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GABAとホエイプロテイン補給の相補的効果 レジスタンス運動後の筋肉量・機能に与える影響を検証

骨格筋は、安静時の代謝や血液中のブドウ糖の取り込みなど、健康を維持する上で重要な役割を担っています。筋肉にくり返し負荷をかけるレジスタンス運動は、筋肉の量の増加や機能の向上に有効です。良質なたんぱく質やアミノ酸を補給することで、レジスタンス運動の効果は上がることがわかっています。成長ホルモンを増やすガンマアミノ酪酸(GABA)は、注目のアミノ酸の一つです。ホエイプロテインとの組み合わせによる相補的効果も期待されています。

成長ホルモンを増やすGABAの働き

学術顧問の望月です。今回の記事では、前回に続いてGABAの機能性研究の情報をご紹介します。ピックアップしたのは、『J Clin Med Res』に2019年に掲載された「Oral Supplementation Using Gamma-Aminobutyric Acid and Whey Protein Improves Whole Body Fat-Free Mass in Men After Resistance Training」です。ホエイプロテインとGABAが、運動後の筋肉に与える影響について検証されています。

骨格筋は、安静時の代謝、脂質の酸化、血液中のブドウ糖の取り込み、運動機能の調節など、重要な役割を果たしています。筋肉に負荷をかける動きをくり返し行うレジスタンス運動は、筋肉の量の増加や機能の向上に有効です。レジスタンス運動の効果は、良質なたんぱく質やアミノ酸の摂取によって上がるといわれています。

今回の研究でフォーカスされているのは、ホエイプロテインとGABAです。過去の研究では、ホエイプロテインがカゼインや大豆プロテインなどよりも効率的に安静時および筋力トレーニング後の筋肉のたんぱく質合成を刺激して、脂肪を除いた除脂肪体重の増加を促進することが明らかになっています。

一方のGABAには、骨格筋の成⻑と維持に必要な成長ホルモンの分泌を調節する働きがあります。具体的には、アミノ酸の輸送および筋肉のたんぱく質の合成を促進するインスリン成⻑因子の産生などに関わっていることが明らかになっているのです。

ラットにGABAを10日間投与する実験では、安静時の成長ホルモン濃度が増加し、ベースライン時の腓腹筋、脳、肝臓におけるたんぱく質合成が促進されるという結果が得られています。人間を対象とする試験でも、筋肉のたんぱく質合成が増えるという結果が得られています。

本研究では、ホエイプロテインとGABAの補給がレジスタンス運動による筋肥大に与える影響について検証されました。試験に参加したのは、運動習慣がない男性26人(26〜48歳)です。26人を1日あたり10gのホエイプロテインを摂取する13人(WP群)と、10gのホエイプロテインおよび125mgのGABAを摂取する13人(GABA群)の2群に分けて、各群にレジスタンス運動を週2回、行ってもらいました。試験期間は12週間に設定されています。

試験の評価項目は、体組成、最大筋力、成長ホルモン濃度です。体組成と最大筋力はベースライン時と12 週間後に、成長ホルモン濃度は、ベースライン時、4週間後、8週間後、12 週間後に測定されました。

GABAでレジスタンス運動の効果が早期化

最終的に結果の分析対象となったのは、WP群の10人、GABA群の11人の計21人です。体組成については、GABA群においてWP群よりも大きな除脂肪体重の増加が認められました。腕と脚の除脂肪体重にグループ間の有意差はなかったため、ホエイプロテインとGABAは体幹の除脂肪体重の増加に関連している可能性が示されています。

最大筋力については、両群で効果が認められています。下半身の最大筋力は、各群で有意に改善していました。また、有意差はなかったものの、上半身の最大筋力においても両群で大幅な改善が確認されました。しかし、上半身、下半身の筋力のいずれにおいても、グループ間の有意差はありませんでした。

成長ホルモンについては、GABA群は、ベースラインと比較して4週後と8週後に有意に高い濃度となりました。一方のWP群は、ベースラインと比較して8週後にのみ有意に高い濃度を示しました。WP群における成長ホルモン濃度は試験開始後から徐々に上昇していったのに対し、GABA群では試験開始後の早い段階から著しい上昇があったという結果です。

GABA群における成長ホルモン濃度の早期の上昇や除脂肪体重の増加について、著者らは「ホエイプロテインとGABAのアミノ酸の相補的効果が関連している可能性がある」「GABAは筋肉のたんぱく質合成を部分的に促進し、安静時の成長ホルモンの濃度を上昇させることによって全身の除脂肪量の増加につながった可能性がある」と考察しています。

今後の課題も見えてきました。試験における除脂肪体重の変化は、先行研究よりも小さなものとなりました。これは、若年者と高齢者に必要なたんぱく質の量によって説明できそうです。若年者と高齢者の筋力アップには、それぞれ20gと40gのたんぱく質の補給が必要であるとする先行研究があります。今回の試験における試験食品の摂取量は、筋肉のたんぱく質の合成と肥大を誘導するには不十分だった可能性があるというわけです。

さらに、レジスタンス運動の頻度は週2回よりも週3回のほうがいいという研究結果も報告されています。摂取量と同様に、運動の強度や頻度が足りなかったことが考えられるのです。ふだんの食事におけるたんぱく質の摂取量が不足している可能性も排除できません。ホエイプロテインやGABAが筋肉のたんぱく質合成を直接促進するかどうかを判断し、除脂肪体重をどのように増加させるかについては、今後の研究で明らかになっていくものと思われます。

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