見出し画像

休業日のあり方を考える

3月21日の日経新聞で、「子育て社員を意識、日祝休み広がる 三井不動産レジデンシャルや山形日産グループ」というタイトルの記事が掲載されました。日曜祝日は営業日というのが常識だった業界で、日曜祝日を休業日にする会社が出てきているという内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

三井不動産レジデンシャルは24年度から日曜と月曜を店舗の定休日とする制度を導入する。まずは40カ所ある首都圏の販売拠点の一部で導入する。実績を見ながら、全国へ拡大する。

日曜日を定休日とすると、平日に働く購入希望者との接点が減る可能性がある。三井不動産レジデンシャルはオンラインで平日や土曜日に商談することで契約は減らないと見込む。21~22年度に日曜定休を試行した7拠点でもオンライン商談を組み合わせたことにより、契約実績は計画の80~130%の水準で推移したという。

同社の試算によると、33年に30歳代の総合職社員の半数を女性が占め、既婚者の67%が共働きとなる。日曜休園とする保育園は多く、子育てする共働き世帯には日曜出勤が負担となっていた。

東急リバブルは出産後の女性社員を対象とした育児サポート制度で、23年度からは日曜に休暇を取得しても給与水準が変わらないように制度を変更した。従来は時短勤務扱いで給与水準が下がることにつながっていた。

山形日産自動車などで構成する山形日産グループは、24年度から祝日4日間を休業日とする。「家庭を持つ中堅クラスの整備士が、日曜休業の製造業に多数流出していた」という。そこで22年度に新車販売を手掛ける3社で毎月第1日曜日と第1月曜日を定休日とした。

離職がとまらず、22年度までは社員数は減少傾向だったが、23年度は増加に転じたため、休業日を増やすことにした。「業務を効率化したことで、新車販売の売上高や営業利益はむしろ上昇した」

小売り・サービス業ではこれまで、売上高減少の懸念から日曜や祝日を営業日とする企業が多かった。ワークライフバランスを重視する人が増えるなか、人手不足に直面する企業は従業員の休日の取り方を意識する必要が出てきている。

ハウステンボス(長崎県佐世保市)が24年1月に4日連続休業日を設けたり、一部の百貨店やスーパーが正月三が日に休業したりするなど、企業は休みやすい環境づくりに創意工夫をする。

今後も少子高齢化で労働人口の減少は避けられない。ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員は「テレワークやオンライン商談の普及で消費者も平日に時間をつくりやすくなっている」としたうえで「企業側も人手不足の解消には従業員それぞれのライフスタイルに合わせた働き方を選べる体制づくりが不可欠だ」と指摘する。

同記事からは、2つのことを考えました。ひとつは、働き方の多様化、裁量の自由度はやはり必要だろうということです。

私も保育園を利用していますが、日曜祝日は休園しているためこどもを預けることができません。土曜日も、夫婦が揃って勤務証明を出すことで預けることが可能となります。それでも延長保育ができないため、平日より1時間早く迎えに行く必要があります。土曜日に保育園に預ける際には、かなり計画的に行う必要があります。

ましてや、日曜日に勤務日となることが多いサービス業で夫婦が揃って働いている家庭は、どのようにして保育園児や小学校低学年の児童の子育てをやりくりしているんだろうと思ってしまいます。

一方で、保育園の職員にも休日が必要です。加えて、その日に園の利用者が一定規模いないと運営が成り立たないでしょうから、簡単に日曜日も開けられるかというと、そう簡単でもないと思います。

日曜祝日のうち、夫婦どちらかが休むことができれば、ダブルでサービス業に従事する夫婦であっても、保育園問題は解決に一歩近づけます。

もうひとつは、日曜祝日をすべて営業しないと成り立たない、という考え方自体、固定観念にとらわれているかもしれないということです。

同記事では、日曜を含む休業日を増やしても売上高や営業利益が増えたという、自動車販売店の例も紹介されています。「日曜は営業するのが常識」「書き入れ時の日曜に休むなどありえない」という固定観念は、状況によってはさほど有効性のない考え方なのかかもしれません。

業界や商品・サービスにもよるかもしれませんが、自動車販売店に「ふらっと立ち寄る」人は多くないかもしれません。スーパーなどのように入ってすぐに退出する可能性もあるというより、相応に時間を使ってある程度車を見る前提で入る人が多いと思います。出かける前に、今日その店が開いているかどうかを調べようとする人も多いでしょう。検索して「第1日曜日は休業」と出てくれば、「行くのは次の週にしようか」となります。

そもそも、サービス業が産業の中でも中心となり、働き方も多様化したため、以前と比べて日曜祝日に仕事をしている人も相応数います。日曜祝日より平日に店が開いているほうがありがたいという人もいるはずです。

また、個人のライフスタイルの要素もあります。家選びが楽しくて娯楽のような人にとっては、日曜のモデルルームが娯楽同然に感じられるかもしれませんが、家庭のために半ば義務的に家選びをしている人にとっては、日曜に家の打ち合わせをするより自分の好きなことをして過ごしたい、と感じているかもしれません。

そのような価値観の持ち主は、同記事の例のように、日曜より平日隙間時間にオンラインによって必要な打ち合わせを詰め込み、日曜に解放されたほうが満足度が高まりそうです。同記事にある各社の例のように、少なくとも日曜営業が毎週である必要はないのかもしれません。

働く側の裁量の自由度を高めること、その前提として過剰な固定観念にとらわれていないか、振り返ってみたいところです。

<まとめ>
全部を変えることが難しくても、一部を変えることはできるかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?