「実家フェス」開催!ケアリーバーを通して見えてきた「みんなの自立」。
戦後ヤミ市の面影を残す溝の口。南北に広がる川崎市のほぼ中央に位置するこの街でクラフトビール店「フジマルクラフト」を始めて丸8年になります。
フジマルクラフトは、開店した翌年の2016年から現在に至るまで、児童養護施設への寄付など子供を中心とした支援活動を2023年の今日にいたるまで継続して行なっています。
なぜ一介のビール屋の私が、子どもへの支援活動を行うようになったのか?
そのワケは、私の生い立ちと深いつながりがあるのです。
私はハードなDV家庭で育った
「もうこんな生活はやめよう」
小学4年の大晦日、母親にそう提案したことがあります。
私はハードなDV家庭で育ちました。
どのくらいハードかというと、母は長い結婚生活の中で肋骨や鎖骨、鼻骨など複数回骨折した経緯があります。
商売をしていた父には2つの家庭があり、戸籍上の妻は私の母ですが、幼い頃から家庭を知らずに育った父を多岐に渡り支えていたのは、婚姻外の女性でした。
父と母のいさかいは、子どもの私がどれほど懇願しても終わる事はなく、
「施設に入りたいなら離婚してあげてもいい。しかし今私が頑張っているのは、すべてあなたのためだから」
と母から告げられました。
生活力のなかった母は父と別れる事に怯え、子どもだった私は母と離れて暮らすことに怯え、私は母を救うために1日も早く「自立」しなければと強い思いを抱きました。
両親もいなくなった今、こんなふうに子どもの頃の記憶を余裕を持ってたどる事ができるようになると、なんか色々間違っている事に気づきます。
自立は誰のためにするものか?
本来「自立」というものは、誰かのためにするものではなく、自分自身のためにするものです。長い時間をかけて、保護者や社会が、子どもの身体や心を育んでいくことが人間の「自立」には不可欠です。
ところが、私がこれまで支援してきた虐待経験を持つ子ども達の何人かは、「将来お母さんに楽させてあげたい」、「もっと親孝行しなければ」など親のために早く自立しなければという決意を言葉にします。
一見、親思いの優しい子ととらえがちですが、かつての私がそうだったようにこれは「共依存」と呼ばれる精神的な病いです。
機能不全に陥った家庭を子どもが親の代わりに支えようとすることで、あらかじめ失われた親からの愛情を得ようとする行為です。
悲しい事に子どもは、幼ければ幼いほど親を必要とし、無条件に親を愛そうと努めます。たとえそれが心身に傷を負わせるような関係性であってもです。
しかし、子どもが親子の立場を逆転して身代わりになろうとすればするほど、内面に問題を抱えた親は子供を「人柱」にする事を当然の事と捉え、子どもはより多くの犠牲を払うことを強いられます。
親本人が現状を変えようと思わない限り、事態が好転する事は決してないのです。
この場合、必要となるのは子どもの犠牲的精神からくる「自立」ではなく、第三者の手助けや公的な支援です。
増え続ける児童虐待相談対応件数
上の資料は、2021年9月に速報値として発表された厚生労働省資料です。
厚生労働省によると、18歳未満の児童が親などの保護者から虐待を受けたとして、全国の児童相談所が相談を受け対応した件数は、20万7659件でした。
これを受けてマスコミ各社は、「児童虐待相談対応件数、過去最多20万件を超える」と一斉に報じました。
さらに厚生労働省の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第18次報告)」によると、2020年4月1日から2021年3月31日までの間に厚生労働省が把握している虐待死した児童の数は、77人。同年4月から3ヶ月の間に死亡にいたらなかった重症事例は14人にのぼりました。
また、法務省が発表した2022年犯罪白書によると、2021年児童虐待検挙数は過去最多の2199人となりました。
児童虐待相談対応件数が増加する背景
年々増加する児童虐待相談対応件数。
その背景となる社会的要因についてコラムニストの石橋昌也さんは、2014年10月24日朝日新聞「ことばマガジン」の中でこう語っています。
また、子どもの目の前で親が配偶者に暴力をふるう「面前DV」も「心理的虐待」として対応するよう指針変更になりました。
