人生で最も大切なこと
all need you is love
いい出逢いがないの、と彼女は言った。
「あたしって、なんて男運がないのかしら。前の男もあたしを束縛したし、今回の男は釣った魚にエサをやらないタイプだった。結局、男ってみんなこうなのよ。こういうことをされるから、どんどんだれも信じられなくなっていっちゃう。誰でもいいってわけじゃないから慎重に、年齢も仕事もルックスも大切に考えてるの。結婚にはぴったりでも、恋愛だと物足りないってことはあるじゃない? まだ結婚は考えてないの。そういうあたし自身は変われないじゃない? 恋愛をしたいのよ。次こそは理想に近いいいひとに出逢えるはずって思って。次の彼とは来週初めて会う予定なの。いい人だといいなあ。ねえ、私の幸せを祈っていてね。ほんとに祈っていてね」
そんな風にこぼしに来た彼女が、もちろん幸せになればいいなと思う。
けれど、幸せっていうのは空から降ってくるものではなくて、自分自身の物差しが決める「立っている場所の呼び方」だと思う。
その物差しは人によって長さが違う。
重さも、かたちも、単位さえも変わってくる。そんなチグハグな尺度がすり合わせられてくるのは、ともに過ごした時間に思い出が積み重ねられるからだ。ドラマや映画みたいなドラマチックな展開じゃなくて、もっとかっこ悪くてダサくて誰にも言えないような秘密のエピソードが、愛ある、幸せな人生をつくっていく。
ビートルズが「愛こそすべて」で歌ったのは『人生でもっとも大切なことは愛すること』ということだ。恋人への愛。友人への愛。家族への愛。仕事への愛。趣味への愛。ふるさとへの愛。愛をもってみれば、すべては美しい。娘のはなくそだって、美しい。
【地域情報誌フジマニvol.114(2016年3月)掲載の編集長コラムからの転載です】
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