透明なまでに華奢な骨骨しい存在~かすみ嬢の居場所(3)
通院していたときは、毎回体重を計らされた。それが苦痛で苦痛で、行く前に水3リットル飲んでこの服だとプラス何キロになるからって、必死で計算してた。35キロあればぎゃんぎゃん言われなかったから……。先生のことを信用してなくて、結局治らないまま通院やめて、でも、ちゃんとした先生のとこに通ったら治るものなんだろうか。
私が最初にかかった先生は、鬱病専門でご本人は「摂食の子も見てきましたよ」って仰ってたけど、ただひたすら食べなければとしか言われなかった。通いさえしていれば親が安心していたから、それならって通ってただけだった。あと、交通の便がよく、心療内科にしては安かったから(苦笑)
その頃はね、腕を手で掴むのが好きで。授業中いっつもやってた。全部つるーっと腕を掴んで輪っかにした手を滑らせられたらいいのに、私の手は小さくて、肘の周りがどうしても掴めなくて悔しかった。
今もやってる。でも、今の私には肘以外にも掴みきれなくなるところがあるでしょう。肉肉しくなってて手を回しきれない。そうすると、掴めなかったところに爪を立てて痕をつけて、肘からどれくらいの長さの所からもう掴めないのか測ってる。だけど、肉肉しいからいとも簡単に爪痕が消えてイヤな気持ちになる。
そういえば「あなたは何をしたいの」って聞いてきた人がいる。「脂肪が嫌なの? もうガリガリでしょう、何をしたいの」って。たしか私は「脂肪は要らない、筋肉をつけたいの」って答えた。そしたら「筋肉だって脂肪をつけなきゃつかないよ」って返された。
それは全くもって正しいんだけど、私の意味合いと少し違ってた。私が欲しかったのは、今ある脂肪を削ぎ落とすための筋肉で、もっと運動ができるようにするための筋肉とは違ったんだ。そしてそれは、件の質問をした子には思いもよらぬことだったろうし、その子には悪いことをしたと思う。
ただひたすら、透明なまでに華奢な、骨骨しい存在に憧れてたから、たぶん本当は、筋肉も含め何もかも全部要らなかったの。自分じゃない、人間を超越した、何か別の存在に近いものになりたかった。
肌の色も白くしたくて、徹底的に日焼け対策やってきたのに、明るく照らされた白色灯の元では気持ち悪いくらいに黄色く見えるの。薄暗い駅の中では、白くなったかなぁって感じてたのに。どこまでも紛い物めいてる。だから私は、どんなに頑張っても痩せ姫にはなれなくって、あの美しさには重なることのできない紛い物であり続けて。でもそれをわかってても、せめて近い存在でいたいって、憧れて努力し続ける事しかできないのかなぁなんて。感傷に浸ってみたりしてる。
ただ、痩せ姫かどうかなんて、言葉を生み出した方を除いては決められることではないし、真に痩せ姫なように私には見える方ですら、現状のままでは痩せ姫じゃないって高みを目指してらっしゃる。夢か幻かみたいな存在。少しメルヘンに言うと、妖精めいてる何かがある。
だから、誰に何と言われようと、私は、私が幸せになれる、私なりの姿を追求したい。背丈はもう思うようにならないけど、体重とか、外見だけじゃなくて、教養とか、知性とか、そんなもの。
まずは今から近づこう。前みたいな轍は踏まない。少しずつでもじわじわと。姫になれないのはわかってるからせめて痩せ細りたい。やっぱりね、拒食症の判定基準の体重なんてあくまで目安で、その程度の体重の人なんて山ほどいるの。極めるとこまでいくべきなんだよね。
なんか、頑張ろう、うん。目指すだけなら勝手なんだから、頑張る。焦るとうまくいかないから2ヶ月後を目安にまずは5キロ落とさなきゃ。そしたら35キロになれる。通院していたときも、ぎゃんぎゃん言われずに済んだ体重だから、そこまでは自由でしょう。
でもね、部活やってたときは毎週1キロペースでするするっと38までは落ちていたのに、今は牛の歩み……。ようやっと40切ったので、ご褒美のTwitterです。
半身浴を繰り返した脱水気味での体重だから、ズルしてるんだけどね。