少女歌劇レヴュースタァライトの解説 TV版を観た後に あるいは劇場版を観る前に
結局、少女歌劇レヴュースタァライトってどういうお話だったか?
それは「舞台少女がスタァライトを再生産」するお話です。
はじめに
劇場版 少女歌劇レヴュースタァライトを見ました。とても良かったです。
えっまだ観てない?観たほうがいいですよ。
ちなみにTV版かロンドは観ました?
観た、けどよくわからなかった。なるほど。
実際問題、ラブライブだと思って観たら仮面ライダー龍騎だったしなんか青いやつがサバイブしてて面食らった人も多いと思います。TV版。
みんな面白い面白い言ってて、実際レヴューシーンや音楽や可愛い女の子のキャッキャウフフとか、騒ぐポイントあったがそこまでか?
というか最後の東京タワーって一体なんだんだ…????
はい、正直言って伝わりにくいというか、ちゃんと全部言葉で説明はしているのですが、それがTV版12話の中でバラバラになっているのできちんと整理しないと形が見えてこない作品でもあります。
そういうわけで簡単に、私の納得している範囲ではありますが、TV版 少女歌劇レヴュースタァライトがどんなお話だったかを振り返りたいと思います。
メディア展開について
昨今のアニメはやれミュージカルだライブだと色々手を広げて複雑化の一途をたどっておりますが、少女歌劇レヴュースタァライトまさしくミュージカルですので舞台もライブもやります。
ですがここではアニメ版の話だけします。
少女歌劇レヴュースタァライトのアニメは
TV版 全12話 2018年放送
再生産総集編(ロンド) TV版の総集編 2020年劇場公開
劇場版 完全新作の劇場版 2021年劇場公開
の3つでできています。
TV版は各キャラの掘り下げも豊富でおすすめですが、時間がない方は再生産総集編、いわゆる「ロンド」だけ見れば大丈夫かと思います。
とはいえ劇場版レヴュースタァライトの上映終了も近いですから、本当に時間がない方は下の文章だけ読んでいけばなんとかなると思います。
いや、ならない。やっぱ本編観ろ。
「少女歌劇レヴュースタァライト」とは
「少女歌劇レヴュースタァライト」とは
・人生と舞台を一体化させ、自分自身を主役として演じる「舞台少女」
・演目は、運命の再会と永遠の別れという「悲劇スタァライト」
・そして自分も舞台も、より良い結末を目指すための「再生産」
の3要素で成り立つ物語です。
「舞台少女がスタァライトを再生産する」というのがTV版の構造です。
本来の「戯曲スタァライト」では「別れ」とは悲劇であるとされています。
だからこそTV版では「再会」で終わらせる事によって喜劇へと変化しました。
詳しくは順を追って説明します。
彼女たちは舞台少女
舞台少女(舞台人)は人生のすべてを舞台での演技に捧げています。
よって
人生 = 舞台
生き様 = 演目
自分 = 演じる役
が成り立ちます。
これはレヴューの勝者を決定する上で大事な評価項目であるとともに、劇場版スタァライトではここを掘り下げた話となっています。覚えておいて損はないでしょう。
ちなみに第1話でキリン野郎が
だって必死ですよね、舞台少女ですもの
普通の喜び、女の子の楽しみ
全てを焼き尽くして遥かなきらめきを目指す
それが舞台少女
と明言しています。
(当該箇所は第1話19:43ごろ)
このように、少女歌劇レヴュースタァライトはけっこうド直球で喋ってるところがとても多いです。(エヴァっぽいですね)
なので特にキリンの台詞はそっくりそのまま言葉通りに受け取ってください、大体そのままの意味です。悪いキリンじゃないので大丈夫。
レヴューはオーディション、演目はスタァライト
TV版 少女歌劇レヴュースタァライトでは
レヴュー = オーディション
の関係が保たれています。
これだけだとアニメ「スタァライト」とは
「スタァライトという演目にふさわしい役者は誰なのかを決める物語」
という普通の演劇モノでしかありません。
しかしオーディションとは適任者を決定する儀式です
さらに先ほどの
生き様 = 演目
という式を代入すると
「スタァライトという生き様にふさわしい人間は誰なのかを決める儀式」
となります。
「スタァライトという演目に最もふさわしい役者は誰なのかを決める物語」
↓
