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大谷選手への四球は得策なのか?(2)

前回の投稿では、大リーグの大谷翔平選手について取り上げました。意図的な四球にどのような効果があるのか考察を試みる内容でした。

私の周囲でもそうですが、「大谷選手への四球に差別的な扱いを感じる」という声があります。アジア系のプレイヤーは見下されている、タイトル(ホームラン王など)をとってほしくないなどの心情があるのではないか、という視点です。似たような話はこれまでにも、他のスポーツやスポーツ以外でも聞くことがあります。

そうした偏見や差別は感心できるものではないし、あるべきものでないことは確かです。そのうえで、振り返ってみるべきは、日本の社会や自分の身の回りで同じことが起こっていないかということです。

日本でも例えば、王貞治氏の持つ日本球界記録(連続試合本塁打、シーズン最多本塁打など)を抜きそうな外国人選手が出るたびに、このことは物議になってきました。当時のバース選手、カブレラ選手、ローズ選手などです。当時メディアや私の周囲でも、「なんとなく、外国人助っ人選手に越えられるのはどうなのか」といった声がありました。相手ピッチャーも、試合の勝敗につながる作戦上ではなく、記録更新を防ぐ目的で明らかに勝負を避けてそうな場面を、テレビ中継で見た記憶もあります。

今では、家賃支払いを保証するサービスも充実してきたため、それを利用することで外国人の方が賃貸マンションの契約をすることもしやすくなったと聞きます。かつては、外国人だというだけで契約しにくいという話も時々聞いたことがありました。今でも、外国人というだけで特有の視線を送られる組織、コミュニティ、場面などもあることでしょう。

新たに経営幹部や中途採用の人材が入社してきた。前からいた幹部やベテラン社員より優れたマネジメント力や専門力をもっていそうで、それらを発揮して会社を牽引しようとしている。言うこともうなずけそうな内容に聞こえる。しかし、前からいた幹部やベテラン社員は快く思っていない。なぜなら、新参者の指示命令に従うのは面白くないから。前からいた人に指示命令されるなら納得するが。こうした話は、普段関わることのある会社様でよく聞く話です。これも構図としては同じでしょう。

非合理的な理由や理不尽な理由による特別扱い(差別的扱い)は、どこの世界でも起こりえることです。今回の件で差別的な扱いを感じたのであれば、自分自身が同じ目線で普段対応していないかを振り返ってみることが大切だと思います。

そして、自分自身が新たなコミュニティに飛び込んだ時に、同様の差別的扱いを受けかねないということも、押さえておくべきだと言えます。常に全員から歓迎されるとは限らないということです。歓迎しない受け入れ側のほうが問題だと言ってしまえばそれまでですが、自分なりの防衛のための処方箋を持っておいたほうがよいでしょう。

ひとつのポイントは、「出過ぎた杭は打たれない」だと思います。

上記のシーズン最多ホームラン記録も、2013年にバレンティン選手(当時)が60本を打ち、王貞治氏の55本を大幅に塗り替えて歴代最高記録を更新しました。それまでは、ローズ選手55本(2001年)、カブレラ選手55本(2002年)、バース選手54本(1985年)と、55本に届くかどうかという微妙なところで壁になっていました。しかし、それを大きく上回る60本というペースは「出過ぎた杭」であり、そこまでいくと止めようがないということもあったのではないかと想像します。

いい意味で「出過ぎた杭」になれば、非合理的な理由や理不尽な理由による差別的扱いすら凌駕していけるということだと思います。「出過ぎた杭」はよく聞く言葉ですが、私たちが新たな環境に飛び込む際には、改めて認識しておきたい概念だと思います。

大谷選手の場合も、仮にホームラン数で他者を大きく突き放していれば、冒頭のような物議は起きにくくなるのかもしれません。(もっとも、野手+投手としてのトータルの活躍で言うと、既に十分すぎる出過ぎた杭ではあるのですが)

<まとめ>
非合理的な理由や理不尽な理由で何かを見ていないか、自身を振り返る。


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