見出し画像

運動とアスタキサンチンの肥満に対する併用効果を検証 BMI、糖・脂質代謝、炎症状態が改善

アスタキサンチンには強力な抗酸化作用があり、肥満や慢性炎症の予防・改善に有効であることがわかっています。肥満に該当する68人の男性を対象とする試験では、アスタキサンチンを毎日摂取しながら運動を続けることで、より高い効果が得られることが証明されました。

アスタキサンチンの補給と運動の併用効果

学術顧問の望月です。前回の記事では、神経障害に対するアスタキサンチンの効果をご紹介しました。今回は、肥満に対するアスタニンの効果を検証した論文を確認していきます。ピックアップしたのは、2023年に『Nutrients』に掲載された「Astaxanthin Supplemented with High-Intensity Functional Training Decreases Adipokines Levels and Cardiovascular Risk Factors in Men with Obesity」です。

肥満は、活性酸素の産生や炎症誘発性サイトカインの分泌に関連しています。いわゆるメタボの状態が長く続くと、高血圧・糖尿病・脂質異常症を併発して、脳卒中や心臓病などの原因となる動脈硬化のリスクが増大します。

メタボの改善法として知られているのが、適度な運動や筋力トレーニングです。例えば、筋力と持久力を同時に鍛える「高強度ファンクショナルトレーニング (HIFT)」を続けると、持久力や有酸素能力の向上、体脂肪の減少、筋肉量の増加のほか、IL-6およびIL-10といったサイトカインの活性が上がることなどが報告されています。

近年では、サプリメントの役割についても研究が進められています。その一つが、不二バイオファームで製造しているアスタニンの原材料としても使用しているアスタキサンチンです。過去の研究では、アスタキサンチンが脂質代謝に関連して生じる酸化ストレスの影響を軽減することや、運動中の筋肉の脂質代謝を促進することなどが報告されています。一方、HIFTなどのトレーニングとアスタキサンチンの併用効果については、限られた情報しかありませんでした。

著者らは肥満の人を対象として、HIFTとアスタキサンチンの併用効果を検証しました。試験に参加したのは、定期的な運動を過去6ヵ月間行なっていない68人の男性です(平均年齢27.6 ± 8.4歳、平均身⻑167.8 ± 3.1 cm、平均体重94.7 ± 2.0 kg、平均BMI33.6 ± 1.4 kg/m2)。以下のとおり、参加者を17人ずつ4つのグループに分け、各群の12週間後の測定項目を比較しました。

①コントロールグループ(コーンスターチ1日20 mg)
②サプリメントグループ(アスタキサンチン1日20 mg)
③トレーニンググループ
④トレーニング・サプリメントグループ(アスタキサンチン1日20 mg)
試験期間中、各グループから2人ずつ離脱。

測定項目は、体重や体脂肪率、BMI、心肺機能などのほか、糖や脂質など代謝に関連する数値、脂肪細胞から分泌されるアディポカイン(CTRP9とCTRP2)、脂肪が産生する成長分化因子(GDF8とGDF15)のレベルなど。これらは、いずれも肥満や慢性炎症に関わるものです。

試験期間中、アスタキサンチンとプラセボ食品は1日1回、朝食時に摂取してもらっています。また、今回採用されたトレーニングは最大60分間続く合計36のメニューで構成されています。

アスタキサンチンの強力な抗酸化作用が鍵

結論を先にまとめると、アスタキサンチンを補給しながらトレーニングを続けることで、肥満や慢性炎症が改善することが確認されました。サプリメントグループとトレーニンググループでも一定の効果が認められていますが、改善率が最も大きいのはトレーニング・サプリメントグループだったのです。ポイントのみ、簡単にご紹介します。

トレーニング・サプリメントグループは、体重・体脂肪率・除脂肪量・BMIの減少、心肺機能の改善、HDL-C・LDL-C・TC・TGといった脂質プロファイルの改善、グルコース・インスリン・HOMA-IRといった代謝マーカーの改善、CTRP2・CTRP9とGDF8・GDF15のレベルの低下が認められました。トレーニングのみよりも効果が高かったという結果は、アスタキサンチンの効果を裏づけるものです。

作用機序についてですが、著者らによると「アスタキサンチンの摂取によってNF-κBの転写因子の活性化が阻害され、炎症誘発性サイトカインの減少と炎症状態の改善が生じた結果、肥満によって誘発されるアディポカインの制御異常やインスリン抵抗性に変化が起こっていると考えられる」とのことです。

さらに、「肥大化した脂肪細胞に浸潤するマクロファージを減らして炎症性サイトカインの放出を緩和することで、インスリン感受性を改善させている」という考察もあります。簡単にいうと、アスタキサンチンの強力な抗酸化作用が炎症を抑制して肥満の改善をもたらしているのです。

一方で、今回の試験では課題も残っています。別の研究グループが行った試験では、肥満の人の運動後のGDF15レベルは、本論文の結果(GDF15の減少)とは対照的に増加しています。背景には、代謝や炎症状態、トレーニング法の違いなどが関連しているものと考えられます。今後、個別に最適化されたトレーニングのメニューなどが開発されるかもしれません。いずれにしても、アスタキサンチンの継続摂取は肥満や慢性炎症の改善には役立つといえそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?