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みんなが知っておくべき!~無縁墓の改葬・お墓の基礎
「先祖代々のお墓を守ってきたけれど、最近では管理が難しくなってきた…」「実家のお墓が遠くて、なかなかお墓参りに行けない…」
このような悩みを抱えている方は、決して少なくありません。
特に、東京などの大都市に地方出身者が増え、地方の過疎化が進む現代においては、お墓の承継問題は深刻です。
そこで注目されているのが、「墓じまい」という選択肢です。
墓じまいは、単にお墓を撤去するだけでなく、ご先祖様への供養の形を変え、未来へと繋ぐための大切な決断と言えます。
この記事では、墓じまいの基礎知識から、無縁墓の改葬手続き、そして行政書士である専門家への相談まで、幅広く解説していきます。
*参考文献:「行政書士が教える墓じまい・改葬の進め方」(行政書士 大塚博幸氏)
◆ 無縁墓の改葬方法について
近年、お墓の使用者と連絡が取れなくなったり、維持管理費の支払いが滞ったりして、長年放置されているお墓が増えています。
このようなお墓を「無縁墓」といいます。
無縁墓を放置することは、お寺や霊園の経営を圧迫するだけでなく、景観を損ねる原因にもなります。
そこで、長期にわたり放置されているお墓については、無縁墓の改葬手続きを行うことになります。
ただし、無縁墓であっても、法律に定められている手続きを行わずに、勝手に改葬(撤去)を行うことは違法行為になります。
無縁墓改葬には、時間と費用も必要になります。
まずは、改葬までの流れについて解説します。
1 無縁墓改葬の流れ
(1) 墓地使用者の調査
墓地管理台帳などにより、墓地使用者の調査を行います。
調査するため、新たに名簿を作成し、それを使って墓地使用者の方に対して、使用者変更手続き・住所変更届出など、届出の必要がある場合は、届け出るよう通知します。
なお、住所が不明の場合は、使用者の調査を行います。
(2) 使用者の調査
使用者の生死あるいは住所・連絡先(電話番号)などを把握するため、関係する市町村に対して、戸籍や住民票を取り寄せるなどの調査を行います。
なお、利害関係人としての請求となりますので、維持管理費の支払いがない期間など、その事実関係を証明する書類が必要となります。
使用者が死亡している場合は、その子どもや縁故者などの調査を行い、通知することになります。
(3) 住所変更届・使用者変更届
上記の調査により、使用者などの住所が判明した場合は、住所変更届や墓地承継手続きの届出を行うように通知します。
(状況により墓地使用権の放葉の依頼)
(4) 調査が不可能な場合
調査を行った結果、墓地使用者や縁故者の住所が不明となった場合は、「無縁墓改葬手続き」を行います。
2 無縁墓の改葬手続きについて
手続きは、「墓地、埋葬等に関する施行規則」により、その方法が定められています。
(1) 必要な書類
・無縁墳墓地の写真及び位置図
・死亡者の本籍・氏名・墓地使用者等
・死亡者の縁故者及び無縁墳墓に関する権利を有する方に対し、1年以内に申し出るべき旨を官報に掲載
・同時に、無縁墳墓地等の見やすい場所に設置された「立札」に1年間掲示
・公告した結果、その期間中に申し出が無かった旨を記載した書面
(2) 官報の写し・立札の写真
(3) その他、各市町村が必要と認める書類
注 官報の掲載は、政府刊行物サービスセンター官報販売所で申し込みます。
<参考例> 官報・立札 記載例
無縁墳基等改葬 公告
○○の為に、無縁墳基等について改葬することになりましたので、
墓地使用者、死亡者の縁故者及び無縁墳墓等に関する権利を有する方は、
本公告掲載の翌日から1年以内にお申し出下さい。
尚、期日までにお申し出のない場合は、無縁仏として改葬することに
なりますので、ご承知下さい。
今和〇年○月○日
墳墓等所在地 ○○○○○
墳基等名称 ○○○○○
死亡者の本籍及び指名 ○○○○○○ ○○○○
(不明の場合、不詳等記入)
改葬を行おうとする者 ○○○○○○ ○○○○
3 注意点
法律に定める手続きに基づいて無縁墓改葬手続きを行いますが、墓地に来た形跡などを確認しておく必要があります。
その証拠として、お墓周辺の写真(日付記載)を撮っておくほうがいいときがあります。
また、無縁墓改葬許可は、あくまでも遺骨の改葬という許可となります。
遺骨、墓石の所有権について、お寺側が取得したことにはなりません。
したがって、後々、関係者から、遺骨の返還を求められた場合には、返還に応じなければなりません。
許可取得後、無縁墓などに合祀、あるいは墓石を撤去処分することは、お墓の所有者とトラブルになる場合があります。
できるだけ、返還できるよう対策を考えておいた方がいい場合があります。。
<参考>
(墓地、埋葬等に関する法律施行規則)
第3条 死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂(以下「無縁墳墓等」という。)に埋葬し、又 は理蔵し、若しくは収蔵された死体(妊娠四月以上の死胎を含む。以下同じ。)又は焼骨 の改葬の許可に係る前条第一項の申請書には、同条第二項の規定にかかわらず、同項第 一号に掲げる書類のほか、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 無縁墳墓等の写真及び位置図
