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ジェームス・W・ヤング『アイデアのつくり方』(1988年・原著1940年)を読んで。

本文は50ページほど。解説などを入れても100ページ。
この薄さの中にとんでもない知見が含まれている。

もはや、この分野での古典にあたる一冊だと思うが、私はこれまで巡り合うことはなかった。ふと、アマゾンで書籍を探索している中で本書を見つけ購入。

書いていることは極々シンプルである。しかし余計なことはほとんど書かれていない。もう80年も前に書かれているのに、いまだ多くの人が本書をバイブルにしていることも肯ける。本はボリュームが厚い=内容が濃いというのは完全に間違っていることに気づくことができる。

アイデアを作るとき、何もしないこともプロセスとして重要であること。そのた、いくつかの重要な気づきを私は得ることができた。また、良書に多いのだが、解説文も読む価値がある。

以下、付箋を貼った箇所である。

気になったところ

私はこう結論した。つまり、アイデアの作成はフォード車の製造と同じように一定の明確な過程であるということ、アイデアの製造過程も一つの流れ作業であること、その作成に当って私たちの心理は、習得したり制御したりできる操作技術によってはたらくものであること、そして、なんであれ道具を効果的に使う場合と同じように、この技術を修練することがこれを有効に使いこなす秘訣である、ということである。

(p18)

即ち、アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもないということである。

(p28)

既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きいということである。

(p28)

まずちょっとした、仮の、あるいは部分的なアイデアが諸君を訪れてくる。それらを紙に記入しておくことである。どんなにとっぴに、あるいは不完全な者に思えても一切気にと目ないで書きとめておきたまえ。これはこれから生まれてくる本当のアイデアの前兆であり、それらを言葉に書きあらわしておくことによってアイデア作成過程が前進する。

(p45)

アイデア作成のこの第三段階に達したら、問題を完全に放棄して何でもいいから自分の想像力や感情を刺激するものに諸君の心を移すこと。音楽を聴いたり、劇場や映画に出かけたり、詩や探偵小説を読んだりすることである。

(p48)

第一 資料集めー諸君の当面の課題のための資料と一般的知識の貯蔵をたえず豊富にすることから生まれる資料と。
第二 諸君の心の中でこれらの資料に手を加えること
第三 孵化段階。そこでは諸君は意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる。
第四 アイデアの実際上の誕生。〈ユーレカ!分かった!みつけた!〉という段階。そして
第五 現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる段階

(p54-55)

ーー 解説文 ーー

先に述べた「科学と方法」の中でポアンカレは豊かなアイデアにたどり着くのに必要なのは美的直観であると述べている。その美的直観をさらに分析して、ポアンカレは「これまでは無関係と思われていたものの間に関係があることを発見することが美的直観である」と言っている。これはパレートやヤングの「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである」という考えをさらに具体化したものと言ってよい。

(p78)

デカルトによれば、人々はそれぞれの人生の大目標をもっており、その実現に全力をそそいでいる。しかしその一方で、人々は日常的な生活を生きなければならない。この場合に、その日常的なことがらの一つ一つについて熟考するのは面倒なことであり、頭脳と時間の浪費でもある。こういう場合には、最も常識的で最も穏健な意見に従うのが良い。どうでもよいことについては中庸の道を選ぶことによって、われわれは自分自身の人生の大目標に全力を集中しえる。

(p81)

最後に一つ、重要な注意事項がある。それは方法論や道具に凝ることなく、直ちに仕事を始めよということである。

(p87)

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◇プロフィール

藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリックX 代表取締役/株式会社ソーシャル・エックス 共同創業者

1978年10月生まれ。京都大学公共政策大学院修了(MPP)
2003年に人材ビジネス会社を創業。2011年にルールメイキングの必要性を感じて政治家へ転身(2019年まで)。2020年に第二創業。官民協働による価値創造に取り組む。現在、経済産業省事業のプロジェクト統括も兼務。
議会マニフェスト大賞グランプリ、グッドデザイン賞受賞。著書いくつか。
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