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外国人人材の賃金を考える

8月23日の日経新聞で、「〈経済財政白書から〉外国人賃金、日本人の7割 不合理な慣習も背景に」というタイトルの記事が掲載されました。日本企業の外国人従業員の賃金が、日本人従業員の水準に比べて、説明できない理由で安くなっているという内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

賃金について日本人と外国人を比べたところ、外国人の方が28%低かった。40~50歳代が多い日本人に対して、外国人は20歳代の若年層が多く勤続年数も短い。

白書は年齢や学歴、勤め先の属性などを調整した上で賃金の差を分析したところ、日本人と外国人との間には依然として7%ほどの開きがあった。労働者個人や事業所などの要因では説明できない賃金差が存在していた。

賃金差を在留資格別に見ると、「永住者」や日本人の配偶者など「身分に基づく在留」ではわずかだが日本人を上回った。「高技能」では日本人に比べ、外国人の賃金が4%程度のマイナスだった。「特定技能」は日本人の賃金水準を約16%下回り、「技能実習」はその差が26%に広がった。

大きな賃金差がみられた技能実習は制度の問題を背景として挙げた。原則として転籍が認められていないため、自社に人材をとどめるために高い賃金を支払うというメカニズムが働いていないと指摘した。

転籍制限がない特定技能でも外国人の賃金は低かった。この背景について、白書は職場を変更した場合に前の勤務先で培った知識やスキルが評価されない「スキルの移転制約」が生じている可能性を指摘した。

少子高齢化で日本の労働力が細るなか、海外人材の獲得は欠かせない。白書は「合理的に説明できない賃金差が残っているとすれば、(原因となる)慣習の改善が求められる」と強調した。

外国人労働者問題に詳しい京都大学の安里和晃准教授は「外国人を安価な労働力として呼び込み、競争力の低い産業を延命させる考え方は少子社会になじまない。産業の付加価値が上がるような海外人材の雇用を進める戦略が必要だ」と指摘する。

同じ会社や職場であっても、職責の範囲や大きさ、スキルの違いなどから、従業員個人間で賃金差があるのは当然です。一方で、そうした違いが何もないながら賃金差があるとすれば、不合理な格差として問題だと言えます。冒頭の記事では、説明することができない、そうした賃金差が平均で7%存在しているというわけです。

6月13日の日経新聞記事「日本、賃金格差の是正急務 男女平等118位でG7内最下位 EUは企業に改善義務」では、例えば、23年のメルカリでは、男性・女性の人材間で、同じ職種、等級でも7%の「説明できない格差」があったと結論づけ、同年に対象社員に対してベースアップを実施し2.5%まで縮小させたことが紹介されていました。

偶然かもしれませんが、同じ7%程度です。人材の多様性の実現というテーマにおいては、これぐらいの説明できない賃金差があるかもしれないというイメージをもっておくとよいのかもしれません。

以前の投稿で、外国人人材をコミュニティーの一員として受け入れることをテーマにしました。その際は、次の2点をポイントとして考えました。まだまだ改善の余地があるのではないかということが想像できます。

・同じ貢献をしている人に対しては、同じ賃金(対価)を支払う。そして、賃上げを実現しその水準を年々あげていく。

・国籍の別によらず、コミュニティー(組織)の一員として受け入れ、ともにそのコミュニティーを支える存在として協業していく。

さらには、説明できる違いであったとしても、その違いは妥当だろうかという検証も必要だと思います。つまりは、もっと難易度が高い仕事や大きな職責が担当できる十分なポテンシャルがあるにもかかわらず、本人の能力や適性を過小評価してしまい、それができていない可能性です。

同記事で紹介している、「永住者」や日本人の配偶者など「身分に基づく在留」ステータスの持ち主は、日本人人材と賃金差がほとんどないとあります。このような方は、日本語にも流暢で、生活習慣などもネイティブの日本人に近しいところまで適応している場合も多いものです。

そうした在留資格の持ち主では、日本人人材との間で説明できない賃金差が出にくく、別の在留資格の持ち主では説明できない賃金差が出やすいというわけです。「身分に基づく在留」と別の在留資格の持ち主では、各人材が期待される担当職務の遂行能力や成果の期待値に違いがあるかもしれませんが、その期待値に見合った説明できる賃金をもらうべきだという図式は、共通して当てはまるはずです。

説明のできる、適正な賃金を支払う。
国人人材と共生する組織を実現するうえでは、欠かせない視点だと思います。

<まとめ>
各人材に対し、説明のできる、適正な賃金を支払う。

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