見えない資産を知る
先日、私が参加している「知心会」の6月の定例講2回目に出席しました。「知心会」では、ありのままの己の心を観ながら仲間と共に研鑽する機会の一環として定例講があります。
知心会では、心がけるべき「二十則」があります。二十則は、生きる道しるべのようなものとされています。
この日は、取り上げられた二十則の中で、個人的に「見えない資産を知る」が目を引きました。
・見えない資産を知る
財務諸表に表れない資産と負債の存在を知り、バランスを均衡に保つよう努める
当日の講話内容も振り返り、ポイントは2点あると考えます。ひとつは、貸借対照表に注目するということです。
財務諸表には、資産・負債・純資産を表す貸借対照表、収益・費用・利益を表す損益計算書、現金の出入りを表すキャッシュフロー計算書があります。この中で、企業経営者が一番興味をもって見ようとするのが損益計算書です。今の事業が儲かっているのかいないのか、利益がどれぐらい出ているかがわかるので、自然と興味をひきます。
個人の生活でも同様かもしれません。「今回たくさんボーナスが出た」「今月は使いすぎて家計が赤字だ」など、瞬間風速的な動きは、損益計算書の視点です。今勢いがある。羽振りがよい。そういった損益計算書の視点も大切ですが、もっと大切なのは私たちの貸借対照表というわけです。
貸借対照表には、その企業の歴史が表れると言われます。これまで、どのような場面でどのような意思決定をしてきたか、見る人が見れば手に取るようにわかるとも言われます。個人の人生も同様。自分の貸借対照表をつかんで、改善すべきことを認識するのが大切だというわけです。
もうひとつは、資産(あるいは負債)の中でも見えないものに気づくということです。
一般的な資産は見えます。お金、建物、車、設備、様々な備品などです。見えない資産とは、帳簿に乗っていない資産です。例えば、経営陣の能力や意欲、従業員の能力や意欲、その企業が持っている技術力やノウハウ、蓄積されてきた文化。これらは見えにくいものですが、その会社の歴史が蓄積してきたものであり、これからの企業経営、損益計算書という結果に確実に影響を与えます。
ある再生請負人は、見えるものも当然見ないといけないが、見えないものにこそ注目して、どう再生するかを判断すると言います。見えないものが良い状態なら資産であり、悪い状態なら負債でしょう。「人的資本経営」という概念で人的資本を見える化していこうと言われていますが、それは見えないものの中で最も重要な人にスポットライトを当てることだと言えます。
そして、見えない資産や負債には、その状態になっている理由があります。研究開発や人にこれまでどれだけ投資してきたか、人とのコミュニケーションを大切にしてきたか、社内ルールを守りメンテナンスを大切にしてきたかなど。この視点を、個人の人生にも当てはめて考えるとよいというわけです。
例えば、「バランスホイール」というフレームワークがあります。8つの項目で自分の目標となる理想の状態を設定し、人生や生活を見つめ直すのに有効とされます。
・仕事
・趣味
・社会貢献
・人間関係
・ファイナンス
・健康
・学習
・家族
これら8つを45度ずつのパイのようにして全部で360度の円を描き、各パイの中に目指すべき状態、その状態を実現するために取り組むことなどを書いていきます。中身に何を書くかは自分次第ですが、人生や生活の各項目を多角的に俯瞰して整理しやすくなり、特定領域だけに傾くのを避けやすくなります。
バランスホイールに沿って整理しようとすると、見えない資産づくりを意識するようになります。食事や運動を大切にすれば健康という見えない資産が高まりますし、挨拶を大切にすれば人間関係は高まります。
もちろん、バランスホイールはひとつのやり方です。自分なりのやり方で、自分の人生や生活の見えない資産(あるいは負債)の現状、目指す状態、それに向かって取り組むべきことを整理し実行するとよいというのを、この日に改めて認識しました。
私は以前からこのバランスホイールを作って、取り組むべきことなどを考えるようにしていたのですが、このところ忘れていて、1年以上更新していなかったことに気づきました。更新しないことで、見えない資産づくりがおろそかになっているように感じた次第です。
改めて、見えない資産づくりに向き合いたいと思います。
<まとめ>
人生や生活の貸借対照表の現状を知り、目標を立てる