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組織外からの人材を受け入れる

7月5日の日経新聞で、「知で越える危機(1)高度人材、国境越え争奪」というタイトルの記事及び関連記事が掲載されました。人材の誘致力が国力を左右するという内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

優秀な自国の人材をつなぎとめ、さらに海外からも高度人材を呼び込むことで国の成長は加速する。逆にそれができない国は競争力で劣後する。

経済協力開発機構(OECD)は19年、賃金や就業機会、社会の寛容度などの指標から各国の「人材誘致指数」を算出した。上位は北欧諸国で特にスウェーデンが0.63と高い。移民流入への制限が少なく外国人が広く就労機会を得られる。

自国民向けに充実しているリスキリング(学び直し)の機会を移民も平等に利用でき、キャリア展望を描きやすい。国がスタートアップ育成などで外国人を生かす姿勢を打ち出し、呼応するように人材が集まる。時間あたり労働生産性は70.3ドルと日本(47.4ドル)を約5割上回る。

米国も誘致指数が0.59と高水準だ。外国人に昇進の機会が開かれ、高い賃金を得るチャンスも多いことが人材を引き寄せる。米国の時間あたり生産性は71.5ドル。

移民流入の好影響は研究が裏付ける。米カリフォルニア大デービス校の研究者らによると、高度な技能や知識を持つ移民の割合が1ポイント増えた都市では大卒労働者の賃金が7~8%上昇した。ジョバンニ・ペリ教授は「人材誘致が地域全体の成長に波及する」と話す。

ペリ教授によると米国ではSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の大学卒業生の約3割を外国人が占め「質の高いアイデアを生み出す力につながっている」。

国が後手に回る一方で民間は動く。仮想オフィスを企業に提供するoVice(オヴィス、石川県七尾市)は2020年の設立後、顧客企業が2000社超まで増え、従業員数も100人規模になった。急速な社員増を支えるのは全体の約3割を占める「越境ワーカー」。米国や韓国、チュニジアなど海外で暮らす完全リモートワークの社員だ。

韓国生まれで日本で起業したジョン・セーヒョン最高経営責任者(CEO)は国境に縛られない。成長への道筋を示し働きがいのある環境を提供すれば「採用競争で米国の大手IT企業にも対抗できる」と話す。

上記で紹介されたデータを参照すると、横軸に「高学歴労働者に対する誘致指数」をとり、縦軸に「時間あたりの労働生産性」をとると、ほぼ右肩上がりの直線になります。つまりは、両者は相関性があり、人材を誘致する国は労働生産性が高いということです。

OECDによると、日本の高度人材誘致指数は0.5で、先進国平均を0.04ポイント下回っていて、33カ国中で25位だということです。人口減少で外国からの人材活用も掲げる中での、課題を示していると言えます。

関連記事で次のような内容もありました。(一部抜粋)

経済協力開発機構(OECD)の「人材誘致指数」を参考に、優れた人材の呼び込みに関連する6つの指標について先進34カ国を比べた。日本は「治安・安全性」のスコアが高いが、残る5つの指標はいずれも先進国平均を下回った。

「外国籍の人を信用するか」というアンケート調査から算出した「社会の寛容性」も日本は他の先進国と比べて低い。

同指標の各国との相対的な比較では、日本は「治安・安全性」のスコアが高く、「所得税の低さ」がほぼ同じとなっています。それら以外の、「実質賃金」「移民受け入れ政策」「社会の寛容性」「外国人の就業率」が日本は低くなっています。国の政策に加えて、国民の意識も移民受け入れの観点からは課題があることがうかがえます。

ところで、上記のことは、国という組織の単位から、いち企業という単位に置き換えても、ほぼ同じことが言えるのではないでしょうか。(所得税などの要素は除き)上記で挙がっている要素を、外国からの流入人材=社外からの中途流入人材に置き換えて、次のように考えることもできると思うわけです。

・社外の中途人材を誘致する力のある企業は、組織全体の労働生産性も高い
・中途で流入してくる人材受け入れに対する寛容性が低い企業は、人材誘致力・生産性が低い
・中途人材流入の受け入れ方針・施策を持たない企業は、人材誘致力・生産性が低く、競争力で劣後する

また、記事中のオヴィス社の例からは、社員の新たな雇用形態や、社外人材との新たな連携方法の可能性も改めて認識できます。

国単位でも企業単位でも、組織外からの人材流入の促進や、組織外の人材との連携・活用が、組織の発展を後押しする要素になると考えます。

<まとめ>
組織外からの人材流入を促すには、施策と、寛容性などの姿勢と、どちらも必要。


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