孤独と俗世の天秤~かすみ嬢の居場所(10)


 3月最後の日、今日は私が通った小学校の閉校式だった。

「栄えよ〇〇小学校」って校歌をうたったあとの校旗返還にはぐっとくるものがあって。もう、栄えることはないんだなぁと。確かに自分がいたはずの場所が、こうしてまたひとつ消えていくのか、と。
 実感はあまりなかったけどね。それよりも、集まった同級生をさっと見回して、男の子は背が伸びたんだなぁとか思う前にまず、私より痩せてる子はいないねって確認して、少し安心してました。6年ぶりの再会に、懐かしさより何より前に出てくる感情がそれなんて。

 きっと、中学の同級生と再会しても、同じだと思います。私の時間は、痩せを目指し始めた3年前から止まったまんま。それなのに、その頃関わっていた人たちは私を置いて変わっていって、今じゃ私とは別の世界で幸せそうに生きてる。私は相も変わらず痩せることに執心してるのに。

 こうしてたまに孤独感に苛まされて、その重みに耐えきれなくなるんです。痩せなければ独りにならなかったのかな。痩せ姫様はもっともっと、つらい思いをされてるの? それとも、俗世を離れて妖精になって、人との関わりを必要としなくなるのかしら。痩せ姫に近づく、と、孤独感を紛らわらせる、の大きな天秤。
 私はもう、この道を突き進むしか道が無いの。痩せ姫に近づくこと。その道を逸れることは、これまでの努力と失ったものを全て無駄にすることになる。

 突き進んだ先に、ふっと死があったらどんなにか楽だろう。


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