カルチャーの格納
スタンリーキューブリック監督の「時計仕掛けのオレンジ」という映画がある。
近未来、白のつなぎのような服を身に纏った半グレ集団が、暴力と性欲に溺れた生活をしていたが、ある事件をきっかけに主犯格の男が逮捕されてしまう。
刑務所の中で主犯格の男は模範囚として日々を過ごしていると、警察に「人格を矯正する治療さえ受ければ刑期を短くしてやろう」と提案を受ける。
この治療を受けた主犯格は、その後、反社会的な行動をしようとする、もしくは、ベートーヴェンの音楽を聴くと耐え難い苦痛に襲われることになった。
無事刑期が短縮され、釈放された主犯格の男を待っていたのは、彼に恨みを持つ人々からの復讐だった。
大筋はこのような映画である。
所謂キューブリック作品らしく、美を追求したカメラワーク、奇抜で毒々しいオブジェ、派手な演出が特徴的、また、いつものことながら原作改編により原作者に怒られた作品の1つでもある。この映画が一番好き、と答える映画好きも多いのではないだろうかと思われる名作だ。
次に、キングクリムゾンというバンドの「クリムゾン・キングの宮殿」というアルバムをご存じだろうか。
何かに怯えているような表情のジャケットが有名な、プログレの金字塔とも言えるアルバムだ。
21世紀の精神異常者などはもし「キングクリムゾン」「クリムゾン・キングの宮殿」などに耳覚えがない人でもリフだけは聴いたことがあるのではないだろうか。
案外キャッチーな歌メロに、何かに急かされるような21世紀の精神異常者の間奏や、突然アンビエントになるムーンチャイルドなど、実験的なサウンドが特徴的だ。
俺の中でこの2つの作品は、映像と音楽という違いはあれど、脳の中で同じ引き出しに格納している。
他にも、クリストファーノーラン監督の「インセプション」は、イエスの「フラジャイル(こわれもの)」と同じ引き出しに格納していたり、マーティンスコセッシ監督の「タクシードライバー」はクリームの「クリームの素晴らしき世界」と同じ引き出しに格納している。
このように、脳の中で同じ引き出しにしまっているのは何も映画と音楽だけではない。
俺が一番好きな映画はアレハンドロホドロフスキー監督の「ホーリーマウンテン」なのだが、これは岡本太郎の「太陽の塔」と同じ引き出しに格納している。その引き出しにはオーネットコールマンの「The Art of the Improvisers」も入っている。
何か厳密なルールはないのだが、自分の中ではこれが最もしっくりくるのだ。