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京都ボヘミアン物語⑲破壊力抜群の失恋騒動
実践ゼロの恋愛至上主義
中学1年で畑正憲の「ムツゴロウの青春期」を読んでから、恋愛小説をかたっぱしからよんだ。愛する人といっしょなら、家出をしてどこか遠い町でくらしてもよい。愛さえあれば、どんな苦労ものりこえられる−−。アルバイトの経験もないのにおもいこんでいた。
高校2年の秋、女子校の文化祭のフォークダンスでであった子にひとめぼれして、長い手紙をおくって撃沈した。
それ以来、「彼女がほしい」とおもいながらも、具体的な対象はいなかった。大学2回生に進級する春休み、中国の南の端のシーサンパンナ州で羅遠芳ちゃんと遭遇して久々にドキドキ感をあじわった。
1986年4月。新入生歓迎の大文字キャンプにはじまり、新入生獲得だけでなく自分たちのであいをもとめて、「バーベキューハイキング」や合コンを企画する。参加者をつのるため京都女子大(京女=キョウジョ)や仏教大前でチラシを配布して声をかける。
そんなこんなで実現した合コンで、オクダさんという子に目をうばわれた。
すらっとしていて、上品で、おっとりした声がやさしい。彼女たちのグループとは複数回「ひらパー」(ひらかたパーク)であそんだり、合コンをしたりした。
6月末、百万遍を自転車でとおりがかると、女の子の笑い声がした。ふりむいたら京女の女子寮の3人だった。
「なんでこんなところに?」
「バイトをさがしにきたんです」
ひとことふたことかわすあいだに206系統の市バスがきて、あっさりサヨナラ。オクダさんのかわいさにまいってしまって、ぜったいこの子しかいない! と決意した。
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魅力にクラクラ 会話つづかず失速
1週間後の7月6日、3回目の合コンにでかけた。幹事役をしたタケダがさりげなくオクダさんの隣の席をあけてくれた。タケダは腎臓病になってから、人の気持ちをこわいぐらいにくみとってくれる。サバイバルを脱走してひらきなおった図々しいヤツと同じとは思えない。つらい思いをすると、人間ってやさしくなるのかなあ、なんて感謝したのは数分で、すぐにオクダさんとの会話に夢中になる。
彼女もジャーナリスト志望だったとか、中国文学や漢詩が好きで中国へいきたいとか、文学では中島敦や太宰治が好きとか……
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