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障害者雇用を考える

9月4日の日経新聞で、「〈小さくても勝てる〉障害者雇用、やりがい充実で離職を防止 キャリア支援へスキル表 個性見極め業務の幅拡大」というタイトルの記事が掲載されました。障害者雇用で先進的に取り組んでいる企業の事例を紹介した内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

障害者が仕事にやりがいを感じたり、スキルアップしたりできる職場を目指す中小企業が増えている。抱える障害によって少しずつ対象は異なるものの、社員の個性を考え信頼関係を築くことが休職や退職を防ぐ一歩になる。専門家は「法定雇用率を満たすための数合わせではなく、戦力と考えて処遇することが大切」と訴える。

電子部品製造のフカサワ(静岡県長泉町)は全従業員の1割に相当する5人の障害者を雇用する。その1人、耳が不自由な男性従業員は電子機器の組み立てに関する国の技能検定に合格し、2人の健常者の指導役を務める。フカサワの深沢好正会長は男性従業員が「『頼りにされていることがうれしい』と語っていた」と打ち明ける。

フカサワは障害者を含む社員全員のキャリアアップを支援するため、スキル表を作成する。スキル表をみると、はんだ付けや組み立てといった会社が求める技能の習得度合いが一目で分かる。社員が次に習得したい技能をイメージしやすくする狙いがある。

深沢氏は「仕事である以上、障害の有無に関わらず会社に貢献してもらわないといけない。彼らの能力を引き出すことは経営者の役割だ」と強調する。その上で、5人のうち知的障害をもつ2人が働きやすい職場づくりは男性従業員とは別のアプローチが必要だったと説明する。

2人は電子部品の寸法をそろえるなど簡単な加工を担う。ほかの生産担当の社員と同じように当初は本社の1階で作業していたが、数年前に2人の作業場を事務職が働く2階に変更した。

以前は2人が任された仕事を終え手持ち無沙汰になったり、集中力が切れて作業を中止したりしても、繁忙期は他の生産担当が自らの作業に追われて状況を把握できない課題があった。2階に移ることで事務職が常に2人に目を配るようにした。

手持ち無沙汰の時間は2人にとっても居心地が悪い。周囲からサボっていると思われるリスクもある。現在は2人が手をとめ続ければ、事務職が1階の生産担当のリーダーを呼んで次の作業などを指示してもらう。事務職が2人の仕事の習熟度をみて、必要に応じて正しい作業方法を教えることもある。

プラスチック袋を製造する船場化成(徳島市)は2019年から障害者の雇用を本格的に始めた。以前は国の法定雇用率を上回るために雇用していたと語る美馬直秀社長は「現在は戦力として働いてもらっている」と力を込める。知的障害者を中心に8人が働く。

小売業や製造業などからプラスチック袋の引き合いが強く、以前は生産が注文に追いつかなかった。美馬氏は「売上高は増えても仕事の負荷を理由に社員が辞めてしまい、残った社員にさらに負荷がかかっていた」と語る。人事改革の一環で、障害者を戦力として処遇するようになった。

障害者と向き合う上司が毎日のように変わる職場をてこ入れし、安心して働けるように努めた。それまで日替わりの上司はどんな仕事を任せればよいか分からず、ミスを恐れた。その結果、段ボールの組み立てなど単純作業ばかり集中した。

当時働いていた4人は同じ作業の連続に嫌気がさし、次第に休みがちになった。4人のうち2人の出勤率は5割ほどに低下した。

現在は1人の上司が全員の個性を見極め、検品や梱包を任せる。機械を使った袋の加工や商品サンプルの管理といった具合に業務内容を増やし、現場から「こんな仕事は頼めないか」と依頼もくるようになった。美馬氏は「変わったのは会社と障害を抱える社員との信頼関係。戦力が増えたことで人手不足の問題も緩和した」と話す。

橋梁の金属加工などを手掛ける釧路製作所(北海道釧路市)は身体障害や知的障害をもつ5人の社員が営業職や工場の作業員として働く。知的障害をもつ社員はフォークリフトの免許を取得し、頑張りが認められて嘱託社員から正社員になった。釧路製作所によると「健常者と同じ土俵で働くことに喜びを感じている」という。

同記事から、ポイントを3つ考えました。ひとつは、各従業員の個別のさまざまな状態を、強みや特徴だと捉えるということです。

簡単な加工作業に取り組むことに集中するのがよい人材もいれば、単純作業の連続ではなく仕事に変化を持たせたほうがよい人材もいるということが、事例からは改めて感じられます。

このような、各人材の特徴や強みを活かした仕事で貢献し合うということは、障害者雇用の対象者でなくても、すべての従業員に当てはまる、人材マネジメントの基本的な考え方とされています。人材や任せる仕事をひとくくりに捉えるのではなく、各人と各仕事を個別に見たうえで、仕事をデザインできると理想的だということです。

2つ目は、可視化(見える化)するということです。

現在私が定期的に訪問している企業様でも、少し前からスキル表の作成に取り組まれています。以前はスキル表がなく、各人材がどのような職能があり何が担当できるのかが、なんとなくわかるようでわからない状況でした。スキル表によって見える化することで、誰が何を担当するのがよいか、各人材の能力開発目標は何かを明確にして、生産性を高めようとしています。

タスクマネジメントやチームマネジメントを担う立場の人、それをサポートする人にとって、各人材に関する現状が見える化できていないと、役割が果たせません。タレントマネジメントシステムを導入して、PC上でそのようなデータを管理しているものの、ほとんど活かせていない、という企業も往々にしてあります。

この視点は、全従業員に当てはまることです。そのうえで、障害者雇用の対象となる人材に対しては、現状が把握できるための可視化がより求められるということだと思います。

3つ目は、成果を求めていくということです。

成果とは、組織としてお客さまのお役に立てる商品・サービスを生み出し届けるために必要となる各プロセスでの、具体的な貢献です。周囲は各人材に対する必要なサポートや指導などを行いながらも、本人による成果の創出がなされ、その対価として賃金・雇用の維持がもたらされます。

同記事中にある「法定雇用率を満たすための数合わせや雇用」というのは、言い換えれば成果を直接は求めていない雇用ということになります。雇用にこの事象は本来成り立たないはずです。同記事中の経営者によるお話の通り、企業として雇用する以上は、成果を求めていく視点であるべきだということです。周囲に成果を届けることで周囲に感謝され、それが本人のやりがいにもつながります。

このことは、障害者雇用に限らず、すべての雇用に共通しています。

「働き方改革」「ワークライフバランス」などが先行し、例えば「今日中に完成させるべき成果を生み出していないが、終業時刻が来たので帰る」などは、本来の雇用の考え方に合っていません。

もちろん、過度の労働時間投入がよいわけではありません。例えば、突発的に上記のような状況が発生したとしても次の日にその分まで埋め合わせることで事業活動に支障がないようにする、指導や改善策をうってそのような状況が再発しない状態をつくる、改善が見込めない状態が継続するなら各人材と合意形成しながらジョブデザインや賃金を再定義する、などの対応も必要になります。

障害者雇用については、障害者雇用促進法が4月に改正され、求められる法定雇用率は従業員40人以上の企業が2.5%になりました。2026年7月からは、対象が従業員37.5人以上に広がり、2.7%以上の雇用を求められる内容に改正される予定のようです。同記事のような事例なども参考にしながら、自社なりの雇用のあり方がさらに問われていくものと思います。

<まとめ>
各人に応じた成果を求めていく。

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