「スタァライトという生き様に最もふさわしい人間は誰なのかを決める儀式」
まさしく自分の人生を賭けたオーディションですから決闘(デュエル)の形態をとるのは当然とも言えます。
(一般的な決闘の例はこちら)
それでは肝心の「スタァライト」とはどんなお話なのか。
これも第1話の開始5秒で
スタァライト
それは、星の光に導かれる女神たちの物語
ぶつかり、いさかい、すれ違いながらも結ばれていく絆
だけど、引き離され、二度と会えなくなってしまう、悲しい物語
と明言されています。
(当該箇所は第1話00:01から)
これらを踏まえると
「スタァライトという演目に最もふさわしい役者は誰なのかを決める物語」
↓
「スタァライトという生き様に最もふさわしい人間は誰なのかを決める儀式」
↓
「運命の再会と永遠の別れ、そういう生き様に最もふさわしい人間は誰なのかを決める儀式」
と展開できます。
こわいですね。
スタァライト・ランキング
レヴューがオーディションであるということは当然採点基準もあるわけです。
各々の人生がどれだけ「スタァライト」していたか、
つまり「スタァライトポイント」がどれだけ高いかは概ね
A.運命の出会いをしているか
B.それと一度、離れ離れになっているか
C.運命の再会を果たしているか
D.それと永遠の別れをしているか
の4項目で評価されます。
これらの項目は「近い未来でそうなる」でもポイントが入りますが、やはり実行済みの方法がポイントが高いです。
また
X.単純に演技力が高い場合 例)天堂真矢、西條クロディーヌ、大場なな
Y.自分の人生の主役を演じているか 例)星見純那、天堂真矢
でもボーナスポイントが貰えます。
上記XYの項目は「舞台俳優を選んだ自分の決断に真摯であるか」とも言いかえられます。
各々の人生がどれだけ「スタァライト」していたかは軽く箇条書き。
スタァライトポイント順で並べます。御意見無用!
(長いので飛ばしてもらっても構いません)
出席番号29番 神楽ひかり
加点項目 ABC(D)XY
スタァライトポイント 5.5点
ぶっちぎりの優勝。王立演劇学院にもいってたので実力は折り紙付き。物語力も完璧。
出席番号15番 大場なな
加点項目 AB(C)XY
スタァライトポイント 4.5点
運命の再会についてはそれ目指して頑張ってたので加点しておきました。
さらに専門教育を受けていない中で聖翔音楽学園に入学したので演技力も凄い、はず。
出席番号1番 愛城華恋
加点項目 ABCY
スタァライトポイント 4点
かれひかはやっぱポイント高いですね。理由は言わずもがな。
ひかり未加入ルートでは評価ADで2点です。
出席番号18番 天堂真矢
加点項目 A(D)XY
スタァライトポイント 3.5点
この人は単純に演技力がお化けなんだよな…ひかりちゃんが来る前のループではクロディーヌとの出会いも弱いはずですし多分純粋な演技力だけで優勝狙ってる怪物。こわ。
ひかり未加入ルートでは評価XYで2点です。
出席番号11番 西條クロディーヌ
加点項目 AX(Y)
スタァライトポイント 2.5点
天堂真矢とスタァライトしてましたが別離はしなさそう…。演技力加点が大きいですね
出席番号25番 星見純那
加点項目 A(B)Y
スタァライトポイント 2.5点
詳しいことは知りませんが、舞台を目指すきっかけになった何かがあったのでしょうね。
1話から2話の流れで加点項目Bを若干達成しているのでおまけしました。
ひかり未加入ルートではA(Y)で1.5点です。
出席番号17番 露崎まひる
加点項目 AB
スタァライトポイント 2点
華恋ちゃんとの出会いの後、ひかりちゃんに寝取られてるので割とスタァライトしてる。
ひかり未加入ルートでは評価Aのみで1点です。
出席番号22番 花柳香子
加点項目 AX
スタァライトポイント 2点
そのままずっとイチャイチャしてたらいいと思う。
出席番号2番 石動双葉
加点項目 A
スタァライトポイント 1点
香子さんとずっと一緒にいるのは美しいのですが、あまりスタァライトではないですね。
ちなみに、ひかり未加入ルートだと
4.5点 大場なな
3.5点 天堂真矢
2.5点 西條クロディーヌ
2点 愛城華恋、花柳香子
1.5点 星見純那
1点 露崎まひる、石動双葉
となります。(本当?)