NPO法人「子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク」の山田不二子理事長は「『面前DV』の被害にあった子どもは心的外傷後ストレス障害(PTSD)になる可能性が高い。
父親が母親を殴る姿を思い出して深夜に急に目が覚めたり、無理に明るく振る舞ったりするほか、感情の起伏がなくなることもある」と石橋昌也さんのコラムの中でコメントを残しています。
私自身のPTSD(心的外傷後ストレス障害)
余談ですが、私自身も40代になるまで父親が母親を殴る夢や、私自身が父親や母親を殴ったり、殺害したりする夢を見て、寝汗をびっしょりかいて飛び起きた経験が何度もあります。
特に子育て中は、子どもの年齢に応じて自分の子どもの頃の記憶がフラッシュバックする事が多く、追体験することで両親に対する怒りの感情がコントロールできなくなり、それが悪夢にうなされる原因だと感じました。
ある時を機に私は「機能不全家庭に両親が陥ったのは、考え方の歪みや慣習が祖父母や曽祖父母など代々、連鎖しているからなのでは?」と考えるようになりました。
笑ってしまうかもしれませんが、子ども達が夏休みの自由研究に励む横で、私は自分のルーツを探る自由研究にある夏、没頭しました。
戸籍を遡れるだけ取り寄せ、江戸時代まで遡った頃、若くしての病死や事故死、自死、離別、子供を里子に出すなどの複雑な家庭環境が代々続いていた事に気づきました。
またその時期も明治維新や関東大震災、太平洋戦争など歴史の転換期に影響を受けているとわかりました。
つまり、大きなストレスを抱えるような出来事に遭遇すると、それを家族が一丸となり乗り越えるのではなく、誰かが犠牲になったり、一家がバラバラになってしまう傾向が戸籍から見て取れました。
連鎖する原因は、血や遺伝ではなく、困難を前に問題を解決しようとする強い意志と、身にふりかかった火の粉を払いのける気力を失っているのだと理解しました。
両親はともに裕福な家庭に育ちましたが、裕福になる以前はどちらの家も子どもへの犠牲をいとわず、夫婦間の絆も希薄でいさかいも多いようでした。子どもより自分、配偶者より自分を偏重する愛情の欠落が、機能不全家庭に陥る原因ではないかと分析しました。
自由研究を終えた私は、愛情の欠落が次世代に連鎖しないように心の中で親を捨てて、私自身が自分の父となり、母となることを決意します。
まず初めに私が着手したのは、自分のアルバム制作です。子どもの頃からの自分の数少ない写真をかき集めて(私にはアルバムがなかったので)、アルバム作りを始めました。
小さかった頃の自分の姿を自分の子ども達に接する時のように眺め、生まれてきたことに感謝し、成長や反抗を繰り返す自分自身のやんちゃな姿を親の目線で見るようにしました。
「私の親は私自身」。
そう思う事で、心の中の怒りが鎮まり、次第にトラウマから解放されていきました。両親への怒りは、親への過度の期待からくるものだと理解すると、「初めからない愛情はどんなに乞いてもないのだ」と執着を手放す事に成功しました。
しかし、気づくとトラウマから逃れるのに、実に人生の半分くらいを費やしてしまいました。
それほど虐待は、子どもの心に深い傷を残すものだと感じます。
児童養護施設ってどんな場所?
つい先日、調布市にある児童養護施設「調布学園・第二調布学園」に見学に行きました。
その理由は、今春、児童養護施設を退所する若者達(ケアリーバー)への新たな募金活動の方法を模索するためです。
フジマルクラフトは2019年、学園建て替えに伴う児童の学習机を購入するクラウドファンディングにご協力させていただいたご縁から、同学園のご支援を継続しています。
「調布学園・第二調布学園」は、2歳から高校生までの子ども達が生活している児童養護施設です。大正14年に設立し、昭和23年、児童福祉法による養護施設として発足しています。
学園の子どもたちは、東京都の児童相談所から措置されて入所してきます。親の行方不明や離婚、長期入院等環境上、養護を必要とする子どもたちです。近年は虐待によるケースも増加してきています。
「調布学園・第二調布学園」の定員は119名。年間を通してほぼ満床となっています。それに対し、職員の数は130名程度。管理栄養士や臨床心理士など専門的な知識を持ったスタッフが多数在籍し、子ども達が安心して暮らせる環境作りに励んでいます。
児童養護施設の存在を知ってはいるが、施設と接点を持つ人はあまりいないのではと感じています。
そこで暮らす児童はどんな生活をしているのでしょうか?
