中国の開発用不動産を考える
9月1日の日経新聞で、「中国主要不動産11社、開発用地3割評価減なら債務超過 政策効果は限定的」というタイトルの記事が掲載されました。しばらく前から各所で中国の不動産市場の見通しが懸念されていますが、そのことについて取り上げたものです。
同記事の一部を抜粋してみます。
資本は、返済義務のないお金です。負債は、返済義務のあるお金です。負債総額の約10兆3400億元は、返さなくてはいけない借金です。
一方で、持ち物である資産は約12兆3300億元です。そのうち、開発用不動産が約6兆3500億元ということで、だいたい半分です。残りの半分は、現金や現金以外の金融資産や設備などです。仮に今すぐ借金を返済しなければならなくなったとしても、すべての持ち物を投入できるのであれば、10兆<12兆で返済可能です。
しかし、開発用不動産は、売れることが決まっているわけではないものが含まれているようです。「土地使用権や建設中の物件を完成させれば、これぐらいの値段で売れるだろう」という想定のもと、仕入れた土地の評価や建設中の建物の評価が約6兆3500億元ということです。
実際にこれに近い値段で売れれば問題はありません。あるいは仕入~開発の間に評価額が上がってより高い値段で売れれば、差分が利益となって成長していきます。以前はまさにこのモデルが成り立っていたのだろうと想定できます。
逆に、約6兆3500億元を下回る値段しかつかない場合は、売って回収できるお金が減ってしまいます。同記事によると、主要11社全体で開発用不動産の評価額が3割下がると、主要11社全体の借金が返せなくなるというわけです。同記事の内容だけでは全貌は分かりませんが、しばらく前から各所で指摘のある不動産市場悪化の情報等によると、想定されうるシナリオだとも考えられます。
現在、1元=約20円です。10兆3400億元は、203兆4000億円となります。日本のGDPは約560兆円です。日本の国家予算における一般会計は約110兆円です。これらを踏まえると、中国の不動産開発会社による借金の金額が、主要11社のみでも莫大な規模だということがイメージできます。仮にこれらの返済が滞ってしまった場合、その影響は莫大なものとなりえます。
中国の不動産市場は基本的に国内資本で成り立っていて、海外からの投資はほとんどないとも言われます。しかしながら、中国の不動産業界は中国GDPの約3割を占めているため、当然ながらその悪化は中国経済全体の悪化へ大きく影響します。中国経済とかかわりのある日本をはじめとする他国への影響を与えます。
中国の不動産市場を注視すべき状況が当面続きそうです。
<本日の一言>
海外経済動向に注視が必要。