中国車の躍進を考える
10月18日の日経新聞で、「中国はおいしい車市場か」というタイトルの記事が掲載されました。三菱自動車が中国での生産から撤退を決めるなど、中国の車市場の環境変化を踏まえての意志決定がますます迫られてきそうです。
同記事の一部を抜粋してみます。
同記事から想定されることとして、中国メーカーによる国外での自動車販売が今後飛躍的に増えてくる可能性が考えられます。
日本の人口は、約1億2500万人です。2022年度(22年4月~23年3月)の日本国内新車販売台数は、約439万台です。簡易な割り算ですが、1年間で約28人につき1台が、新車として売れていることになります。
中国の人口は、約14億2000万人です。この人口を28で割ると、約5071万となります。同記事の関連統計によると、輸出を差し引いた中国国内での販売台数は、2022年で約2500万台です。このことから連想すると、例えば中国の1人あたりGDPが日本並みの水準にまで高まれば、国内販売台数が今の2倍ぐらいの水準までは期待できるのかもしれません。
しかしながら、日本以上に急激に人口減少が起こっていくことや、同記事の言うように当面の経済環境の厳しさなどを勘案すると、現在の国内販売台数の水準で安定期に入るというシナリオは、十分想定できると思われます。
中国がEVで先行し生産力も手にした一方で、国内の新車販売は頭打ちが想定されるわけです。その状況下で、中国政府も補助金や税制面で、EV生産を手厚く支援していると言われています。加えて、中国依存度の高いドイツ企業は今でも中国で設備投資を続けており、供給過剰になっていくことも考えられます。
そうなると、今後は海外の拠点で生産される中国車に加えて、中国国内で生産され国内で行き場を失った中国車も海外に流れてくることが想定されます。ジャパンモビリティショーに中国から自動車メーカーとして初めてBYDが参加したのは、その動きの兆候と見ることもできそうです。
加えて、海外消費者の中国車に対するイメージの変化も想定されます。
自動車関連サイトをいくつか検索してみたところ、中国車のブランドイメージに関する定量的な変化を直接説明する情報はヒットしなかったのですが、「かつて日本車や日本のクルマ好きにとっては嘲笑の対象だった中国車だが、続々とオリジナルモデルが登場し、技術レベルが大幅に向上してから、笑っている場合ではなくなってきた」(ベストカーWeb)などのように、中国車に対するイメージの好転を予感させる内容が散見されました。日本を含めた他国で、中国車が以前より選ばれやすくなっているのは確かではないかと考えられます。
これらのことから、中国車と他国車の競争は、今後ますます激化すると予想されます。
自動車産業は経済全体に与える影響の大きい存在です。中国車の台頭が本格化していく可能性のシナリオを踏まえて、製造業をはじめとするこれからの産業構造の環境変化を想定し、戦略を判断していくことが求められると思います。
<まとめ>
中国車の台頭が本格化してくる影響を想定する必要がある。