縄文式ワインクーラー
半分以上の食器を処分して、ものを増やしたくないから、好きだった民芸の焼き物を見るのもひかえていた。義理で買うとしてもぐい飲み程度かな、と。
ところが、岩国英子さんの個展にでかけたら、作品が生きているみたい。
気取ってなくて、ストレートに感性に訴えてくる。ぼくは自分の審美眼を信じていないけど、見ているだけで楽しい。
その時はわからなかったけど、これは縄文土器だ! と後から思い至った。
小学生か中学生のころ、「縄文から弥生にかわって、シンプルな美しい土器がつくられるようになった」と教えられた。
縄文土器のほうがどう考えてもおもしろいのに……ぼくの感覚っておかしいのかなぁ。そう思いながら「弥生式土器の方が美しい」という「正解」を覚えこんだ。
縄文のほうがおもしろい、という感覚がまちがえではなかったと知ったのは、大学に入って、岡本太郎や梅原猛を読むようになってからだ。
今回もおちょこを買おうかな、と思っていたら、会場のスタッフから声をかけられた。
「なにか気に入ったものはありましたか」
「ワインクーラー、いいですねぇ。夏のテラスであれでワインを冷やして飲んだらおいしそう」
つい口にしてしまった。ものは増やさないと決めていたのに。そもそも築40年のマンションにテラスなんて存在しないのに……。
5日後、家に届いた。15分ほど水につけてからワインボトルを入れれば、気化熱でワインを適度に冷やしてくれる。水につからないからラベルもはがれないそうだ。
うちにはテラスなんてこじゃれた空間はないけれど、窓際に置いて400円ワインのボトルを入れてみた。
これなら安ワインもおいしく飲めそうだ。
岩国さんの「ベロ亭賽窯」のHPはこちら https://berotei.com/