社内転職を制度化する
7月24日の日経新聞で、「みずほが「社内転職マーケット」 4万人対象 全84の職務から選択、スカウトも 人的補充の発想見直し」というタイトルの記事が掲載されました。みずほフィナンシャルグループ(FG)が、「社内転職」に関する人材データベースをつくって、事業部門による選考で自らを売り込んだり、スカウトを受けたりできるようにする制度を導入するという内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
部署への異動やプロジェクトへのアサインを社内公募する制度はいろいろな企業で聞くことも増えましたが、さらに踏み込んで社内転職を制度化するという内容です。
ポイントは、「強い異動希望あり」を選べば例外なく「全員が必ず選考に進む」ことにあると思います。
これによって、各人はキャリアの進み方を自分で選び、キャリアに自律的に向き合うことにつながります。希望すれば必ず選考に進むわけですので、選考が行われないとなれば、自らが希望しないという道を選んだ結果ということになります。今いるところでのキャリア開発を進めていくことになります。
希望した場合に、希望の部署や職種に転換できなかった場合は、選考というプロセスは行われたうえで何かの条件が折り合わなかった結果となります。そうであれば、条件に合うための能力開発を行う、時機を待つなど、その結果を受けて何をすればよいかのアクションが具体的になります。つまりは、キャリア開発の道筋が明確になるということです。
言ってみれば、リスクの低い環境で転職に挑戦できるようなものだと例えることができると思います。
別の企業への転職であれば、リスクはより高く、うまくいかない場合のリカバリーには大きな負荷がかかります。しかし、同じグループ内であれば、うまくいかない場合でも次の活路を見出すこともしやすく、従業員にとってキャリアチェンジのリスクが低いと言えます。
また、数万人を擁するグループであれば、直接部門から間接部門まで多彩な組織・職種・仕事があるはずです。同記事のような制度が導入されれば、外部の転職市場に活路を求めなくても、所属する企業グループ内で探せる可能性が飛躍的に高まると思われます。大企業の強みを生かした、有効な施策だと感じます。
組織の側も、よりマッチング率の高い人材が配置される可能性が高まるなど、メリットは大きいと思います。情報管理、面談、組織と個人双方のすり合わせなど、相応の運営負荷はかかるはずですが、それ以上のことが十分に得られる制度ではないかと想像します。人材の定着率も高まりやすくなるはずです。
少し前から、従来の人事部門に加えて、各事業部門でも人事関連の業務を主な役割として担うHR Business Partner(HRBP)を設置する会社が増えてきました。全社レベルでの人事部門が人事業務を統括・担当する体制だけでは、現場に即した実践的な人・組織づくりの推進に限界があるという背景からです。
同記事の事例も、全人材に関する情報管理など全社横断の人事機能と、各事業部門での人材に関するニーズや課題形成、各人の意向の表明など各事業部門での人事機能との、合わせ技で運用する人事のあり方の一例のように見受けられます。
今後、このような例は増えていくのではないかと感じます。
<まとめ>
異動希望者全員に、人事異動・配置再編の選考に進んでもらう仕組みというのもあり。