現在、学園で働く守本春菜さんに聞いてみました。
「保護されて施設で生活する児童達は、一般の児童と何ら変わる事なく安心して元気いっぱい過ごしています。リビングで宿題をしたり、授業参観にお母さん代わりに私が行ったり。
高校生の児童とは、小学生が寝静まった後に、進路の話を聞いたり、学校で今日一日あった事などを話します。私が子どもの頃、実家でやっていた事と同じですね」
春菜さんには、施設で働いていて忘れられない思い出があると言います。
それは春菜さんが、まだ新卒採用されたばかりの頃、反抗期を迎えた小学生男子児童が泣き叫び、手に負えなかった事がありました。
その彼が高校生になり、
「あの時はゴメン。でも自分ではどうすることもできなかったんだよ」
と素直に過去の自分を振り返って語ってくれたそうです。
子どもの成長ぶりが嬉しくて、職場の帰り道泣いてしまったと笑顔で話してくれました。
施設では、毎月行政から給付される児童手当を退所する日に向けて貯金する決まりとなっています。
また、児童へのお小遣い(正式名称生活訓練費)は、年齢ごとに定められています。
幼児1200円
小学校低学年1800円
小学校中学年1900円
小学校高学年2000円
中学1年生2900円
中学2年生3000円
中学3年生3100円
高校生6000円
自治体や施設によってお小遣いの規定は若干異なりますが、これが平均的な拠出額です。
衣食住は保障されていても、目に見えない費用が子育てにはかかるものだと私は思います。
例えば音楽を聴くにはAppleミュージックなどのサブスク費用が毎月かかりますし、友達と出かけたりする場合も電車賃や外食費がかかることもあります。
施設内で高校生以上は、アルバイトが許可されているため、交際費や趣味費はアルバイト代から支払う決まりになっています。しかし、アルバイトが長続きしない子も多いそうです。
子ども達のコミュニケーションツールがスマホとなった現代、入所する子供達のスマホ問題は、常に悩みの種だと語る春菜さん。
「高校生からスマホを持つ事が許され(2023年4月から中学生も可)、お小遣いから毎月支払うようにと施設では定めています。ところがアプリでの課金やサブスクなどで、お小遣いの枠を超えてしまうケースも多々あります。その場合、スマホを解約したり、将来のための貯金から捻出することもあるんです。」
スマホなどの契約をする際、施設長が契約者となります。保護者からの虐待で保護された子どもが、契約を機に離れて暮らす保護者に接触しないよう充分配慮する必要があるといいます。
また機種を選ぶ際、複雑な料金設定の中から児童の負担とならないような格安なものを選んだり、不適切なサイトにアクセスしないようフィルタリング機能を最大限に活用しているそうです。
ケアリーバーの過酷な実態
全国におよそ600カ所ある児童養護施設と里親の元には、現在約4万2000人の児童が暮らしています。
児童養護施設や里親の元を退所し、離れて生活する人を「ケアリーバー」と呼ぶ事を最近知りました。
「ケア」とは、保護、「リーバー」とは、離れた人を意味します。
毎年約4000人の若者がケアリーバーとなって施設や里親の元から一人暮らしを始めますが、2020年の厚生労働省のアンケート調査では、過去5年間のうち5人に1人の若者が生活苦に陥り、赤字生活を送っているという回答が得られました。さらに、就労者の44%が非正規雇用だったことも判明しました。
東京都が2021年に行った実態調査では、過去10年間の間に最初に就いた職をすでに辞めたケアリーバーは全体の57.1%。その半数以上が1年未満で離職していることが分かりました。
2021年に厚生労働省が発表した「新卒離職者の離職状況」によると、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が36.9%、新規大卒就職者が31.2%です。
この調査結果を比較すると、いかにケアリーバーの早期離職率が高いかが分かります。
また、進学したケアリーバーの退学率はおよそ20%。アルバイトで生活費を稼ぐことと学業の両立が難しいことや学校生活に馴染めなかったなどが退学理由としてあげられています。
ちなみに文部科学省の全国調査によると、2020年の大学中退率は、1.95%です。ケアリーバーの中退率はその10倍という結果に正直、愕然としました。
これが「18歳の壁」と呼ばれる所以です。