二 死亡者の本籍及び氏名並びに墓地使用者等、死亡者の縁故者及び無縁墳基等に関す る権利を有する者に対し一年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載し、かつ、無縁墳 墓等の見やすい場所に設置された立札に一年間掲示して、公告し、その期間中にその 申出がなかった旨を記載した書面
三 前号に規定する官報の写し及び立札の写真
四 その他市町村長が特に必要と認める書類
◆ お墓などの周辺知識
1 お墓参り
お墓参りは、先祖の霊を供養する大切な行事です。
(1) 命日
故人が亡くなった日を、命日と言います。
一周忌以降の同月同日は、祥月命日と言います。
こちらは、一年に一度になります。
その他、毎月、故人が亡くなった日を偲ぶ、月命日があります。
祥月命日には、一月忌、三回忌、七回忌等の法要やお墓参りをする方が多いかと思いますが、月命日は、お墓参りの代わりに、故人の好きな物などを仏前にお供えしている方が多いかと思います。
(2) お盆
ご先祖様・故人が浄土から地上に戻ってくる日と考えられています。
この期間にお迎え供養する期間を「お盆」と言います。
東京では7月13日から、地方では8月13日から4日間行われることが一般的です。
(3) お彼岸
彼岸とは、岸の向こう・悟りの世界を表します。
阿弥陀如来の導きにより、故人が彼岸に渡ることができると考えられており、彼岸に渡った故人を供養する、又は、まだ彼岸に渡ることができない故人について、早く彼岸に波れるようにお析りする日と言われています。
お彼岸は、春分の日と前後の3日間、秋分の日の計7日間になります。
2 相続財産と祭祀財産の違いについて
(1) 相続財産
相続財産は、故人の所有していた一切の権利義務になります。
現金・預貯金・不動産等を始め負債(借金等)も相続することになります。
財産の分配についても法律で定められており、遺言書の指定や遺産分割協議等をもとに行うことになります。
また、相続放葉に関することも法律で定められています。
(2) 祭祀財産
お墓や仏壇といった祭祀財産は、法律で定められたルールにより、祭祀承継者が継ぐことになります。
ただし、放棄・辞退などは、法律で定められていません。
ちなみに相続財産を放棄した場合でも、この祭祀財産は放棄した方でも承継ができます。
3 お墓の税金
国税庁によると、相続税のかからない財産として、
(1)墓地・墓石
(2)仏壇・仏具
(3)神を祭る道具など、日常礼拝しているもの
となり、基本的には、一般的なお墓や仏壇は、相続税の対象外になります。
ただし、骨策的価値があるなど、投資の対象となるものや商品として所有しているものは、相続税の対象となります。
なお、お墓を承継した場合は、毎年お寺に対する維持管理や寄付、お布施などの支払いが生じます。
また、墓地使用者の変更手続きも行う必要があります。
公営墓地の場合、承継者変更手続きに、使用者であった故人の死亡記載のある戸籍、祭祀承継者であることの証明(喪主としての葬儀領収書、通知はがきなど)書類など、提出書類が多くなる場合があります。
4 納骨の範囲
法律では、1つのお墓に人れる人・人れない人など、納骨の方法やルールはありません。
ただ、一般的には、納骨できる遺骨者は親族に限るとされています。
親族とは、六親等内の血族と三親等以内の姻族になります。
ご自身の親族は、ほぼ六親等内に入りますので問題ありませんが、姻族の場合はおいめい、おじおばまでは可能です。
また、お寺・霊園の管理者により、上記以外の方の埋葬も認められる場合もあります。
まずは墓地管理者にご相談ください。
5 永代使用権
「永代使用権は他の人に売っても良いのか?」「永代使用権を返還したらお金は返ってくるの?」などの質問を頂く場合があります。
基本的には、他人に永代使用権を売却することはできません(通常、管理規約や使用規則等にて定められています)。
お寺において、規約等がない場合においても、管理者の許可なく他人に譲渡・売却することはできないのが一般的です。
また、墓じまいにおいて、墓地の区画を返還した場合、通常は永代使用料は返還されません。
ただし、永代使用権を購人したが、短期間に墓を建てず返還した場合は、水代使用料の一部が返金される場合もあります。
詳細は、墓地管理者に確認する必要があります。
6 仏壇
仏壇の処分について、墓じまいでお墓を整理したいが、同時に仏壇も処分したいという話もよく聞かれます。
一般的には、お寺の住職に閉眼供養などをして頂いた後、処分ということになります。
処分の依頼先は、仏具店になりますが、供養後に処分(仏具店が引き取り)してもらえる場合がありますが、どの様な処分となるか確認する必要があります。
◆ まとめ
〇 専門家への相談で安心を ~行政書士のサポート~
墓じまいは、法的な手続きや寺院との交渉など、複雑な手続きが必要です。
そこで、専門家である行政書士に相談することで、スムーズな墓じまいを進めることができます。
墓じまいは、決してご先祖様をないがしろにするものではありません。
むしろ、時代の変化に合わせて供養の形を変え、未来へと繋ぐための選択と言えるでしょう。
当事務所では、お客様の気持ちに寄り添い、最善の解決策をご提案いたします。
この記事を読んで、少しでも墓じまいについて考えるきっかけになれば幸いです。
〇 お問い合わせ
行政書士藤井等事務所
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(2) 事務所ホームページ<墓じまいのページ>