層に応じて支給金額を分けるのと、例としてどちらが多いだろうか。また、制度化するにあたって留意点はあるだろうか」
会社が想定以上の利益を上げた時に、期末賞与として支給し社員に還元している企業は、よく見かけます。次の3つのどのパターンも、やり方として相応に見かける印象です。
1.職種・等級・役職などに関係なく、社員全員に一律で等額を支給する
2.職種・等級・役職などの違いに加え、何らかのルールで算定した評価結果を勘案し、利益に寄与した貢献度の違いによって社員ごとに金額を変えて支給する
3.評価結果は加味しないが、職種・等級・役職などの違いで金額を分けて支給する
どれが正解というのはなく、相応にメリット・デメリットが存在します。
1.のメリットは、「利益を全員でつくったから最後は等しく分配しよう」という、組織全員でつくった結果という趣旨と、メンバーとしての一体感を出しやすくなることです。社員ごとに支給金額を判断する手間が省けることも挙げられます。
一方で、積極的な貢献をした人からすると、そうでない人と同じ支給金額というのが納得感がないかもしれません。そうした不公平感につながるかもしれないのが、デメリットです。
2.のメリット・デメリットは、1.の逆です。残った利益から貢献者に手厚く分配することで、是々非々で社員に処遇するという考え方を打ち出しやすくなります。一方で、各人毎の支給金額を判断し計算する手間がかかります。
加えて、夏・冬の賞与や翌期の基本給など、別の機会に評価結果に応じた是々非々の還元を既にしているために、期末賞与でもさらに評価結果を持ち出すことで、(夏・冬とは評価ルールが違ったとしても、似たような評価結果になることが多く)同じような評価結果を多重計上することになります。
「立場は違うし、今期直接業績に貢献できた大きさが社員間で違うかもしれないけど、最後の利益分配ぐらい均等にしよう」というやり方のほうがフィットしている価値観の会社は、1.のほうがよいかもしれません。どのような支給方法にするのかは、自社の考え方にもよります。
個人的にあまり有効に機能しないのではないかと思うのが、3.です。部長は〇円、課長は〇円、3等級は〇円、2等級は・・・といった具合に等級や役職ごとで一律にすると、「あの課長は、今期のあの働きぶりで、自分より多くもらうのか」など、フリーライダーを生み出すのではないかという不満を高める結果になるためです。3.であれば、2.まで行ったほうが、有効に機能しやすいと考えます。
期末賞与を制度化するにあたっての留意点は、期末賞与が支給される財務構造を社員に理解させ、支給根拠を明確に示すことです。
会社がどのような利益を残せる結果となった時に支給するのかの条件を明確に打ち出して、毎年期末に何となく支給される季節のイベントや固定給の一部と認識されないようにします。期末賞与が当然の権利のように認識されると、支給されなかった年度に社員の間で不満になるばかりか、極端な場合は支給されないことに対して制度の不利益変更だと叫ぶ人も出てくるかもしれません。
上記の前提として、支給有無や原資算出のロジックを明確に持っておくことが必要です。適当な例ですが、目標営業利益に対して120%以上を達成したら、100%を超過した分のうち何分の一を期末賞与の原資とする、などです。
支給対象者を明確にしておくことも必要です。年度の途中まで就業し期末は休業中の人にはどれだけ支給するのか、年度途中から復職や採用した人にはどれだけ支給するのか、期末の時点で退職が決まっている人も支給対象にするのか、などです。
ある企業様は、期末賞与支給日時点で試用期間中でない人に対して、当期就業した月数で均等に支給する、というルールにしています。例えば、年度初めから10か月間就業し、期末の2か月前から産休に入った人に対して、役職や評価結果に関係なく等額を10/12にして払うということです。とてもシンプルで運用しやすいと言えます。
組織が生み出した利益の適正な還元は、社員の納得感を高めて就業意欲の維持につながります。工夫すれば、報酬制度の一環として有効に機能するものになり得ます。
<まとめ>
期末賞与は、自社の考え方に応じた、明確な支給ルールをつくっておく。