住宅地に森を残そう ヨーロッパ旅行記⑴
6月に2週間ほどヨーロッパを旅行した。主にはベルギーの首都ブリュッセルに滞在し、のんびりと散歩やショッピング、観光地巡りをした。EU本部が置かれているヨーロッパの政治・経済の中心地のひとつであるが、街を歩いてみると、日本の中規模都市のような感じで、良かったのは、街のなかに自然を多く残していることだった。広島市内でも高層ビルがどんどん建ち、市民の公園がサッカー場に変わったりして、緑がなくなっている。東京では神宮外苑の森を伐採して再開発しようとしているが、古い開発神話に囚われた発想のように思える。街のなかに意識して自然を残す、さらにはそこで野菜栽培するような、まちづくりが私の理想である。
ブリュッセルでは知人宅に滞在した。EU本部のある中心部から地下鉄で30分もかからぬところだが、日本の郊外住宅地の感じで3階建ての小さな住宅が壁を接して並んでいる。10階建て以上の集合住宅も点在するが、密集しておらず、のどかな風景だ。この住宅地とバス通りの間に細長い森がある。池があり鬱蒼とした大木も茂っている。遊歩道が整備され、子どもを連れたり犬を散歩させたりしながら市民がのんびり歩いている。自転車の往来も多いが、遊歩道が広いので気にならない。池には多くの水鳥が人間を全く恐れずに餌をついばんでいる。親鳥が餌の水草を口移しでヒナに与える様子も近くで見られた。思わず「かわいい」と言ってしまった。知人は虫が多いのでいやだと言っていたが、私はこの森が大好きになった。
歩いていると「市民農園」のような区画を発見した。フランス語の看板を翻訳アプリのカメラで撮影すると瞬時に日本語に訳してくれる。「環境の家の農園」と冒頭に書かれていた。「農薬を使わないこと、市民が自由に出入りして見学したり通路とすることを認める」などのことが書いてあった。今は土起こしの時期のようで作物は見られなかったが、夏にはここで一斉に作物が実るのだろう。池から水をくみ上げる手動の装置があった。ネットで調べると「コルクスクリュー」「ウォータースライダー」という名前がついていた。初めて見る装置なので動かしてみたら簡単に水をくみ上げることができた。
ブリュッセルでは、あちこちにこのような森があった。街をつくるときに意識して残しているのではないか。日本の公園のように遊具を置いたり花壇を整備したりすることはしていないが、幹線道路から一歩中に入ると、そこは鬱蒼とした森の中なのだ。
私が住む廿日市市の団地も緑は多いと思っていた。しかし、山の斜面を造成した団地であり、ぎっしりと家を建てている。たとえば半分かせめて3分1でも、森や池を残しておくようにすれば、もっといい環境になったのではないか。
しかし、造成企業にとっては、別荘地のような団地にしたら採算がとれないか、儲けが少なくなるだろう。だから日本の団地はどこも森や池を残さず平らに造成してしまうのだろう。どこへ行っても同じような団地風景になってしまっている。その団地に、いま空き家が増えている。人口減になっているのだから、宅地を造成するときに目いっぱい家を建てるのでなく、元の自然を残すようにしてほしい。そこに市民農園をつくって、住民たちが休日農業をする。食料危機の備えにもなるし、子どもたちの環境教育の場になる。どうですか、こんな宅地開発に切り替えてみませんか?
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