スタァライトは再会した2人が分かれる悲劇
一番お題目に近い演技をできたやつの勝ち
だから再開した神楽ひかりと愛城華恋が離れ離れになっておしまい。ちゃんちゃん。
これが「TVアニメ 少女歌劇レヴュースタァライト」の第10話ラストまでの筋書きです。
本来ならばこれでおしまいです。
再演のたびに何度だって生まれ変われる
聖翔音楽学園では同じ演目を3年間再演し続け、その理解と完成度を高める。というカリキュラムが実施されています。
舞台の再生産
古い自分を捨て、新しい自分に生まれ変る行為
去年よりも、昨日よりも新しい舞台を作るため。
TVアニメ「少女歌劇レヴュースタァライト」では99期生は2年生。
作中の第100回聖翔祭で彼女たちが公演するのは2回目の「スタァライト」です。
第99回聖翔祭(1年生)では別れの悲劇スタァライトを普通に演じました。
であれば当然、第100回聖翔祭(2年生)のスタァライトは更に進化していなければなりません。
アニメで描かれたレヴューオーディションの結末は「目指すのはトップスタァじゃない、(ひかりと華恋の)2人でお互いのスタァになる」でした。
これにより物語の内容は
運命の再会と永遠の別れの悲劇
↓
運命の再会と別れ、二度目の再会による喜劇
と変化しました。
それに呼応するよう舞台装置も
「目指すべき星とは天に輝く2つ星であり、星へ至る通路は塔となる」
↓
「目指すべき星とはクローラとフレールのお互いであり、星へ至る通路は橋となる」
と劇的な変化を遂げます。
必ず分かれる悲劇だったはずの「戯曲スタァライト」は再会の喜劇へとなりました。
そして順番は前後しますが、第100回聖翔祭で再演された「スタァライト」も同様の変化を遂げます。
めでたしめでたし。
これがTV版の少女歌劇レビュースタァライトです。
わかりましたね?
燃料って何?
燃料の話は本筋とは特に絡まないのでここで軽く触れるにとどめます。
というかよくわからん。
スタァを産み出すのに必要なキラメキのことを「燃料」と呼んでいます。
参考にできる箇所は以下の通りです。
・トップスタァ誕生には参加者全員のキラメキが必要 (イギリス編)
・運命の舞台に立つには参加者全員のキラメキが必要だったけど神楽ひかりは全部セルフサービスでお支払い (砂漠編)
・お互いがお互いのスタァになるには特に他人のキラメキは必要じゃない (かれひか編)
イギリス編の話で「あー比較対象(底辺)がいないとスタァ(頂点)は作れないからかなぁ」とか思ってましたが、砂漠編で別にそういう意味でもなさそうに感じました。
多分
・運命の舞台に立つためには、そもそも運命の舞台が必要
・運命の舞台を作るには、そこに立ちたい、それを観たいという感情(キラメキ)が必要
・運命の舞台を新しく作るには、追加でキラメキの供給が必要(イギリス編、砂漠編)
・既にそこにある運命の舞台に気がつくことができれば、キラメキ追加投入は不要(かれひか編)
ということなんですかね。よくわからん。
ちなみにキラメキの供給源は舞台少女じゃなくても大丈夫ということが劇場版で判明しました。
よく考えたら華恋が髪飾りを溶鉱炉ポチャしてアタシ再生産するのも、運命の舞台の再生産ってことですよね。
なんかキリンもそんなこと言ってた気がするし。
劇場版 少女歌劇レヴュースタァライトにむけて(ネタバレ注意)
「少女歌劇レヴュースタァライト」の基本要素は
・人生と舞台を一体化させ、自分自身を主役として演じる「舞台少女」
・演目は、運命の再会と永遠の別れという「悲劇スタァライト」
・そして自分も舞台も、より良い結末を目指すための「再生産」
