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新社屋への移転の例
先日、北海道帯広市にある、宮坂建設工業株式会社様を訪問する機会がありました(同社様の許可を得て、社名を紹介しています)。同社様では、3年前の2021年に新社屋が完成し、本社移転されています。今回、新社屋に初めて訪問し、ご案内いただく機会があったのですが、たいへん印象的な体験でした。
見た瞬間に、まず見事な外観に圧倒されます。
同社屋は2021年に、帯広市が優れた景観、まちづくりに貢献している建築物を表彰する、帯広市まちづくりデザイン賞に選ばれています。
参照URLは、例えば下記です。
https://www.miyasaka-cc.co.jp/2021/12/09/post-9128/
https://www.miyasaka-cc.co.jp/2021/04/16/post-7560/
当日お聞きしたお話、いただいたご案内資料、上記リンク等を参照しながら、同社屋の特徴をいくつか私なりに挙げてみます。
・地域との共生
同社屋は、地域の方々にとって親しみやすく、愛着を感じてもらえる建物になることを願ってつくられたそうです。様々な植栽や十勝の農村風景をイメージした配色の外壁など、魅力的で良い景観が評価されているようです。
「地産地消」のイメージで、地元の素材を使った木造・平屋建てです。樹木の伐採から輸送、製材・加工まで、地元企業との強力なチームワークによって建設を進めたそうです。平屋建てという設計は、日々の執務で効率的な動線を踏まえてのことでもありますが、周囲が住宅地であることを配慮し高さを抑えるという目的に沿ったものです。
・防災センター
事業継続計画(BCP)の拠点としての防災センターには、非常用発電設備、十分な容量を備えた重油設備、給水設備、排水設備、そして非常食など、防災対策の設備も充実しています。これらは、地域の防災機能として、半径300メートルの近隣住民の皆さんと、同社様従業員及びその家族合わせて1,300人が、有事の際に3日間(72時間)生活することを可能にしています。
社屋を見下ろすことのできる、2階+PH階の物見塔は、地域防災活動の象徴になっていて、有事の際に半径300メートルの近隣の状況を一望し見渡すことができる高さになっています。
・コミュニケーションを促す執務室
執務室を、中庭を囲む「コの字」型にし、従業員が一丸となって団結する姿勢を表すレイアウトになっています。また、執務室内の社長の座席からはすべての事業部・社員の座席が見えるようになっていて、全組織の様子を概観できる点も特徴的です。
執務室の内装には地元産のシナ材、トドマツ材がふんだんに使われていて、やわらかな素材でつくられた空間が、長い時間を過ごしていても余計なストレスを感じさせないつくりになっています。社員が一堂に会しながらも、デスクの配置間隔に余裕をもたせ、落ち着いて仕事ができる環境を追求しています。
・コミュニケーションを促す中庭
社屋の中心に位置していて、社員専用のプライベート屋外空間と位置づけられています。社外からの視線を気にすることなく、仕事の合間の休憩やミーティングスペースとして利用できます。
人工芝のコートには明るさも感じられます。軽スポーツやバーベキュー、社員や地域の方々を招いてのイベントが開かれることもあるそうです。
そもそも、中庭があるオフィスは少数派です。私は中庭のあるオフィスを初めて見ましたが、緑を見るとやはり安らぎを感じます。
・コミュニケーションホール
大会議室に相当する空間ですが、社員同士が所属や世代の垣根を越えて気楽な会話ができるよう、「カジュアル&リラックス」をテーマにつくられています。
朝礼、ミーティング、研修会など社内のフォーマルなイベントが行われるほか、交流パーティー、映画上映会などの各種イベントにも使われます。引き戸を開放し、ホールと中庭を一体にして運用することもでき、災害時には地域住民の皆さんを受け入れる避難スペースとしても使うことが可能になっています。
・気候風土に対応する設備
冬の寒さを中心とした、変化に富む十勝の気候に対応できる設備が充実しています。建物は断熱性能に優れています。天井の断熱が厚400mm、壁の断熱が厚290mmを確保。断熱性に優れた木製サッシ、樹脂製サッシ、トリプルガラスなどの採用で高断熱・高気密を実現し、空調の負荷とランニングコスト低減を図っています。
平屋建ての特徴を活かして天窓を設置し、建物内に太陽光を効率よく採り入れて、明るさに加えてウイルスの不活性化を促しているとのことです。晴天時には人工照明に頼ることがないそうで、季節の変化や時間の移ろいを感じることができるそうです。
各室の窓は「高窓」が原則となっていて、換気を行う際も防犯がおろそかにならないよう配慮されています。窓に加えて中庭が、いつでも新鮮な空気を取り込むことができる機能も担っています。中庭から、天窓、高窓へと風を抜くことで、効率よく室内の自然換気ができるようになっています。
・全社が一体となったプロジェクト
同社屋は、建設会社である同社様により施工がなされました。自分たちで自分たちの社屋をつくるということです。納期に対してひっ迫する場面もあったようですが、社員総出の取り組みとして乗り切ったというお話です。
魅力的な社屋ということで、メディアで取り上げられるなど話題にもなり、見学者も訪れるそうです。
社屋が事業や仕事の成果を直接生み出すわけではありませんが、大切な要素のひとつであることは確かです。そのあたりのことについて、次回考えてみたいと思います。
<まとめ>
地域との共生を、前面に出して設計された社屋もある。