「18歳の壁」問題
施設では、現在のところ18歳年度末での一律退所(特例は22歳年度末まで)が義務づけられています。
その背景には、高齢児童を退所させないと、措置が必要な児童を入所させることができないという物理的な施設の飽和状態が要因となっています。
ちなみに、児童養護施設や里親などへの入所を振り分ける児童相談所の一時保護施設は、常に120%の満床状態だということです。
そんな中、児童養護施設や里親家庭で育った若者の自立支援に関し、原則18歳年度末(最長22歳年度末)までとなっている年齢上限を撤廃する改正児童福祉法が成立し、2024年4月から施行されることが決まりました。
社会養護児童を一律18歳年度末で退所させる現行の法律は多くの問題をはらんでいました。
それを受け厚労省は18歳年度末で退所を迫られたケアリーバーが周囲と馴染めず早期退職や退学に追い込まれていることや、5人に1人が生活苦に陥る事実を重く受け止め、今回の法改正がなされました。
「18歳の壁」撤廃の法改正は、ケアリーバーにとって一歩前進と捉える見方は正しいですが、入所待機児童の問題が根本的に解決されたわけではありません。
法律上は、退所の年齢を今後定めないとしながら、実際にはほとんどの児童が18歳年度末での退所を迫られることに変わりはありません。
単純に施設数を増やすことが問題解決への最短の道なのでないかと私は思っていましたが、厚労省は今回の法改正に伴い、里親やファミリーホーム(小規模住宅型児童養育事業)制度の推進をすすめる方向性を定めました。
児童養護施設の増設には、専門的な人員の確保や設備経費の問題があることや、よりミニマムで家庭に近い里親や養子縁組が先進国では保護児童の養育として一般的であること、社会的養護の9割を施設に頼っている日本は、国連から指導されたことを、厚生労働省は里親推進の理由としてあげています。
しかし、現行のままでは里親制度に不備も多く、一般的だと言われる海外でも子どもの傷を深めるような事例も後をたたないのが現状です。
今後、さらなる制度の改善、拡充が望まれます。
法務省が打ち出した自立支援
「18歳の壁」が撤廃される一方で、法務省は養護施設で暮らす高校生の児童を対象に、アパートを借りてひとり暮らしの実践をさせる自立支援策(社会的養護自立支援事業)を打ち出しました。
法務省は、児童養護施設近隣のアパートを施設長を保証人として借り上げ、高校に通いながら家事、アルバイトをこなす練習を18歳以下の子どもにさせるといいます。
法務省の支援策はとてもありがたいですが、もう少し柔軟な支援策はなかったものかと体育会系的な発想に少し驚きました。
短期間練習した程度で子どもが自立できるなら、身を粉にして子育てする世の親は苦労しないだろうというのが、私の率直な感想です。
そもそも「自立」は訓練や練習で習得できるものなのでしょうか?
施設に保護される児童の半数以上が虐待経験を持ち、圧倒的な寂しさを抱えながら生きてきた彼らが特別なケースを除き、高校卒業とともに、
「さあ自立して今日からここを出て行くのだよ」
と背中を押されることを考えると胸が痛みます。
また、退所させる側の施設職員の方々も多くの不安を抱えながら、断腸の思いで彼らを送り出している事を知りました。
なぜなら、人が「自立」をするタイミングには個人差があるからです。
「自立」とは大人として生活すること
自立には2つの側面があります。
ひとつは経済的な自立。
そしてもうひとつは精神的な自立。
「自立」とは、広義では「大人として生活する事」を指すのではないかと私は思います。
自分の生活費を自分で稼ぎ、ひとり暮らしをすれば単純に「自立」していると思いがちですが、現時点で生活費を稼いでいなくとも、家族やパートナーと同居していても大人として生活し、自立している人もいます。
それでは「大人として生活する」とは、どういうことなのでしょうか?
「大人として生活する」とは、周囲とコミュニケーションを図りながら孤立することなく自分の身の回りの世話をし、生活に関わるお金を稼ぎ、納税を済ませ、万が一の時なども蓄えや補償を使用して、とどこおりなく暮らしを継続させることをたったひとりでやってのけること、またはそのスキルを兼ね備え、必要な時いつでもそれを発動できることだと考えます。
さて、このnoteを読んだ大人の皆さん、あなたは今「自立」していると言えるでしょうか?
