社外取締役の人選
5月26日の日経新聞で、「「ワークマン女子」役員に 遊びのプロの声で革新」というタイトルの記事が掲載されました。「常識破り」のワークマンが、キャンプ用品などを紹介するユーチューバーを社外取締役候補にしたことで話題になっていることに関する内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
ユダヤ社会では全員が賛成した案は否決されると言われます。このことについて、『リーダーシップの本質』(掘紘一氏著)では、次のように説明されています。
今回の人事案についてはネット上で批判が高まった、と同記事にあります。ユダヤ人の知恵の観点からも、ユーチューバーを社外取締役候補にすることについて、反対含めていろいろな意見はあってよいのだと思います。その意味では、批判が起こるのは自然なことかもしれません。
そのうえで、2点感じました。ひとつは、ユーチューブやブログを見た上での批判だろうか、ということです。
私もこの機会に初めてサリー氏のユーチューブチャンネルをいくつか見てみましたが、キャンプやアパレルについてかなり詳しく紹介されています。キャンプだけでなく、例えばクルーズなどについても取り上げられていて、同記事の言うように「遊びのプロ」という印象です。少なくとも、普段アウトドアなどにまったく縁がないながら、値上がり益を期待して株主になった一般株主などよりも、よほど同社の経営に有益な示唆ができるのではないかと感じます。
上記ユダヤ人の知恵のごとく、何かの決定における短所を考えることは必要です。そのうえで、長所を知らずして短所だけを指摘するのも、妥当ではないと考えます。
もうひとつは、必ずしも1人に全方位的な専門性を求めなくてよいのではないか、ということです。
中小企業であれば、取締役も最低限の人数で回しているかもしれません。その場合の貴重な社外取締役は、「この領域しかわからない」という人材より、経営全般に通じている人材のほうが適任かもしれません。
一方で、ワークマンのような有力で相応の基盤も伴ってきている企業であれば、取締役の数とキャスティングもそれなりの体制をとっていくことができるでしょう。「マーケティング・消費者の視点の領域」で経営判断に資するという役割を期待し、ファイナンスやガバナンスなどの領域は期待しないという人選も、複数人の中にはあってよいかもしれません。
一定数以上の女性役員の確保を目指すという動きから、大学教授やコンサルタントなどで取り合いとなっている女性の人材も多いと聞きます。そうした方の多くは、経営の経験がありません。しかしながら、同記事のような批判はあまり聞かない気がします(実際は同様にあるのかもしれませんが)。もし「ユーチューバー=社外取締役には不向き」という先入観が影響しての批判だとするなら、的を外していると考えます。
多様な人材でのコラボが、イノベーションの源泉のひとつと言われます。今後の同社の展開が注目されるところです。
<まとめ>
1人が全方位的な専門性を期待される状況も、1人が特定領域の深い専門性を期待される状況も、どちらもあるのではないか。
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