統合型リゾート(IR)の影響を考える
日本初のカジノを含む統合型リゾート(IR)の計画が、大阪で進むことになりました。経済と雇用を活性化する新たな施策として注目されています。
4月15日の日経新聞記事「大阪IR、シンガポール流 政府認定、観光消費誘う カジノに収益依存の懸念も」を一部抜粋してみます。
同記事に関連し、雇用と売上面での及ぼす影響・課題について考えてみます。
関西圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県)+福井県の労働力人口(15歳以上の人口のうち、働く意思と能力を持つ人の総数)は、各都道府県の調査結果や一般サイトの情報を参照すると、手元計算で約1071万人になりました。サイトによって人数も若干異なりますが、概ね1000万人程度というのが目安かもしれません。
同記事では、同エリアの雇用創出の想定が年9.3万人とあります。エリアでの労働力人口に対して約1%ということになります。つまりは、仮に同エリアで今仕事をしていない全員が、IRによって新たに雇用されるとなると、理論上はエリアの失業率が1%下がるということになります。
総務省統計局によると、2023年2月の日本の失業率は2.6%です。同エリアも同様に2.6%とすると、雇用に関しては相当なインパクトをもちえるかもしれないということが分かります。(もちろん、単純に上記理論通りになるわけでもありませんが、イメージとして)
失業率は、もともと0%にはならないものです。どんなに経済が好調で、人材力が高い国であっても、求人・求職者の間で、求める職種・スキル・業務内容・契約内容などでアンマッチのケースが発生するためです。現状の2.6%という数字でも、既に限界近いという指摘もあります。ここから1%下げるほどのマッチングを成立させるのは、かなり難しいことです。
仮に9.3万人分の雇用を生み出すとすると、他業界にも影響が想定されます。
例えば、2024年問題でトラックドライバーがさらに不足すると言われる物流業界です。トラックドライバーは全国で約80万人とも言われますが、慢性的な人材不足の状況が続いています。現役ドライバー職あるいは将来的な候補から同エリアで9.3万人の一部に流れるとすると、影響は小さくないかもしれません。
関西圏だけでのトラックドライバーの数がどれぐらいかについては、(私の検索の範囲内では)そのようなピンポイントの統計がヒットしませんでしたので、わかりませんでした。ですので、推定してみます。
・いま日本の労働力人口は約6900万人
・そのうち、約80万人がトラックドライバー。つまりは、全労働力人口の約1.2%。
・関西圏+福井県の労働力人口1071万人×1.2%=約12.85万人
ざっくり、同エリアのトラックドライバーとほぼ同規模の数の労働者が、IR関連で新たに雇用されるかもしれないというわけです。このように考えると、雇用に関してそれなりの規模感であると実感できますね。
蓋を開けてみないとIRがどれぐらいの規模の産業になるのかわかりませんが、今回のIRは、それに直接かかわる事業者以外の他業界にとっても、雇用という面で押さえておくべき動向のひとつだといえそうです。
すなわち、
・就職・転職を考えている人により自社に魅力を感じてもらうこと
・今いる従業員により定着したいと感じてもらうこと
・省力化できることは省力化すること
を会社として考えていく必要があるということです。
今回のIRの話は、地域で何か大きな出来事が起こった時に、特にそのエリアで事業活動を行う事業者は、自社を取り巻く雇用環境について考えてあらかじめ対策を打つべきだという例になるのではないでしょうか。おそらく、半導体関連の大規模な拠点が立ち上がる熊本などの地域は、同様の状況になっているのではないかと思われます。
続きは、次回以降考えてみます。
<まとめ>
IRの計画は、雇用に関して相応のインパクトを与える可能性がある。