DX化の事例から考える(2)
前回は、6月23日のテレビ番組「がっちりマンデー!!」で取り上げられた、株式会社アズパートナーズの事例をもとに、DX化による組織変革についてテーマにしました。同事例から、DX化のような組織変革に求められることとして、リーダーの強い意志と、権限移譲・知恵のボトムアップが挙げられるのではないかと考えました。
2つ目は、異分子(多様性)の活用です。
同社のDX化は、新卒で入社した若手従業員からの発案がきっかけでした。
新しく組織に入った人材から、仕事のやり方やルールについて素朴な疑問を突き付けられるのは、前からいた人材にとっては往々にして煙たいものです。私たちの防衛本能からは、自分の存在を脅かすものとしてそれらを拒絶したくもなります。自分を変化させ、慣れた方法論を手放して新しい方法に適応しようとするのもたいへんなことです。
そこを乗り越えて、異なる意見を受け止めながら組織にとっての最適解を探して形にしていくことの重要性を、同社長は示唆していると思います。
同番組で若手人材が「タイパ」を指摘しています。
若手世代ほどタイパに敏感だと言われます。タイパを求める行動が行き過ぎると、物事の本質を知らずに浅い理解にとどまってしまうという可能性もありますが、別の面では物事に合理性を求めるという、本質への希求の表れとも言えると思います。
「別の方法でもっと効率よく同じこと、あるいは今より質の良いことができそうなのに、なぜこの方法なのか?」というタイパを求める行動は、本質を求める問いかけにつながることにもなります。その問いかけに答えようとする職場環境であることも求められるのではないかと考えます。
同社では多くの新卒人材が入社していると紹介されていました。
若手人材にも、高齢化問題や介護の問題への関心が高い人はよく見かけます。時々「人気の業界・職種/採用難の業界・職種がある」といったことを聞くことがありますが、そのような一概な傾向があるわけではなく、特定の業界や職種が敬遠されるわけでもないと思います。
旧態依然のやり方に追従を求めるだけだと、人材は離れていく。多様な意見を受けとめて、お客さま本位で事業・働く環境を良くしていこうという職場であれば、結果的に人材が集まるという示唆ではないかと考えます。
3つ目は、相手にかけ合ってみることの大切さです。
高齢者ホームでは入居者の全室に対して1晩3回以上巡回が必要という規則がある。社長が東京都などの自治体に直談判に行き、スマホアプリによって巡回の機能が果たせるとして粘り強く直談判し、直接巡回しなくてもスマホでのチェックOKを認めてもらった、と紹介されていました。
行政の決め事や手順に対して、「ルールとして決まっているから、従わなければならない」と私たちは思考しがちです。しかし、本質的に正しいことであるという主張を、根拠と信念をもって説明していくことで、その主張を認めてもらえるかもしれないということです。そして、本事例のように、強い意志で直談判できるのはやはり責任者であるリーダーならではだろうと思います。(もちろん、通るかどうかの結果はものによりますし、ケースバイケースだと思いますが)
これは、取引先の企業、利害関係者の相手など、行政に対してのみならず様々な状況、相手に対して同様に当てはまることだと言えます。
DX化のような組織変革を行うには、やはり相応の環境設定と取り組みが求められるということだと思います。
<まとめ>
タイパ思考は、物事の本質追求の表れでもある。