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名前も知らない婚約者

母がナースステーションに挨拶をしながらドアを開け部屋に入り、私のベッド横に据えてある椅子に腰かけながら話しかけてきた。

「みーちゃんね、運ばれたのよ。つらかったねぇ…」と、すごく優しい声で声をかけられ、頭を優しく撫でられた。自分の記憶の中の母より少しやつれて見えた。

私は喉にチューブを挿管されているため声も出せず、ただ母のことを見ることしかできないまま、母は話かけてくる。「たかみっちゃんがね、連絡をくれて…」


?????

たかみっちゃん?????

誰????

「はて?」と、いう意思を最大限伝えられる表現として、私は目を見開き枕の上で首をかしげた。

すると、母は「たかみっちゃんだよ、彼!えっ、分からない!?」と、ベッドサイドに置かれた写真立てを私に見せてきた。そこにはきれいな海を背景にし、自撮りしたであろう眼鏡をかけた男性と自分のツーショット写真があった。

私は知らない人といつの間にかお付き合いし、婚約していたという。

まさに青天の霹靂だった。

聞くと、倒れる前に私は婚活サイトを使ってを婚活をしていて、その彼とお付き合いを始め同棲しているのだ、とのこと。
見るとスマホにも連絡の履歴があるし写真も残っている、家族への挨拶も済ませているので本当らしい。

とりあえず、そのあと少し雑談をしたあと、後で彼がくるからね、と言い母は帰って行った。

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