「いい人ね」「自分をかわいそうがるのは」

さっき、クルーズ版に素敵なコメントをいただき「伊豆の踊子」的な、心洗われる気分にしばし浸った。
孤児根性に劣等感を抱いていた川端康成は、偶然知り合った旅芸人一行から「いい人ね」と言われ「言いようなく有難い」と思うわけだが、僕の今が、まさにそういう気持ちだ。すでに酔い始めているので、その方への返事は明日にしようと思うけど、とにかく、言いようなく有難い、という気持ちを書いておきたくて。
「愛してる の響きだけで 強くなれた気がしたよ」と、草野マサムネは歌ったが「いい人ね」の響きだけでも、勇気をもらえる。

今日放送の「ゲゲゲの女房」の冒頭数分を見逃してしまい、政志の気持ちを変えた主人公の言葉が、気になってたのだけど。ドラマの内容を、毎回詳細に再現しているブログを発見。その言葉を知ることができた(ありがとうございます)。
「戦争では、みんなえらい目に遭いましたなぁ。仲間も大勢死にました。死んだ者達は無念だった、と思います。みんな、生きたかったんですから。死んだ人間が一番かわいそうです。だけん、自分は生きてる人間には同情せんのです。自分も貧乏はしとりますが、好きな漫画を描いて生きとるんですから、少しもかわいそうなことはありません。自分をかわいそうがるのは、つまらんことですよ」
戦争によるトラウマから、人生に背をむけていた男の心に、これが深く響いたわけだが、オタク的な芸術家の姿勢としても、すぐれた人生観だと思う。僕もある程度好きなことができて、こうして、歪みを表現することもでき、それを肯定してくれる人も少なからずいる。
この作品は「芸術家ドラマ」としての要素もあるので、毎回、いろいろ学ばせてもらってます。


(初出「痩せ姫の光と影」2010年6月・7月)


前半(いい人ね)と後半(自分をかわいそうがるのは)はそれぞれ、別の日に書いた記事。通じ合うものがあるので、並べてみた。
まず、前半は、僕にとって最も思い出深い痩せ姫(痩せ姫本におけるYさん)と出会ってすぐのやりとりから生まれた。他者から肯定されることのうれしさ、みたいなものを語ってる。
一方、後半は、自己肯定というか、せめて卑下しないようにして生きていたいという思いへの共感、かな。つまり、自分で自分を愛さないでどうする、ということ。ただ、自己愛だけでは心もとないので、そこに他者からの肯定も加わると、助かるし、ありがたい。





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