現時点で大人である私自身や皆さんにとっても
果たしてどこまでクリアできるか?
それほど「自立」とは、難易度の高い行為だと感じます。
なぜなら、この世に生を受け、死ぬまでの間に、人として生きる事の重要なテーマのひとつとして「自立」があるからです。
つまり「自立」とは、誰しもが一生をかけて取り組まなければ、手にする事はできないものなのかもしれません。
一遍和尚の唱えた「自立」とは
鎌倉時代の僧侶であり、時宗の開祖である一遍上人は、
「生ずるも独り、死するも独り、共に住するとも独り、さすれば、共にはつるなき故なり」
と、人がひとりで生きていくこと(自立)について語っています。
「生まれてきたのも1人、死んで行くのも1人、誰かと一緒に住んでいても1人、心の奥底はさらに1人」
と聞くと、たった1人で生涯孤独に耐えられることが自立なのかな?とかなり不安になりますが、実は違います。
一遍和尚が人々に伝えたかったのは、
「自分の面倒を自分で見ることができる人は、誰かと一緒に暮らしていたとしても人に過度の期待を求めず、人と意見が食い違っても争うことなく、常に心が安定した平穏な暮らしを送ることができますよ」
という慈愛と勇気に満ち溢れたメッセージです。
「自立」には、2つの側面があるとお話ししましたが、せっかくお金を手に入れても、一人暮らしをしても、心が不安定なままでは職場や学校で周囲と良好な人間関係を築くことができず、あっという間に「自立」するはずの生活は破綻してしまいます。
それでは心の安定を図り、「自立」した生活を送るためには、一体何が必要なのでしょうか?
実家というシェルターを持たない彼ら
人間はロボットではないので、ひとり暮らしをして、自立してそうに見える社会人も病気になったり怪我をしたら、実家に甘えたりすることもあります。
自分の家に不要だけれど捨てるのには惜しい物があった時、
「コレ、実家で預かってもらえないかな?」と考えたりもします。
大きな失恋をして心身ともに疲れ果て、シェルターがわりに親元に戻ることもあるし、考えたあげく仕事を辞め、実家の自分の部屋で高校生のようにボーっと窓から外を眺めたいと思うことも人間にはあるのです。
人は疲れた時、傷ついた羽を休めるため親元に帰ろうと決心するのではないでしょうか?
だから頼れる実家がある人は大いに親を頼っていいんです。
しかし、帰る家、頼れる実家がない場合、一体どうすればいいのでしょう?
保護者に甘えながらゆっくりと成長するはずの子供時代を奪われたケアリーバーが、高校卒業と同時に「自立」を迫られるのは、櫓つきの小舟で大海原にこぎ出すようだと感じます。
子どもから見た社会は、恐怖と不安だらけだと私は思います。お金や人間関係、家事、仕事、特に女子の場合、強姦などから身を守る強さと賢さも身につけなければなりません。
そんな色々を脅威と感じることなく、安心して世の中に一歩踏み出す唯一の武器は、家族のように自分を支えてくれる者がいるという絶対的な安心感なのではないでしょうか?
血のつながった家族でなくても、
「いつでもここに帰っておいで」
に対して、
「ただいま!」
と言える場所があるということが重要だと感じます。
ケアリーバーの生活を垣間見る
児童養護施設を退所するにあたり、ケアリーバーの生活は一変します。
進学に関して施設側は、できる限り返済のない奨学金制度を活用し進学できるよう配慮し、退所してからの住居や生活費も支援金を頼る事で、彼らが生活困窮に陥らないよう努めます。
しかし、彼らの少ない貯金で新生活をスタートするのは、困難を極めると前出の守本春菜さんは語ります。
「進学するにあたってまず、教科書代の数万円が彼らの大きな負担となります。国や行政からの一時支援金はありますが、家電や家具、寝具を購入したり、新生活をスタートするにあたって貯金では足りないくらいです。制服だった高校時代と異なり、通学する衣服にもお金がかかる。サークルなどに入って人間関係を広げたくても、それができない事情もあるんです。」
施設出身と周囲に話すことにためらいを感じる子も多く、学校に馴染めず孤立しがちになって中退にいたるケースも多いそうです。
体調を崩したり、孤独にさいなまれた時、トラウマを抱えた児童を救う方法は、「誰かとつながっている」という安心感に他なりません。
職員の方々は、進学や成人式など事あるごとにポケットマネーを出し合って、彼等の成長を祝ってきたと聞き驚きました。
「実家に帰れない彼等に、いつでも頼ってほしいからなんです」
実際にケアリーバーに会ったことはなくとも、もっとたくさんの人が「あなたの事を気にかけているよ」と声を届ける事が必要だと感じました。
まとめ
人が「自立」するために最も必要なものは、心の安定ではないでしょうか?
