5月16日の日経新聞で、「「レジは座って」接客改革 人材確保へ身体的負担減」というタイトルの記事が掲載されました。「レジの従業員は立って接客するものだ」という、長年定着していた固定観念を覆して、レジに作業用のイスを設置する取り組みについて取り上げたものです。
同記事の一部を抜粋してみます。
5月24日のヤフーニュースでも、「「立ったままの接客」厚労省が実態把握へ 椅子の設置、実は義務」という類似の内容の記事が掲載されました。一部抜粋してみます。
両記事から2点考えてみます。ひとつは、お客さまの立場に立った本質は何かという視点です。
国が義務化しているということは、労働者の就業環境のためにはそのほうが望ましいとみなしているということです。もし椅子を設置しないとするなら、その義務に背いてでも設置しないことが正当化されるぐらいの、立つことに対するお客さまによるニーズや、立つことによりお客さまに提供できる便益があるという理由が存在しているはずです。
しかし、上記2つの記事の範囲内からは、お客さまの視点からはあまりそのことが当てはまらないように見受けられます。限られた範囲内の調査であり、店舗の性質によっても結果が異なる可能性もある前提ですが。
それがお客さまにとって意味のあることなのか。次に、それを自社が持続的に行うことができるか。立ったままのレジ打ちも、これらのことを本質的に考えたうえで、採用するかどうかを決める、という流れになるべきです。まず、それがお客さまにとってどのような意味があるのかを、おさえられているかどうかだと思います。
上記記事に「お客さんからの印象の悪化を防ぐため」という回答内容がありますが、そもそもそのことによって印象が悪くなるのか、ということです。
ヤフーニュースに対するコメントの中には、「欧州ではレジ係は皆座って仕事をしている」「日本はどうでもよいことに対して厳しい。何事も形から入るというのは理解できるが、礼儀を厳格に求められる職業は多くはない」「レジは支払いをする場所であり、対応と挨拶が普通にできていれば、立ち座りは問題ないだろう」といったような内容も散見されました。
お客さまが100人いれば100通りの意見が出てくるかもしれません。そのうえで、自社がだれに対して何を提供したいかを明確にし、少数意見をどこまで踏まえるべきかの判断も必要になってきます。
もし自社の提供するサービスにおいて、お客さまにとってあまり意味がないのであれば、見直しを考えるべきでしょう。
2つ目は、思考停止していないかという視点です。
自組織なりに検討し、自組織としての解を見出したうえで、「やはり立ったままの接客とする」と結論づけるならそれもひとつの正解です。
しかしながら、上記ヤフーニュース記事の事例では、お客さまの声というある程度のエビデンスがありながらも「下手に慣習を変えて波風立つと厄介だから、現状維持のほうが無難」という思考停止に陥っているのではないかと想像してしまいます。(もしかしたら、本質的に考え抜いたうえでの現状維持かもしれませんが)
現状維持を標榜する思考停止が文化として固着している組織があるとするなら、椅子の設置だけではなく、おそらくその他のテーマや課題についても同様に思考停止している可能性が高いものです。
・お客さまの立場で本質的に考えているか。当たり前だと思っていたことが、実は本質からずれていないか
・安易な現状維持志向で思考停止していないか
自社や周囲に置き換えて、振り返ってみたい視点です。
<まとめ>
そのことがなぜ必要か、本質的に考えてみる。