Twitch/KRAFTONのKevinさん、鳩山玲人さん、GeniesのAkashさんの回【L&UX制作記⑦】
5月17日月曜開始のL&UX2021、第7回はUSデジタルカルチャー最前線。昨年までTwitchのCOOで、現在はPUBGを抱えるKRAFTONの役員であるKevin Linさん、日本のエンタメビジネスをけん引する鳩山玲人さん、アバタープラットフォームGeniesを展開するAkashさんに語ってもらいました。
■ セッション概要
5/25(火)18:00-19-00
USデジタルコミュニティの最前線と日本の可能性
Kevin Lin(ex.Twitch, 現KRAFTON) / Akash Nigam(Genies Inc.) / 鳩山 玲人(鳩山総合研究所)
新興国や中国で起こる、デジタルを駆使した社会インフラのアップデートとは異なり、アメリカで起きていることはもっとカルチャーとしての変化を含んでいます。D2Cのように各々の世界観や生き方を支えるような個別ブランドが隆盛し、サステナビリティや人権におけるスタンスを企業や個人が示すことの重要性が高まっており、その中でe-sportsを含むファンコミュニティ、メタバース、NFTを含むブロックチェーンなどのデジタルトレンドが絡み合いながら発展・変化しています。ある意味で、その文脈から切り離された日本人やその他の外国の人々から見ると、理解しにくいハイコンテクストな環境になっているとも言えます。
デジタル×カルチャーの最先端にいる人々は、今の世界の潮流をどのように見ており、彼らから見たときに、私たちがユニークだと信じている日本のカルチャーはどのように映っているのでしょうか。
このテーマで登壇いただくのは、今やグローバルで当たり前になった「ゲーム実況」という市場を最初に築き上げた、ゲームを中心カテゴリとしたアメリカトップのライブ配信プラットフォームであるTwitchの共同創業者で元COOであるKevin Lin(ケヴィン リン)さん。現在はPUBGを抱えるKRAFTONの役員でもあります。
そして、アバターテクノロジーとデジタルグッズを展開するアメリカのリーディングカンパニーで、様々なインフルエンサーを巻き込みながら新たなアバターワールドを展開しているスタートアップ企業、Genies Inc.の創業者であるAkash Nigam(アカッシュ ニガム)さん。デジタル資産とも言われるNFTやメタバースといった最先端領域をまさに自ら切り開いていっている方です。
このお二人の持つハイコンテクストかつ先端的な思想を紐解くのは、ハローキティやラインフレンズをグローバルに広め、LINEやYoutuberプラットフォーマーのUUUMなど、様々な企業で顧問や社外取締役を行ないながら、現在はシリコンバレーのパロアルトに住む、鳩山玲人さんです。今回の人選だけでなく、話の振り方、まとめ方も見事というほかありません。
アメリカ、ひいては世界の最先端にいる方々の視点から、生活やビジネスにおいて、カルチャーやエンタメの重要度がどんどんと高まる中で見えてくる社会の変化や兆し、それにおける日本の立ち位置を紐解いていきます。
■ みどころ① アフターデジタルが古く感じる超最先端の感覚
このセッションで最も知的にエキサイティングなのは、アバター世界やメタバースと、現在のゲームコミュニティの考え方の違い、そこにSNSが絡み、NFTが活用されていく、という世界が、非常に高い解像度で、かつ分かりやすく語られていくことです。
この話を聞いていると「完全にデジタル前提になった世界」に生きている人たちの視点で語られていくので、私は正直「世界最先端から見ると、アフターデジタルはやっぱりもう古いんだよな...」と思っていまいました。
アバタープラットフォームを展開し、ジャスティン・ビーバーなどのアバター向けオリジナルグッズを、数量限定でコピーできないデジタル資産(まさにNFT)として制作するAkashは、今の世の中をこうまとめます。
インターネットはもともと、物理的な世界での制約や制限、いじめ、脅迫といったものをすべて取り除くことができる安全な場所として作られました。インターネットの世界に入れば、ありのままの自分でいられる。ですが、ここ何年にもわたって、従来のSNSのプラットフォームでは、そのようなことはなくなってきていると思います。
ですから、メタバースや、デジタルエコシステムやアバターによって、私たちは振り子を戻そうとしています。仮名や、完全に匿名のIDを使って、現実世界から来るかもしれないプレッシャーに、再び立ち向かえるようになるのです。
根底にはあるのは、メタバースに伴う自己本来性、さらには物質的な自分とは異なる自分の個性を表現できる、という概念があると考えています。
これに対して、ゲーム実況という市場を切り拓き、「ゲームをやる」のではなく「ゲームを見る」という行動を世に創り出した張本人であるKevinさんは、このように言います。
Twitchは本当にその反対のようなものでしたよね。自分や自分の個性を表現することに重きを置いていて、カメラを使って自分を映しながらゲーム実況をしてコミュニティを作っていました。
私も、Akashが言っているような、自分が望むようになれる、自由へのチャンスにとても興味があります。つまり、自分自身であることに変わりはないのですが、匿名になることができるのです。好きなキャラクターを使って自分を表現できます。
まったく異なるタイプの人々、つまりSNSで自分を表現したくなかった人たちにSNSを開放することができるのです。これからどれほど多くの人がインフルエンサーになるのか、とても興味があります。
■ みどころ② メタバースとNFTが生み出す次の世界
こうした流れで、最近流行っているNFTについて、Akashはこう話します。
ここにいる皆さんは、NFTという言葉をよくご存知でしょうし、もしかしたら聞き飽きているかもしれません。でも、お伝えしたいことがあります。しかも、無料で(笑)。
NFTはなくなりません。NFTは、インターネット全体にとっても、SNSよりもはるかに大きな存在になっていくでしょう。NTFは、芸術的なフォーマットだけに限りません。あらゆる決定的瞬間と価値ある側面を細かく分けて、それを収益化できるようになります。どういう意味か分かりますか?
例えばセレブがコーラをシャツにこぼしたとして、それがネット上やSNSで話題になります。これまではそこから金銭的な利益を得ることはできませんでした。それが突然、NFTでは可能になるわけです。ファンはその瞬間を自分だけのものにしたいと思っているので、NFTによってこれが有限のデジタルアセットになれば、購入する価値が生まれてきます。このように何千もの収益化の可能性が出てくるわけです。
ここに留まらず、ここから更に可能性がどんどんと語られていきます。これは幻想ではなく、すでに始まっている「アフターデジタル社会のカルチャーとビジネス」の話であることが、本当にワクワクします。
■ 全体を通して
鳩山さんのリードで、私たちが日本で暮らしているだけではなかなか見えてこない世界の変化が明らかにされていきます。
この議論の白熱だけでなく、Twitchという世界に新たなカルチャーをもたらした存在がどのように大きくなってきたか、さらには彼らが日本という市場やカルチャーに感じている可能性が語られていきます。
アジア圏でビジネスをする私にとっては、本当に新しく、次の世界の可能性を感じるお話。世の中の最先端の見え方が大きく変わると思います。
L&UX2021のチケットを(デジタル上で)握りしめて、25日の配信をお楽しみにしてもらえましたらとても幸いです。