ある小説家との邂逅
on the way
(地域情報誌フジマニ 2018年8月 vol.141掲載の編集長コラムからの転載です)
進学は、しないことに決めました。高校三年生の僕が思いつめた顔でそう言った時に担任の先生は「そうか」と言って、そして続けた。「先生もな、実はずっと小説を書いてるんだ。学校の先生をやりながら、自分の好きなことに挑戦をしてる。君ががんばっているのはよくわかる。その君が考えた末に進学をしないのなら、それがきっと一番いいんだろう。大学に行くばかりが道じゃない。けれど、努力を続けないと人は前に行けない。その努力を続けてください。辛い時もやめたいと思った時も、努力し続けてください。それでいつか大人になったら、お互いの努力の結果を見せ合おう。先生も頑張る。だから君も頑張れ。」高校卒業後の進路。もともと進もうとしていた道を見失って、進学も就職もしないと決めた自分に対して、唯一応援の言葉をかけてくれた先生が担任だった。あれから17 年。まずは好きな料理を学ぼうとコックになって、働きながら自分探しをしようとアレを習ったりコレを買ったり。けれど何一つ見つからなかったことに焦って、興味のあった「広告」を学ぶ学び舎に入って半年を過ごし、起業。それから後はひたすらに現場、現場、現場…。企画も編集も写真もデザインも映像制作もイベント設営も進行管理も営業も危機管理もすべては自分自身の試行錯誤で培った。その結果が今。遠回りはしたと思う。避けられたはずの地雷も踏んだし、しなくても良い経験もした。まだ過程でしかない今だけど、この道筋を辿れたのは「努力を続けた」からだと思う。先日、子供連れで訪れた蛍の見える里で17 年振りに担任の先生と再会した。「作家をしてるんだ」とペンネームを教えてくれた先生。夢は叶った。次はいかに良いものを作るか。努力の見せ合いは続く。人生が続く限り。
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