障害者雇用を考える
9月4日の日経新聞で、「〈小さくても勝てる〉障害者雇用、やりがい充実で離職を防止 キャリア支援へスキル表 個性見極め業務の幅拡大」というタイトルの記事が掲載されました。障害者雇用で先進的に取り組んでいる企業の事例を紹介した内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
同記事から、ポイントを3つ考えました。ひとつは、各従業員の個別のさまざまな状態を、強みや特徴だと捉えるということです。
簡単な加工作業に取り組むことに集中するのがよい人材もいれば、単純作業の連続ではなく仕事に変化を持たせたほうがよい人材もいるということが、事例からは改めて感じられます。
このような、各人材の特徴や強みを活かした仕事で貢献し合うということは、障害者雇用の対象者でなくても、すべての従業員に当てはまる、人材マネジメントの基本的な考え方とされています。人材や任せる仕事をひとくくりに捉えるのではなく、各人と各仕事を個別に見たうえで、仕事をデザインできると理想的だということです。
2つ目は、可視化(見える化)するということです。
現在私が定期的に訪問している企業様でも、少し前からスキル表の作成に取り組まれています。以前はスキル表がなく、各人材がどのような職能があり何が担当できるのかが、なんとなくわかるようでわからない状況でした。スキル表によって見える化することで、誰が何を担当するのがよいか、各人材の能力開発目標は何かを明確にして、生産性を高めようとしています。
タスクマネジメントやチームマネジメントを担う立場の人、それをサポートする人にとって、各人材に関する現状が見える化できていないと、役割が果たせません。タレントマネジメントシステムを導入して、PC上でそのようなデータを管理しているものの、ほとんど活かせていない、という企業も往々にしてあります。
この視点は、全従業員に当てはまることです。そのうえで、障害者雇用の対象となる人材に対しては、現状が把握できるための可視化がより求められるということだと思います。
3つ目は、成果を求めていくということです。
成果とは、組織としてお客さまのお役に立てる商品・サービスを生み出し届けるために必要となる各プロセスでの、具体的な貢献です。周囲は各人材に対する必要なサポートや指導などを行いながらも、本人による成果の創出がなされ、その対価として賃金・雇用の維持がもたらされます。
同記事中にある「法定雇用率を満たすための数合わせや雇用」というのは、言い換えれば成果を直接は求めていない雇用ということになります。雇用にこの事象は本来成り立たないはずです。同記事中の経営者によるお話の通り、企業として雇用する以上は、成果を求めていく視点であるべきだということです。周囲に成果を届けることで周囲に感謝され、それが本人のやりがいにもつながります。
このことは、障害者雇用に限らず、すべての雇用に共通しています。
「働き方改革」「ワークライフバランス」などが先行し、例えば「今日中に完成させるべき成果を生み出していないが、終業時刻が来たので帰る」などは、本来の雇用の考え方に合っていません。
もちろん、過度の労働時間投入がよいわけではありません。例えば、突発的に上記のような状況が発生したとしても次の日にその分まで埋め合わせることで事業活動に支障がないようにする、指導や改善策をうってそのような状況が再発しない状態をつくる、改善が見込めない状態が継続するなら各人材と合意形成しながらジョブデザインや賃金を再定義する、などの対応も必要になります。
障害者雇用については、障害者雇用促進法が4月に改正され、求められる法定雇用率は従業員40人以上の企業が2.5%になりました。2026年7月からは、対象が従業員37.5人以上に広がり、2.7%以上の雇用を求められる内容に改正される予定のようです。同記事のような事例なども参考にしながら、自社なりの雇用のあり方がさらに問われていくものと思います。
<まとめ>
各人に応じた成果を求めていく。
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