<第3稿 2025年2月17日 老齢年金の基礎知識>
藤井社会保険労務士の藤井貞男です。滋賀県で障害年金請求や中小企業向けの社員募集採用定着を得意としています。お得な情報満載のメールマガジンを配信しています。下記のURLよりお申し込みください。
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目次
1.初めに
2.国民年金制度とは
3.老齢基礎年金という保険の基礎知識
4.国民年金保険料と年金給付
5.付加保険料 ちょっと知っておきたいこと
6.最後に
1.初めに
老齢年金をテーマに何度かに分けてお話しします。老齢年金に関しては国民年金と厚生年金保険は強制加入である社会保険制度上に成り立つ終身給付の掛け捨て保険です。
老齢年金給付の根拠となる国民年金法と厚生年金保険法を繙いても「保険料納付を完了したら満期返戻金がありますよ」、というような記載はありません。こう書くと、「国は我々を騙した」などという人がいるでしょう。まず、批判や文句を言わずに本稿をお読みくださいね。
2.国民年金制度とは
国民年金制度の目的について記された条文である国民年金法第一条が以下です。
第一条 国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。
【解説】
健康で暮らしていける人もいれば、人生途上で心身に何らかの障害を抱えたり収入を支える家族を失ったりする人もいる。その状況を全国民が我が事として互いに生活の維持向上しようというものです。
次に国民年金の給付について記された条文である第二条です。
第二条 国民年金は、前条の目的を達成するため、国民の老齢、障害又は死亡に関して必要な給付を行うものとする。
【解説】
この条文は、国民年金がどのような場合になれば年金が支給されるのかを明らかにしたものです。これを保険事故と言い、三種類の保険事故があります。
①老齢/長寿に伴い、働くことが難しくなり収入が減るなどのリスク軽減
②障害/病気や怪我により減収するというリスク軽減
③死亡/家計を支える人が亡くなった場合における遺族の金銭的なリスク軽減
というものです。
3.老齢基礎年金という保険の基礎知識
老齢年金には、国民年金法に基づいた老齢基礎年金と厚生年金保険法に基づいた老齢厚生年金があり、生きている限り年金がもらえる終身年金です。本稿では三種類の保険事故のうち、長寿リスクを軽減する老齢基礎年金について言及します。
昔の話ですが、「20歳になれば国民年金」というキャッチコピーがありました。即ち、20歳になれば国民年金に加入しなければならないのですよ、という意味です。ここで老齢基礎年金受給がどうすれば可能になるのかについて見ていきましょう。
①保険料を支払った期間又は免除等(※)の期間を合わせて10年以上あること
(※)一部免除を含む保険料納付免除期間、または任意加入期間で保険料納付しなかった期間、あるいは海外在住で国民年金に強制加入できなかった期間など。
②受給開始年齢に達したこと。
原則65歳受給開始ですが60歳から繰上げ受給が可能です。66歳以降の繰り下げ受給も可能です。
老齢基礎年金額はどのように計算されるのかについてお話しします。老齢基礎年金額は20歳以上60歳未満の480か月間においてどれだけの月数で保険料を支払ったかにより決まります。これをフルペンション減額方式と言います。以下に計算式を示します。
老齢基礎年金額=816,000円(令和6年度価額)×(保険料納付済み期間)÷480か月
例えば、何らかの理由で300か月しか納付できなかった人の場合は、
816,000円×300か月÷480か月=510,000円
が老齢基礎年金額となります。電卓で簡単に計算できますね。
4.国民年金保険料と年金給付
保険料は、月に16,980円(令和6年度価額)です。480か月支払ったとすると保険料支払い総額は、815万400円です。65歳で年金をもらうとすると、老齢基礎年金額は816,000円なので、75歳まで長生きすれば受給額が納付した保険料とほぼ同額になります。その後は終身で年金をもらえます。納付した保険料に対し受け取る年金額は、85歳で2倍にもなります。生きているだけで丸儲け。健康で長生きし、充実した人生を送りたいですね。
5.付加保険料 ちょっと知っておきたいこと
国民年金保険料16,980円を支払うのは国民年金第一号被保険者という方です。一般には、自営業者や学生など厚生年金保険に加入していない方のことです。ここではサラリーマン等の配偶者である第三号被保険者を除いて考えます。
第一号被保険者には付加年金という独自の仕組みがあります。これは、月あたり400円の付加保険料を余分に支払うと65歳より老齢基礎年金が月に200円加算されるというものです。480か月付加保険料を支払ったとすると付加保険料総額は192,000円です。65歳からの付加年金相当額は96,000円であり、付加保険料は2年でペイできることになります。
本来的な老齢基礎年金816,000円+付加年金96,000円=912,000円
が老齢基礎年金として支給されます。第一号被保険者の特権とも言うべき付加保険はお得ですね。
因みに、私が20歳になった昭和58年当時、私は大学生でした。当時、学生は国民年金制度には任意加入でした。保険料を支払ってもよいし支払わなくてもよかったのです。そのころの私は国民年金について関心がなかったです。なぜ保険料を払わなくてはいけないのか、と思っていました。
ところが、父は昭和59年度から保険料と付加保険料を大学卒業まで支払ってくれていたのです。社会保険労務士となった今だからこそ、還暦を回った身としてその重要さがよくわかります。おかげでカラ期間(私の場合は任意加入していなかった期間のこと)が8か月あるとはいえ、老齢基礎年金はほぼ満額受給できるのです。国鉄職員の薄給で保険料を支払ってくれた亡き父には感謝しかありません。
我が家には子供が二人います。学生納付特例という手段がありますが、学生の間の国民年金保険料と付加保険料をしっかりと払います。
6.最後に
民間保険の場合は、社会保険とは異なり年齢に応じて保険料額が上がることや既往病歴に応じて不担保となる傷病や保険に加入できないことがあります。
現在の国民年金制度では、第一号被保険者の保険料が月16,980円です。老齢、障害、死亡のすべてをカバーしています。国民年金は国が保険者(保険事業の運営主体)であり強制加入なので既往傷病に関係なく被保険者となります。したがって日本国民はその保護を享受できるということです。
また、経済的な都合により保険料が全額免除された場合でも半額分の年金が支給されます。これは国庫負担という仕組みによるものです。機会をあらためて説明したいと思います。
スレッズなどを見ていると、「高い保険料を強制的に取って、年金が支払われるかどうかわからない。国の詐欺行為だ。保険料を返せ。」などと言う人が山ほどいます。自分勝手な発言で非常に残念です。どうか、本稿をご覧の皆様はそのような人の発言に振り回されずにしっかり保険料を支払ってくださいね。
今回は老齢基礎年金の大枠についてお話ししました。保険料免除やカラ期間の詳細については今後お話ししたいと思います。それでは、次回をお楽しみに。
以上
街の社長さんへ。
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