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目先のマイナスを乗り切る

先日、経営者仲間数人と1年間を振り返る機会がありました。その中では、年後半に取り組んでいた大型案件が、利害関係者の承認が下りず流れてしまったという、新興企業の経営者様によるお話もありました。

同経営者様としては、かなり力を入れた案件だったということで、ご本人にとってのその出来事の大きさと悔しさが、言葉の節々ににじみ出ていました。

その出来事の振り返りとして出てきたお話から、2つのことが印象に残っています。

・前に進むから壁があるのであり、課題・トラブルがあるからこそ成長する。そこに感謝する。自分はさらなる高みと成長を目指しているからこそ苦しい。苦しさから逃れることを考えるのではなく、苦しさの中でどう向き合っていくのかを考えたい。

・来期はいったん下方修正を決断した。来期に実現させるものを絞る。将来ビジョンを実現させ飛躍するために、来期は準備期間と位置付ける。

そのお話が頭に残り、12月20日の日経新聞で掲載された記事「餃子の王将、持続型成長の一手 長期改革、目先のマイナス覚悟」を思い出しました。同記事を抜粋してみます。

ヒット商品は一時的な話題型と持続型に大別される。時代の流れを捉えた話題型ヒットの誕生は決して簡単なわけではないが、持続的に成長することは話題作り以上に困難を極める。

今回は持続型ヒットの代表として王将フードサービスが運営する「餃子の王将」を取り上げる。事件に巻き込まれたり、過去2年間ほどで4回も値上げもしたりする中、既存店売上高は11月時点で38カ月連続のプラスと好調ぶりが際立つ。

様々な分野での値上げが続く中、消費者の節約志向は強まり、王将やハイデイ日高、サイゼリヤのようなコストパフォーマンスの高い外食は強い。もっとも外的環境だけではない。長期的な視野でのメニューや店作り、人材育成など確かな戦略で好結果を導いている。

王将の場合、2014年3月期に社長に就いた渡辺直人氏の〝現場感覚〟の高さが光る。まだ東京での知名度が低い頃から店長を務めていた渡辺社長だけに、店、ひいては企業全体の売り上げの底上げには従業員のレベルアップと待遇改善、生産性向上が欠かせないと判断。目先のマイナスを覚悟した上での長期的な改革が功を奏した。

社長就任時はまさにデフレで、コストカットが吹き荒れた時期。しかし渡辺社長がまず取り組んだのはベースアップと現場の働き方・業務改革だったのだ。いきなり定昇込みで1万7千円賃上げしたほか、営業時間を短縮。そして主力のギョーザ作りを根本的に変えた。

それまで店内で1個ずつ作っていたが、これをセントラルキッチン(CK)での製造に移行した。これは外食企業にとってリスクを伴う。というのも手作りからCKに変えると「機械化でおいしくなくなる」との風評が広がるからだ。

しかし温度管理を考えると一定の環境を保てるCKの方が優位で、品質も安定するとの読みがあった。ニラやニンニクなど主要な具材も国産に切り替え、素材の切り方や練り方も工夫。さらに製造後は48時間以内に使い切る仕組みに改めた。

もっとも、消費者には品質向上は簡単には伝わらないし、人件費アップと営業時間の減少で収益力は落ちる。こうした逆風に対して渡辺社長は「人への投資は時間がかかる。改革1年目の15年3月期の業績は捨てた」と話す。言葉通り、従業員満足度が上昇に向かい、味の向上が伝わり始めると18年3月期から業績は回復。20年3月期に過去最高の業績を実現した。

好業績にほっとするのもつかの間、20年からは新型コロナウイルスが吹き荒れる。営業時間が短くなり、収入減になる。そこでこの時期を従業員のスキルアップ研修に充てた。ライブ配信で焼き方やいため方、ラーメンの作り方などを教え込んだ。この現場力と商品力の底上げが3年に及ぶ既存店売上高のアップにつながっているのは間違いない。24年3月期には最高業績を更新している。

最近では「今は満腹感より満足感」と少量メニューを用意したり、ニンニクを使わない、あるいは「ニンニク激増し」ギョーザを投入したり、改良に余念がない。「とにかく人と商品」(渡辺社長)とぶれないのが王将流。悩んだら原点回帰がヒットの王道である。

同記事からは、長期で成長を続ける企業は偶然ではなく、やはり相応のビジョン・事業計画と実行の徹底があることを改めて感じます。

加えて、「人への投資は時間がかかる。改革1年目の15年3月期の業績は捨てた」というのが印象的です。

今では大幅な賃上げも社会的な流れとして一般化しましたが、2014年当時はほとんど聞かれなかった概念です。いったんしゃがむことを決断し、大幅賃上げを含めた同社なりの成長戦略を断行するのは、困難な決断だったのではないかと推察します。

将来ビジョンを描き、何にどう取り組むのかを決めて、いったんしゃがむことを必要なこととして決断する。個人的に、冒頭の経営者様の言葉に重ね合わせました。中長期的な大義のためであれば、目の前の業績だけに終始するのではなく(業績も大切ですが)、場合によっては業績を捨ててでももっと重要な本質的取り組みに集中する。そのことの大切さを改めて認識します。

同経営者様からお聞きした話ほどの規模感ではありませんが、私も1年間、自分なりに壁や課題・トラブルはありました。そこに感謝してどう壁に向き合うか。同経営者様を見習って、自分自身考えたいと思います。

<まとめ>
課題・トラブルに感謝する。

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