挙上制限に対する徒手療法とセルフエクササイズ
こんにちは、肩関節機能研究会の郷間です。
今回は挙上動作制限に対する徒手セルフエクササイズについてご紹介していきます。
私自身、臨床で改善に悩む動作でもありましたので、こちらの記事にまとめてより理解を深めていきたいと考えております。
では早速本題に入っていきたいと思います。
挙上運動では挙上に伴い骨頭は下方に滑りますので肩甲下筋下部線維、大円筋、前下関節上腕靭帯、上腕三頭筋長頭腱、後下関節上腕靭帯、小円筋などが制限因子として関与します。
合計66のADL動作を36の研究をまとめたシステマティックレビューでは、屈曲(反対の髪を洗う、頭頂部に触れる、ネックレスをつける、後頭部に触れる、髪をとかす)、外転(新聞のページをめくる、電話を使う、頭頂部抜触れつ、髪をとかす)などの動作を検証しています。
Oosterwijkらは、日常生活動作において約130°の屈曲・外転可動域が必要であると報告しています。
本研究では他動屈曲可動域は術後1日、自動屈曲可動域は術後1週で獲得していることがわかっています。
みなさんは130度と聞いて、可動域拡大のハードルが高いと感じましたか?それとも意外と簡単と思いましたか?
このようにただ闇雲に可動域を広げるのではなく、しっかりとどの角度まで拡大することでその動作が獲得できうるかを明確に知っておくことで臨床でのある意味無駄を省くことにも繋がるかもしれません。
ではここからは挙上制限に関与する軟部組織の位置関係についてごしょうかいします。
肩関節下方に位置する小円筋、大円筋、上腕三頭筋長頭腱は上腕骨内側部とともに四辺形間隙、QLSというものを構成します。
QLSには小円筋や三角筋の運動支配や肩外側部の痛みに関与する腋窩神経や後上腕回旋動脈が走行しています。
このQLS、下垂位ではこのような位置関係ですが挙上にはどのような位置関係になるのでしょうか?
挙上位ではこのように腹側から大円筋、上腕三頭筋長頭腱、小円筋が位置しています。
また、一番右の動画はイメージしやすいと思うのでぜひ見ていただきたいのですが、
このように上腕三頭筋長頭腱が付着する上腕骨頭が動くのに伴い、小円筋や大円筋がLHTを挟み込むような状態で伸張します。
最後にQLS構成筋の大円筋について解説していきたいと思います。
大円筋を左の赤枠部分から長軸に観察すると、右のエコー動態を観察することができます。
大円筋は肩関節の挙上150°以降から骨頭を頂点に折れ曲がるように伸張するしているのがわかるかと思います。
このことから大円筋は挙上動作における骨頭の腹側突出を許容するだけの柔軟性が求められることがわかってきます。
徒手療法では、軽度挙上位で大円筋を引き上げるように操作することで、挙上時の大円筋動態に類似した動きを作ることが可能です。
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