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金原ひとみ、育児を語る

朝日新聞のオピニオンページに、金原ひとみが出ていた。テーマは、子育て。でも、それ自体が優れた人生論になっていて、まるごと紹介したいほどだ。
とりあえず、要所をピックアップしてみると……

「妊娠した時は摂食障害気味だったし、薬と酒とたばこで生き延びているような生活だったので、子どものいる自分というものに違和感があって(略)最初は手探り状態でした」
「母親とは昔から仲が悪く、出産の時も絶対に病院に来させないでと父親にくぎを刺したくらいなので(略)」
「以前は虐待のニュースを見ると、可哀想だと思うと同時にほっとしたんですよ。『やっぱみんなキレてんだなー』って」
「(略)育児の方が執筆の100倍きついのに、だれも評価してくれないですよね。私ほめられたかったのかー、って目からうろこでした」

4つめの発言は、他のママ友に「えらいですね」と言われ、
「同じ状況を共有している人が周りにいるのはいいことだ」
と気づけた、という趣旨。摂食障害のブロガーさん同士のつながりでも、同じことが言えるかもしれない。

なお、今回の育児論には、編集部がつけたと思われる「1対1はどんづまりの関係」という見出しがあり、それは、この部分の文章に由来する。

「結婚前、付き合っている男が突然無職になったことが2回あったんですが、どんどん内にこもってって。2度とも『仕事を探そう』じゃなくて『心中しよう』という話になったんです。1対1の関係は、そういう客観性を失ったどんづまりの結論を出してしまいがちです。恋愛と同じで、親と子で2人だけの世界に閉じこもるのは危険だと思います」

そういえば昔、拒食症の娘との関係に疲れ、ノイローゼ状態になった母親が、娘を殺して、無理心中した事件があったっけ。
個人的には、①で紹介した「母親とは昔から仲が悪く」という部分が、心に残った。親子だから仲良くしなきゃ、と無理したり、仲良くできない自分はおかしい、と責めたりする必要は、たぶん、ないのだろう。

この育児論、最後の一文が、言ってること自体は特に目新しくないものの、レトリックがいかにも彼女らしくて、なかなかいい。発表されたばかりのものを、そこまで引用しちゃうのは、気がひけるので、ここではあえて、触れないでおきます。


(初出「痩せ姫の光と影」2010年11月)


最後の一文、どういうものだったのだろう(笑)さすがにもう、忘れてしまった。記事そのものは、どこかに保管してあるはずだけど。気になる人は、調べてみてください。

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