エッセイ⑰「勝利のコーラ」
誰でも経験のありそうなことを、つらつら解説してますね笑。
このコーラ、どんな味だったのかまるで記憶にないので、美味しくはなかったみたい。
UFOキャッチャーって罪深いですよね。
誰があんな悪魔の小銭投入機を生み出したのでしょうか。
少し前「ちいかわ」のマグネットが景品のガチャガチャに同じようにどハマりして、あれが同じような強力な引力を持っていることがわかりました。
最高の浪費です。
懲りずにそういうものに定期的にハマってしまうので、ちょっと自分をキツく叱りつけようと思います。
ちいかわ、ハチワレちゃんだけがまだ来てくれないんだよなぁ、、、。
わたしは今日、二千円のコーラを入手した。
手に入れるのにどれほど手間取ったことか。神経をかなり削った必死の交渉の末、ようやっとその瓶一本の希少なコーラを手に入れた。
交渉相手は機械的で思わせぶりな動作でわたしを翻弄した。
その交渉相手。ショッピングモールにあったUFOキャッチャーである。
この世でもっとも無意味な浪費。それがUFOキャッチャーでの「あともう一回だけ!」から出る百円玉。
わたしはふだん、ゲームセンターには寄り付かない。なぜならほしいかも、と思った景品を前にUFOキャッチャーへ繰り返し財布を開く自分を知っているからだ。
この百円玉で何ができる?
募金すれば、貧しい人たちへささやかな糧を送れるだろう。そうでなければ自分の楽しみとして、いくつかの駄菓子を買うこともできる。
だいたい、たった一枚の百円玉というが、わたしはそれまでにも何枚の百円玉をこの機械に投入しただろう。
そもそもこの景品は、本当に欲しいものなのか。
変わった景品を見つけてはじめは、もし手に入ったらいいな、程度の気持ちではなかったのか。
それが百円を費やし、二百円を費やし、やっと景品が傾いてあとひと押しで落ちそう、というところでうっかり元の場所へ引き戻してしまう。
もう百円、さらに百円を入れ、気がついたらこれほどお金を費やしておいて、これはなんとしても手に入れなければ引き下がれない状態に。
世の優れた投資家がこの様子を見たら、何を言うだろう。技を磨き、勝算がある勝負ならともかく、よく考えれば欲しいかどうかもわからない、それもさも意地悪に配置されている景品のために、どうしてこんなにお金を投入できるのか。
今回の景品は「コーラ好きならこれを飲まないでは語れない」というポップ付きのコーラだった。
UFOキャッチャーなら珍しい景品だ。つい「飲んでみたい」という気持ちが抑えきれなくなった。ちなみにわたしはコーラが好きではあるが、それを語れるほどの知識は持たない。そこまでの興味もない。
その一本のコーラの定価がいくらかもわからない。しかしもう引き下がれない状態まで及んだ中で、これはゲーム性という付加価値を楽しんだことへの支払いなのだと自分に屁理屈こきながら、百円玉を二千円ぶん投入した。
そして、コーラである。「CURIOSITY COLA」という名前で、原産国はイギリスとある。
氷を入れたコップに注ぐと、泡がきめ細かい。香りは軽やかに甘い。口にすると、炭酸は弱い。
これは二千円費やした勝利のコーラなのだ。わたしはその風味を噛みしめながら、二度とUFOキャッチャーには近づかないと、またまた心に誓ったのであった。