雇用動態等から今後の景気動向を考える
物価上昇や景気の先行きに対する懸念のニュースが散見されます。
例えば12月16日の日経新聞では、「米のインフレ圧力根強く FRB、賃金上昇に警戒感 経済軟着陸へ難路」というタイトルの記事が掲載されました。一部抜粋してみます。
上記から、3つのことを考えてみます。ひとつは、今後の短期的な景気動向には、やはり注意を要しそうだということです。
先日の投稿「先行指標(PMI)で景気動向を考える」では、2020年以降初めて世界3大経済圏の米国、中国、欧州のPMIが揃って50を下回る状態となっていることを取り上げました。上記記事にある「米FOMC参加者が見通す2023年10~12月期の経済成長率は0.5%に下方修正」などからも、先行きはやはり厳しいことが伺えます。
中国も、10~12月が前期比でマイナス成長になるという予測も出るなど、さらに景気が失速しているという観測もあります。ゼロコロナ政策の緩和で内需の回復も期待されますが、どのような推移をたどるのかは未知数です。
ユーロ圏も、米国以上にひっ迫するエネルギー問題やストライキなどの影響もあり、実質成長率が23年1~3月期まで2四半期連続でマイナスの予測が出るなど厳しい見通しです。日本経済もこれらの外需に当然影響を受けますので、当面は楽観できない状況と言えそうです。
2つ目は、短期の厳しい見通しの先に展開が変わるかもしれないという点です。上記にも、賃上げ圧力がかかり続けているとあります。賃上げはインフレの鎮静化を遅らせ、人件費増で企業業績にも影響を与えますが、消費を支える原動力になる点ではプラスとなります。米国を中心に、極端な需要減には至らずに回避できる可能性があるのかもしれません。
3つ目は、定量情報は、全体と個別と両面で押さえることが大切だという点です。上記で「ハイテク業界で増えている一時解雇(レイオフ)も米国全体で見ればまだ低水準」とあります。ツイッター、アマゾン、メタなどでの人員削減のニュースが印象的に見えますが、これらは全体の数で見るとわずかな割合で、雇用市場全体は堅調というわけです。
全米雇用統計の11月分も26.3万人増と、人口動態等の観点で巡航速度とされる20万人増を上回る状態が続いています。「ハイテク業界で相次いでレイオフの動き=恐慌」のようなイメージを持ってしまうと、実態と異なる認識になりかねません。このことは、仕事で何かのデータを集めて分析するようなときにも、当てはまります。
いずれにしても、当面の企業活動・事業活動では、今後の動向を慎重に見ておくべき局面が続くのではないかと思われます。
<まとめ>
今後の景気動向に注意する