心の安定をはかるために必要なものは、周囲からの愛情です。
見返りを求めず、身勝手ではない、ただ単にその人の成長を眺め、喜んでくれる温かい気持ち。それが愛情だと感じます。
「自立」するタイミングには、個人差があります。誰しもが本当に自立できるまで、家族や身近な人や社会にサポートしてもらいながら、少しずつ大人になればいいと考えます。
「故郷に錦を飾る」必要はなく、ダメな自分や失敗した自分、挫折した自分をさらけ出す場所が大人になる過程には、とても必要です。
疲れた羽を休め、そこからまた飛び立つ準備をする場所。実家に頼れる人は実家を頼り、実家に頼れない人には、実家に代わる場所を用意してサポートすることがとても重要です。
児童養護施設やその他の社会養護制度、ケアリーバーの存在は、現状ではまだまだ多くの人に理解されていません。
たくさんの人が社会養護を受けている児童に理解を示すことが、偏見をなくし、ケアリーバーが自立しやすい世の中になるのではと思います。
私たち社会全体が、愛情を持ってすべての児童の成長を見守り続けることが不可欠だと感じます。
フジマルが今、やるべきこと
フジマルクラフトは2023年4月2日、3年6ヶ月ぶりのイベント「実家フェスvol.1」を開催します。
今、私達に出来ることは、料理やクラフトビールを販売した収益で、ケアリーバーの新生活をサポートし、応援することです。
「実家フェス」では、フジマルママ監修の最強の実家飯やクラフトビールを販売した収益の全額(売り上げから原材料費、会場費用など経費を引いた額)を「調布学園・第二調布学園」を今春退所するケアリーバーに募金します。
皆さんが食べて飲んでいただくことが、ケアリーバーへのダイレクトな募金活動となります。
今春、「調布学園・第二調布学園」からケアリーバーとして巣立つのは、9人の児童です。彼等の教科書代(就職する児童には、就職祝い金)を募金する事を目指します。
そしてとても大切な事ですが、募金活動を行うにあたり会計報告を後日、SNS上で公開いたします。皆さんの信頼を裏切らないために、明朗な会計報告をお約束いたします。
また、お金だけではなく、「施設職員以外にもサポートしてくれる大人は世の中に、多勢いるんだよ」とケアリーバーである彼らに行動で示し、ひとりひとりに新生活応援のお手紙を添えたいと考えています。
皆さん、どうかおチカラを貸してください!
当日は、LIVEなども行いますので、お子様連れの方、ベビーカーの方、大歓迎です!
皆さんの行動がケアリーバーの明日を開く一歩につながると信じています。
●イベント名
「実家フェスvol.1」
●イベント日時
2023年4月2日(日)
12時〜15時
●会場
大人のオアシス チルタス
●住所
神奈川県川崎市高津区久本2-8-18
●主催
フジマルクラフト
●問い合わせ
📞09084393507
また、遠方でイベント当日、来場できないという方のために、noteのサポート支援も受け付けています。
サポート方法は以下をご参照ください。
サポートしていただいた金額は、全額ケアリーバーに募金させていただき、こちらも会計報告を後日SNSにて行います。
また、銀行振り込みも受付しております。
●三井住友銀行 武蔵中原支店
●口座名
スタジオクリップ株式会社
●口座番号
普通 0895267
●お名前の他、備考欄にご住所、実家フェス募金と明記をお願いします。なお、振り込み手数料のご負担をお願いいたします。
お振り込みしていただいた金額は、全額ケアリーバーに募金させていただき、こちらも会計報告を後日SNSにて行います。
#自立 #児童養護施設#ケアリーバー#虐待#みんなの自立