<第4稿 2025年2月24日 障害年金制度理解の入口>


社会保険労務士の藤井貞男です。滋賀県で障害年金請求や中小企業向けの社員募集採用定着を得意としています。お得な情報満載のメールマガジンを配信しています。是非、下記のURLよりお申し込みください。

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目次
1.初めに
2.障害年金とは
3.障害年金受給の必須三要件
4.実務上注意していること(1)-初診日要件
5.実務上注意していること(2)-保険料納付要件
6.実務上注意していること(3)-障害認定日要件
7.最後に

1.初めに
 障害年金をテーマに何度かに分けてお話しします。障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。今回は障害年金制度理解の入口をテーマに解説します。

2.障害年金とは
 障害年金には、「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やけがで初めて医師または歯科医師(以下「医師等」といいます)の診療を受けたときに

・国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」

・厚生年金保険に加入していた場合は「障害厚生年金」

が請求できます。


3.障害年金受給の必須三要件
 障害年金を受給するためには、三つの必須要件があります。

 ①初診日要件

 ②保険料納付要件

 ③障害認定日要件

すべて大切な要件なので順番に学んでいきましょう。


①初診日要件について
 障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日をいいます。

②保険料納付要件について
 平たく言えば、きちんと保険料を支払っているか保険料免除を受けていることです。保険料を支払っていない期間(以下、未納期間)が多いと障害年金を受給できないことがあります。保険料をきちんと支払う、または保険料免除申請あるいは学生納付特例申請を忘れないようにしてください。

③障害認定日について
 障害の状態を定める日のことで、原則的にはその障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月を過ぎた日が該当します。また、1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)などはその日をいいます。

4.実務上注意していること(1)-初診日要件
 私が障害年金請求のお手伝いをする際に気を付けていることがあります。特に初診日時点でどの年金制度(国民年金か厚生年金保険)に加入していたかについて年金事務所で確認します。

 国民年金加入期間または20歳前の期間あるいは60歳以上65歳未満の方で年金制度に加入していない期間であれば障害基礎年金を受給できる可能性があります。会社員等で厚生年金保険に加入していれば、障害厚生年金を受給できる可能性があります。

 つまり、初診日時点での加入制度により受給できる年金が障害基礎年金か障害厚生年金(障害の程度に応じて障害基礎年金が合わせて出ることがある)かに分かれます。

 よく聞く話ですが、会社勤務時代に発症していたにもかかわらず業務が大変で通院できなかった、または体調不調があまりにもひどく通院する気力が出ずに退職後になって通院したということがあります。その場合は、国民年金加入期間が初診日なので障害基礎年金の対象となります。

 会社在職時に初診日があれば障害厚生年金の対象となります。障害厚生年金の方が比較的高い年金額となる場合が多いことや障害基礎年金にはない障害厚生年金3級を受給できることがあるので、会社在職中に通院開始することを勧めます。

5.実務上注意していること(2)-保険料納付要件
 次に、きちんと保険料を支払っていたかについて年金事務所で確認します。国民年金加入者として自分で保険料を支払う第一号被保険者(以下、第一号)、厚生年金保険の加入者である第二号被保険者(以下、第二号)、第二号の配偶者である第三号被保険者(以下、第三号)の三種類があります。

 初診日において第二号や第三号の場合は保険料納付要件については比較的安心であることが多いです。第二号と第三号は自身で保険料納付の必要がなく保険料未納という事態がないからです。

 一方、第一号として国民年金に加入していた場合の保険料納付要件には注意を要します。それは、第一号自身で国民年金保険料を納付する、または保険料免除手続きすることを要するからです。保険料未納期間が長ければ障害年金の請求をできなくなることがあります。

 経済的に厳しい状態下であり保険料納付が難しい時は、未納でなければよいので保険料免除手続きを、学生の方は学生納付特例の手続きをしてください。手続きをしているか否かで障害年金を受給できるかどうかが変わります。

ここで、保険料納付要件について詳しく学びましょう。原則として初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あることが必要です。下の図-1をご覧ください。

図-1 原則的な保険料納付の一例

この方の被保険者期間は、20歳になった令和4年5月から初診日がある月(令和5年9月)の2カ月前(令和5年7月)までの15カ月です。このうち、保険料納付済期間(①と③)および保険料免除期間(②)は合計(①+②+③)で12カ月です。この例では、保険料納付済期間および保険料免除期間の合計が被保険者期間の全部に対して3分の2(10カ月)以上あるので納付要件を満たしています。

保険料の納付要件の特例として、一定の条件下で初診日がある月の2カ月前までの直近1年間に保険料の未納期間がなければ保険料納付要件を満たしている扱いとなります。

図-2 保険料納付要件の特例の一例

 上の図-2の場合では、初診日がある月(令和5年7月)の2カ月前までの直近1年間(令和4年8月から令和5年7月まで)に保険料の未納期間がないので保険料納付要件は満たしています。

 なぜ初診日の2か月前に遡って保険料納付について確認するのかという疑問をお持ちではないでしょうか。それは、その月の年金保険料の納付期限はその翌月末という決まりがあることによります。

 上の図で考えましょう。9月に初診日があれば、

・7月分の納付期限は8月末であり9月時点では納付済みです。

・8月分の納付期限は9月末であり初診日時点では未納付の可能性があります。

・9月分の納付期限は10月末であり初診日時点では未納付です。

 初診日の2か月前に遡って保険料納付を確認するのはそのような理由です。


6.実務上注意していること(3)-障害認定日要件
 前述しましたが、障害認定日とは障害の状態を定める日のことです。原則的にはその障害の原因となった病気やけがの初診日から1年6カ月を過ぎた日が該当します。
 または、1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)などはその日をいいます。

 障害認定日から3カ月以内に通院していると、本来的な障害認定日請求が可能になります。通院していなければ障害認定日請求ができず、事後重症という請求方法になります。これらについては機をあらためて解説します。

7.最後に

 私が大学生の頃は国民年金が任意加入でした。入っても入らなくてもいいよ、という時代でした。後に制度改正され強制加入となったのはなぜなのか、というお話をして本稿を終わりたいと思います。

 20歳過ぎの大学生がバイク通学中の事故で下半身不随になったことがありました。国民年金に任意加入していれば障害基礎年金の受給が可能でしたが、任意加入していなかったのでもらえなかったという悲劇がありました。

 そのようなことが度々あったので平成3年4月から学生も強制加入となったのです。現在では保険料の学生納付特例制度があるので、経済的に保険料支払いが難しいとしても、学生が制度利用することにより保護されるので手続きしてくださいね。

 今回は障害年金制度理解の入口をテーマに学びました。いかがでしたか。慣れない方には用語そのものや考え方が難しく感じると思います。でも、大切なことなのでわからなくてもよいから気楽に、そして気長にお付き合いくださいね。いざというときに思い出せればかまいませんので。わからないことや気になることがあれば、私や最寄りの年金事務所にご相談ください。

 障害年金は万が一の時に我が身と家族を経済的に守る保険です。何か体調がおかしいな、と感じたらお医者さんにかかりましょう。症状に応じて定期的に通院しましょう。そして、保険料をきちんと払いましょう。

それでは、次回をお楽しみに。

以上


街の社長さんへ。

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