多能工化で強い職場づくりを目指す
先日、製造業の企業の経営者様から、次のような話をお聞きしました。
「これまで自社ではあまり求めてこなかった多能工化を、これからは従業員に促していく。「この工程だけはできる」人ばかりでは強い現場がつくれない。1人で何役もこなせる人もいることで、生産活動の繁閑にも対応できノウハウの共有も進み、柔軟で強い現場になる。そのうえで、「いろいろなものを身につけてくれ」と単に言うだけでは従業員は取り組もうとはしない。多能工化に取り組む者は評価し優先的に処遇する」
6月26日のNHKニュース(おはよう日本 6:30~)で、「「休み方改革」 決め手は多能工化」という特集が放送されました。カット、塗装、テープ貼付、成形、検査・梱包、出荷といった工程の現場をもつメーカーの職場で、多能工化を進めて従業員が休みやすくする事例を取り上げた特集でした。
同ニュースと関連サイトから、内容を一部紹介してみます。
同番組で紹介された取り組みは、冒頭の経営者様のお話に通じるものを感じます。冒頭の企業様で進めていることも、おおむね同じ内容でした。
・その取り組みによる、職場(組織)のメリットを大切にすると同時に、個人にもたらされるメリットも大切にする
・そのことを、制度などの仕組みで具体的に示して個人に還元する
チームとしての生産性が最も高いのは、各メンバーがそれぞれ最も高い専門性を持っている業務に特化して成果物を全体でシェアする状態だと言えます。ただし、その状態が常につくれる、あるいは維持できるとは限りません。特定の工程を特定の人のみが担当できるという状態は、その人が不在であれば当該工程が止まるということにもなります。
メンバーの多能工化が進むことは、高い生産性で事業活動を柔軟に維持・再編していくためのリスクヘッジとなり、組織にとってメリットが大きいと言えます。また、人材の多能工化が進むことで、1つの工程に対してもより多くの知見が寄せられることが可能になり、アイデア・意見が出やすくなる、休みやすくすることで人材の定着率が上がるなどのメリットにもつながりそうです。
一方で、従業員個人にとってもメリットが感じられなければ、取り組みは進まないものです。お互いに休みやすくなるのも大きなメリットになり得ますが、評価や賃金といったより直接的なメリットも推進力としてやはり大切だということを、同事例は示唆していると思います。
関連サイトを参照すると、同事例の職場で使われている評価シートにはさまざまな業務が項目化されています。例えば、「特車対応」の項目に「IN」「CKC」「TK」といった細分化された項目が並んでいます(専門的な内容であろうため、私には意味合いがわかりませんが)。これらの項目で、身につけた技能・対応できる業務が多いほど、資格手当などの形で賃金が加算されていくのだろうと想像します。
こうした制度は、従業員にとって賃金が増えるメリットがあることに加えて、会社がそうした取り組みを推奨している、評価している、予算をつけるという意志が、具体的な形として伝わる効果が指摘できます。
こうした会社側の意志が感じられることで、その職場で働くことへの安心感が高まることに(個人によって程度差はあると思いますが)つながるはずです。
<まとめ>
組織と従業員双方にメリットがあることを、仕組みとして具体化させる。