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転勤制度の選択肢拡大

10月30日の日経新聞で、「三井住友信託、転勤の可否を半年ごと選択 転職や介護離職防ぐ」というタイトルの記事が掲載されました。いろいろな業界で、エリア限定職や転勤の可否を選べるコース制度など、勤務地に関する働き方の選択肢を増やす制度が広がっていますが、その動きの一例を取り上げた内容です。

同記事の抜粋です。

三井住友信託銀行は2025年秋にも、社員が転勤の可否を半年ごとに変更できる制度を導入する。ライフステージの変化に応じて柔軟に働き方を選択できるようにすることで、若手の転職や中高年社員の介護離職を防ぐ狙いだ。

新制度では社員がまず首都圏、近畿圏、中京圏の3つのうち1つを本拠地として選ぶ。半年ごとにエリア外への転勤を希望するかどうかを会社に申告し、希望しない社員は域内の拠点のみの異動となる。北海道や九州など3地域以外の拠点には、原則として転勤可と申し出た社員のみ異動する。

例えば、独身時代には転勤可を選び、結婚後に単身赴任を避けるために転勤不可に変更するといった働き方ができるようになる。介護が必要になった時に転勤不可を選ぶといった選択も可能だ。

三井住友信託が新制度を取り入れる背景には、転勤によって自らや家族の人生設計を変更することに抵抗感を持つ会社員が増えていることがある。人材サービス大手のエン・ジャパンの4月の調査では、回答者の69%が「転勤は退職のきっかけになる」と答えた。特に共働きが当たり前の若い世代ほど転勤を嫌がる傾向が強い。

三井住友信託はこれまでも入社時に転勤の有無を選ぶコース制を導入していたが、柔軟に切り替えることはできなかった。選択の機会を頻繁に設けることで、社員が急に転勤が難しくなったケースでも対応できるようにする。

転勤の有無に関連するコースを選べるだけでなく、切り替えることを可能にしている会社は多くあります。その中でも同社のように、半年という高頻度で申告し切り替えを可能にする例は、なかなか見ないのではないでしょうか。従業員が働き方を選びやすくなる点で、有意義な仕組み作りだと考えられます。

以前の投稿でも、勤務地や転勤をテーマに考えました。個人の観点からの選択肢として、例えば以下のような分類ができるのではないかと考えました。

1.全国転勤ありを公言している組織で働く
2.エリア限定(関東地方のみなど)での転勤ありを公言している組織で働く
3.転勤なしを公言している組織で働く
4.転勤する・しないを選べる制度を公言している組織で働く
5.拠点が1つしかないなどで、転勤という事象が存在しない組織で働く
6.制度上は転勤ありとなっているが転勤を断ることができる例があったり、転勤なしのはずだったのが発生する例があったりして、方針がはっきりしない組織で働く
7.(3.に近いが)居住地と勤務地が関係ない環境の組織で働く(例:居住地自由で月に1回の出社を義務付けている会社など)
8.組織に属さずフリーランスとして働く(起業を含む)

以前の社会では、3.はほとんどありませんでした。7.は以前は皆無で、コロナ後に出てきた新たな概念だと言えます。以前の社会では企業に採用されている選択肢の割合として1.と5.に偏っていたのが、今では各選択肢を持つ企業が相応数見られるようになってきました。同記事の例は、2.と4.のかけ合わせだと言えます。

企業・マネジメントとして避けるべきは、6.の状態です。

労働力人口の減少などに伴って、組織(会社)より個人(従業員)のほうが力が強い、売り手市場が続く時代になってきています。そして、個人には、子育てや介護などいろいろな事情を抱えながら働くケースも増えています。個人が責任をもって選べる環境づくりは、避けて通れないテーマだと思います。

6.のように曖昧な方針・ルールでは、個人も責任をもって選ぶことができません。また、転勤の負担が一部の人材に偏り、社員間で不公平感の要因になっていることも、多くの企業で見られる事象です。

何を選択するかは個人の自由です。また、転勤を避けようとする人材が以前より増えたことは確かですが、転勤に抵抗がない、あるいは経験を積む機会として積極的に受け入れる人材も中にはいます。転勤が、自社の戦略にとって重要で必要だと考えるのであれば、それを条件として明確に謳って、それに合致する人材を集めればよいわけです。

テレワークという形態を自社ではどこまで許容するかと合わせて、今後の雇用テーマのひとつになりそうです。

<まとめ>
転勤に関する自社の方針・ルールを明確にする。

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