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24時間365日体制の医療機関で働く

90年代後半の春、私は新卒で医療機関の事務の正社員になった。選んだのは地域にある24時間365日診療しているクリニックだった。

志望動機は、私自身も生後1ヶ月の健診からお世話になっている尊敬している院長のもとで働きたかったからだった。

当時、個人で年中無休体制の診療所は珍しかった。現在ではさらに少ないのではないかと思う。院長には

「病気に休みも夜もない、来た患者は断らない。」


という志しがあった。
実際、私も幼い頃からよく熱を出したり胃腸を壊し朝早くや夜中でも土日も診てもらいかかりつけだった。

社会人一日目。


学校からの指示で初めての勤務の日はスーツで行くようにとのことだったので従ったが、他の職員からめずらしがられ冷やかされた。

すぐに指定のブルーのナース服に着替えさせられた。ここは事務員でもナース服のようだ。

最初に師長(当時婦長)から簡単に診療所の案内をしてもらい、すぐに受付に立たされた。

研修もなく、現場に立ちながら覚えていくよう指示された。他の知らない患者からしたら立派な医療事務員に見える。(と思う)

初日は8時半から17時半の勤務だったが、とても長い時間に思えた。受付に立つと次々と患者さんから声を掛けられる。病気や怪我だけでなく予防接種もある。専門学校を出ていたが初めてのことばかりだった。先輩方も忙しいので一度教えたら覚えるように、繰り返せば慣れるから、というスタンスだった。

忙しすぎてメモも落ち着いて取ることもできない。保険証の種類もたくさんあり覚えられず、あちこちから呼ばれる。とにかく現場の雰囲気に慣れることに精一杯だった。

私は初めて「空気を読む」ことの大切さを知った。今までアルバイトはいくつか経験してきたが初めての医療現場は質が違った。

ふと思い出したのだが、当時社会保険の本人保険は二割負担だった。(現在は三割負担)

毎日毎日、早くベテランになりたい。仕事を淡々とこなせる先輩が羨ましい、とずっと思っていた。

一年後

一年経つとようやく、受付・医療費計算・会計・院内薬局の調剤補助などひと通りを一人でこなすことが出来るようになった。

そして、24時間体制なので事務員一人で当直を任されるようになった。医師、看護師、事務一人ずつの体制で緊急の患者や救急車の受け入れもした。ひよっこだった私は他の先輩のように仮眠することなんて、とてもできなかった。常に緊張感の中にいた。

勤務時間は13時に出勤して翌日9時までのシフトだった。若かったからこなせたのかもしれない。

24時間365日診療の現場では様々なドラマがあった。ドラマではない、現実のことだ。

受け入れる側は身体も心も強く持たなければならなかった。

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