「パーパス」という言葉を最近本当によく耳にする。パーパス、つまり存在意義は、もちろん重要である。
では、パーパスはどのように使うべきなのか。どのような使い方があるのだろうか。それを具体的に記す書物はまだあまり世に出ていないように思われる。
本書は、どのように共創関係を「パーパス」を用いて作っていくのかを記した一冊である。
図解総研の近藤哲朗さんが共著者に入っているため、図解が豊富で、わかりやすい。本書では、「パーパスモデル」という一つの「パーパス」の使い方を紹介している。事例を使って第2章に説明があるが、私は結構わかりやすいケースが多く取り上げられていて良かったと感じている。また、著者の吉備さんは1993年生まれということで現在20代のはずだが、この年齢でここまでパーパスの活用方法について概念化できているのは素晴らしいと思った。(アウトプットに年齢はあまり関係ないのかも知れないが私が同年代の頃と比べてそう感じた) 今後にも期待できる逸材ではないか。
共創では、多くのステークホルダーとともに、プロジェクトを推進していくことになるが、そうしたときに、「共通目的」をどのように設定するべきか、そしてそれぞれの主体者の目的を見える化しておくことも重要である。
官民共創の文脈で考えると、行政と民間では目的が異なることが多いが、なんとなく繋がって実証プロジェクトを進めることも多い。しかし実証プロジェクトが完了したらそれで関係が終わってしまうこともままある。非常にもったいないのである。実証プロジェクトをやって終わりにしないためにも、あらかじめ本書にあるように、共創のメカニズムを捉え、うまくデザインしていくことが重要となるのではないだろうか。
本書は、官民共創にかかわらず、これから、誰かと一緒に、何かを解決したいと動き始める人、すでに動いている人にとって、基礎となる一冊であると思う。
◇気になった箇所(付箋を貼ったところ)
【主要目次】
1章 パーパスモデルとは何か
2章 パーパスモデルで見る共創プロジェクト
2-1 共創の8つのタイプ
1.事業をつくる
2.基準をつくる
3.共通認識をつくる
4.関係をつくる
5.場をつくる
6.共同体をつくる
7.人を育てる
8.公共を開く
2-2 共創プロジェクトの事例紹介
スクリレ/LEO Innovation Lab/BRING/Regenerative Organic Certified
B Corp/宗像国際環境会議/瀬戸内国際芸術祭/Fashion for Good
BLOXHUB/BONUS TRACK/De Ceuvel/PoliPoli/High Line
Forest Green Rovers/Waag/Dutch Skies/Dove Self-Esteem Project
東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト/ミーツ・ザ・福祉
3章 より良い共創を実現するためのポイント
3-1 共通目的をどう考えるか?
3-2 誰をどう巻き込むか?
3-3 活動をどう広げていくか?
4章 共創しやすい社会をつくるために
4-1 個人・プロジェクト・社会環境の3つを揃える
4-2 共創が起きやすい社会環境とは
4-3 共創を実現する個人の姿勢と連帯
4-4 パーパスフッドの時代
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◇プロフィール
藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリックX 代表取締役/株式会社ソーシャル・エックス 共同創業者
1978年10月生まれ。京都大学公共政策大学院修了(MPP)
2003年に人材ビジネス会社を創業。2011年にルールメイキングの必要性を感じて政治家へ転身(2019年まで)。2020年に第二創業。官民協働による価値創造に取り組む。現在、経済産業省事業のプロジェクト統括も兼務。
議会マニフェスト大賞グランプリ、グッドデザイン賞受賞。著書いくつか。
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