メタボ対策にニンニク成分が有効 継続摂取で高血圧・高血糖・脂質異常が改善
ニンニク中の硫黄含有生理活性化合物に注目
学術顧問の望月です。不二バイオファームでは、主力商品の発芽そば発酵エキスのほかに、ニンニクスプラウトとアスタキサンチンを主原料とするアスタニンを製造しています。今回の記事では、久しぶりにニンニクの研究情報をご紹介します。
「Effects of garlic supplementation on components of metabolic syndrome: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression of randomized controlled trials」が『BMC Complement Med Ther』という学術誌に掲載されたのは、2023年のことです。本レビューでは、メタ分析という手法を用いて、メタボリックシンドロームに対するニンニクの効果を検証しています。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積に加えて、高血圧や高血糖、脂質異常症などが見られる代謝異常の状態を指します。背景には、慢性炎症や小胞体ストレス、レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系の活性化や腸内細菌叢のバランスの異常などが隠れています。メタボリックシンドロームの状態が続くと、糖尿病や心血管疾患のリスクが高くなります。そのほか、非アルコール性脂肪肝、高尿酸血症、腎臓病、睡眠時無呼吸症候群などにも注意が必要です。
アリイン、アリシン、S-アリルシステイン、ジアリルトリスルフィドといった高濃度の硫⻩含有生理活性化合物が含まれているニンニクには、酸化ストレス、アポトーシス、慢性炎症、血管リモデリングを緩和する働きがあり、人間を対象とする試験ではメタボリックシンドロームに対する効果が示唆されています。一方で、ニンニクの効果に懐疑的な研究結果も報告されています。
こうした状況を受け、本レビューでは19試験、999人のデータをもとに、BMIや腹囲、血圧や血糖値、血中脂質など、メタボリックシンドロームに関わる項目に与えるニンニクの影響を分析しました。それぞれの研究に用いられたニンニクの形状はさまざまで、生のニンニク、熟成ニンニク抽出物、加工ニンニク、ニンニク粉末の粒食品などが試験食となっています。試験期間も同様で、6〜24週間の範囲で試験が行われています。
50歳未満で各種数値が大幅に改善
それでは主要項目の結果をご紹介していきましょう。BMI(6試験、324人対象)と腹囲(3試験、173人対象)は、ニンニク摂取群のほうが有意に低いという結果が得られています。血中脂質への影響については、中性脂肪(15試験、701人対象)、総コレステロール(14試験、617人対象)、LDL(14試験、577人対象)では有意差は認められなかったものの、HDL(14試験、701人対象)はニンニク摂取群で、試験後にわずかな上昇が観察されています。
ニンニクの摂取が血圧や血糖値に与える影響はあるのでしょうか。 9試験、423人のデータを分析したところ、ニンニクの摂取が最小血圧の劇的な改善、最大血圧のわずかな改善に関連していることが判明しました。さらに、5試験、214人を対象にしたデータ分析では、空腹時血糖値を緩やかに減少させることが確認されたのです。
試験の規模(参加者)を50人以上と50人未満で分けるサブグループの分析では、50人以上を対象とする試験において、中性脂肪、腹囲、LDL、最大血圧、最小血圧、空腹時血糖値が大幅に減少したことがわかりました。また、50歳未満の参加者では、中性脂肪、腹囲、LDLが大幅に減少していることも確認。さらに10週間未満の試験期間のデータに限定すると、腹囲、中性脂肪、LDL、最大血圧、最小血圧に有意な減少が認められたのです。
本レビューでは、生ニンニクと熟成ニンニクが、腹囲、LDL、最大血圧、最小血圧の低下、およびHDLの上昇に効果的であるとされています。また、脂質や血糖値の調節など、食事療法におけるニンニクの有効性についても触れられています。
著者らは、「メタボリックシンドロームに対するニンニクの効果は明らかになりつつある。一方、効果の程度について、現時点で確固たる結論を出すことはできない。さらに大規模な試験が必要で、最適な用量と介入期間に焦点を当てた研究が実施されるべきである」としています。
いまのところ、メタボリックシンドロームを包括的に管理する方法はありません。ライフスタイルと食習慣の見直しがまずは重要となりますが、ニンニクをふだんの生活に取り入れるメリットは少なくないといえそうです。
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