以上の3つですが、実はその重要度は均等ではありませんでした。
TVアニメ版で語られていたのは主に
「悲劇スタァライト」を「再生産する」ことでした。
そして詳細は省きますが劇場版 少女歌劇レヴュースタァライトは「卒業式」がテーマです。
つまり必ず「別れ」で終わります。
戯曲スタァライトは「別れの悲劇」
そのルールに則れば多くの別れにあふれる卒業式は悲劇そのものです。
TV版のラストで華恋が提示した答えは「別れても再会できる」です。
ですが卒業後に再会するクラスメイトは果たして何人いるのでしょうか。
「いつかきっと再会できる、だからあの別れは悲劇では終わっていない」
そう信じ続けられる人物は少なく、劇場版では華恋すらも心の底から信じる事ができなかったと語られます。
それに対し「別れとは必ずしも悲劇ではない」と返すのが劇場版 少女歌劇レヴュースタァライトです。
別れが悲劇なのは相手に依存しているから、自分の主導権を握れていないから、すなわち自分の人生の主役を演じられていないから。
これを「舞台少女の死」だとして映画序盤で宣言しています。してた気がする。
そのため劇場版 少女歌劇レヴュースタァライトで語られるのは
「舞台少女」を「再生産する」
というお話になります。
比較すると
TV版は
「別れとは悲劇だが、再会することで、悲劇を喜劇に再生産するお話」
劇場版は
「別れを喜劇にするため、目的地を再確認して、舞台少女を再生産するお話」
となります。
どのようにして舞台少女が再生産されていくのかは劇場でお楽しみください。
マジで面白いから絶対観て。
???「スタァライトの第1話にはスタァライトのすべてが詰まってるんだよ」
さて、これらを踏まえてレヴュースタァライトの第1話を再鑑賞しましょう。
きっと新しい発見がありますよ。
スタァライト
それは、星の光に導かれる女神たちの物語
ぶつかり、いさかい、すれ違いながらも結ばれていく絆
だけど、引き離され、二度と会えなくなってしまう、悲しい物語
その8人の物語はどうしようもなく、私たちを虜にする
その8人の歌はどうしようもなく、私たちを駆り立てる
行こう、あの舞台へ、輝くスタァに、2人で
ひかりちゃん、おかえり
一緒にスタァになろうね
約束だよ
レヴューはすでに始まっています
歌とダンスが織りなす魅惑の舞台
最もきらめいたレヴューを見せてくれた方には
トップスタァへの道が開かれるでしょう
あの星のティアラを手に入れて
トップスタァになれるのはどなたでしょうね
だって必死ですよね、舞台少女ですもの
普通の喜び、女の子の楽しみ、全てを焼き尽くして
遥かなきらめきを目指す、それが舞台少女
その覚悟があなたに?
キリン邪魔
約束したんだから、ひかりちゃんと
私は、ううん私たちは
絶対一緒に、スタァになるって
アタシ再生産
参考にした資料など
・宗教における左手の持つ意味
・トマトの別名「毒りんご」
・禁断の果実
・【作品読解】トマトとは、列車とは、ヒヨコとは、ワイルドスクリーンバロックとは、そして舞台少女の死とは。(『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』)
・頂点から消失点へ:レヴュースタァライトにおける「塔」と遠近法
・初見でレヴュースタァライトの映画見てきた
・『劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト』で大流行!最近話題の概念「ワイドスクリーンバロック」ってなに!?
・一切の予習をせずに『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を見てきた話